1話 変わらぬ日常、いつもの日々
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
季節は夏を過ぎ、もう9月となる。未だ暑さの残る今日この頃だが、日が落ちるのも少しずつ早くなりゆっくりと秋の訪れを感じる。
「あー……やっと終わったー!」
私は教室の窓際一番前の席に座り、背伸びをした。窓から差し込む陽の光が眩しい。
今は夕方、これから放課後となる。私は部活には入っていないので、すぐに帰れるけど今は疲れた体を少し休めたい。
私の名前は、白崎 海。十七歳、高校二年生です。髪型は毛先が少し跳ねていて肩にかかるくらいのミディアムヘア。ちょっと校則が厳し目な学校なので髪色は黒です。
好きな食べ物はプリン、苦手なのはえっちな人で趣味はラノベを読むこと! 特に異世界系は面白い! でもこの頃、ラノベの読みすぎで目が悪くなってきたのか眼鏡をかけてます。
それにしても放課後のこの時間は良い、私は右手で頬杖つくと窓から空を見上げる。綺麗な夕焼け……と、窓に映るゆっくりゆっくりと近づいてくる不穏な影。
「はい! 残念!」
私はそう言って机に掛けてある四角いカバンを持つと、それをその影の方に軽く振った。
カバンは吸い込まれるようにその子の頭にクリーンヒット、更に当たったのは恐らくカバンで一番固いであろう角。
あ、不味い、これは流石に痛かったかな?
「おぉぉぉぉぉ! いったーいっ! 海、酷いよーっ!」
頭を押さえ叫んでいるのは、毎日のように顔を合わせている幼馴染の女の子。
彼女は、赤羽 美紀。私と同じ十七歳。髪形はポニーテールで少しだけ赤い髪、染めているように見えるけど正真正銘の地毛。小学校からの幼馴染で、油断していたらすぐにセクハラしてくる残念な子、顔は整っていて可愛いのにもったいない。
私は先程、美紀の頭にカバンを当てた事を申し訳なく思いながら片手でごめんの合図をする。
「ごめんごめん……でも、美紀がいけないんだよ? そうやってすぐ変な事してくるから……」
「えー……友達が少ない海の為にやっているのに、けしからん奴だなー!」
友達が少ないって……。
少しだけその言動にムッとしてしまう。友達が少ないの気にしてるんだから!
「友達が少ないは余計だよ! それにけしからん奴って……私じゃなくって美紀でしょうに!」
椅子から立ち上がると、美紀に攻撃しようと近づき、左手で頭へチョップ――
「フッ……」
「むっ……」
左手は簡単にはたき落とされ、得意げな顔をする美紀と視線が交わる。
ここでやめておけばいいものの、私は当ててやると意気込んでしまい、様々な方向から左手が美紀の頭を狙う。
けど、美紀は「にゃはは!」と笑いつつ、難色も示さず全てをはたき落としてくる。
くっ……なかなかやる!
「さーてとっ!」
そんな事をしていると美紀はクルっと身とスカートを翻し、私の攻撃距離から離れた。
「元気そうでよかった! この頃、目が悪くなってきてるって聞いたから心配してたんだ! ラノベ読むのも程ほどにしなよ? じゃあ、私は部活あるから、まったねー!」
「あっ、ちょっと! 美紀!」
声を聞かず、一方的に話し終わると教室から出て行ってしまった。私の目の事、心配してくれてるのかな?
ありがと、美紀――心の中で私は呟く。
だけど……。
左手の拳を握りしめながら、去っていた美紀の得意げな顔を思い出す。
一発も与えられなかったのは悔しい!
目立たず大人しくに重きを置いていた一年生の頃に比べれば私は明るくなったと思う。
しかし、それでも友達と呼べる友達はあまりいない。そんな美紀は私の事が心配なのか他のクラスにも関わらず、昼休みと放課後はこうして毎日のようにやって来てくれる。
きっと明日も明後日もあんな無邪気な笑顔でやって来てくれるのかな?
今日は上手く撃退できたけど、あれでセクハラがなければ本当にありがたいんだけど。
友達……友達かぁ。どうやったら上手く作れるかな?
拳を下ろし、まだ少数のクラスメートが残る教室を見回す。
…………やっぱり、いきなり話しかけるのは無理!
この調子では新しい友達を作れないまま三年生になりそうな勢いだけど、その時は仕方ない。ぼっち生活で頑張ってく!
胸の辺りでまた拳を握ると、今日は勘弁しておいてやる! と言った具合に私は教室から出ていった。




