ホームズ対ホームズ!⑤
――勝った! ……待ちわびた念願の勝利! だけれど……この胸の奥から湧いてくるモヤモヤはなんなのだろう?
絶望を浮かべたリョウっちを横目に、私はカルっちが運んできたポンドを受け取っていた。
……いや、そりゃあ私だってリョウっちに勝ちたかったよ? 勝って……リョウっちに安心して欲しかった。勝って……たとえ探偵部は滅んでも、その意地だけは残ってるんだってことを感じて欲しかった。そうすれば……リョウっちも安心して卒業できるから。
「しめて83ポンド。圧倒的ですね……」
「あぁ……うん。でも、これじゃあいくらハワイでも使い切れないし……」
場に満ちたのは沈黙。お姉ですら唖然として何も言えなくなってしまっている。気まずい中カルっちが必死で声を上げ、私もそれに応じた。
――勝ちたかったけど……まさかリョウっちを絶望に叩き落としてまで勝つつもりは無かったのだ。っていうか、それじゃあやってることは童話に出てくる意地悪な継母みたいだし。
「……うっ……春茅君が……敗退……1円も獲得できずに敗退……ですか?」
叔母さんの言うとおりだった。さっきまでは回り始めたアルコールによって半ば眠りかけていたのだけれど、今回の騒ぎで目をさましたっぽい。勢いよく立ち上がっては、顔を真っ青にして口元を両手で覆っている。
だけれど、今となっては完全な後の祭りだ。このゲーム、おっさんが最初から私たち探偵部の解散記念打ち上げ用の資金を供出しようとしていたのは分かってた。自分達で作ったものを自分たちで壊すのだ、その埋め合わせだし。だけれど、その目論見は私の幸運と……リョウっちの不運で台無しになってしまった。
……うん。一言でまとめよう。
…………超気まずい、どうしよう?
「あ」
「お姉? どうかした?」
私が物凄い勢いでお姉を見ると、お姉もまた気まずそうに明後日の方向を向いてスマホを手に取るところだった。
「梅谷が戻ってきた。ちょっと迎えに行ってくる。ゲームは中断しておいてくれ」
そして、そのまま足早に出て行ってしまう。
……やっべ、ますます超気まずい。
「あーー……どうしましょうモモ先輩?」
「……ぐぬぬ……どうしようも……」
ない。リョウっちの半端ない落ち込み方に慌てたカルっちが小声になるも……残念ながら私にできることは無かった。
後は…………お詫びもかねて、リョウっちをハワイ旅行にでも連れだし、その隙に余ったお金を分けてあげることくらい。でも……きっと、リョウっちは受け取らないだろう。リョウっちが、自分の力でお姉をお嫁にすることに意味があるのだから。
そこで沈黙した場を強引に動かすようにおっさんが動いた。どうやら、この気まずい状況をどうにかする役目を果たす覚悟らしい。
「さて――」
「――待ってください、才賀先輩ッッ!」
そこでようやくリョウっち顔を上げた。だけれど、その顔色は悪いままで……
「僕はッ――」
「……悪い春茅、俺も残念だとは思うのだが――」
「――いえ、そうじゃないんですッッ!」
気丈に。そう! 気丈になって立ち上がってリョウっちは言ったのだ! それは、敗北の気まずさなど全く感じさせない、怯えて涙目になりながらも切羽詰まった大人の対応で……
「紫先輩が吐きそうなんです!? 助けてくださいッ!?」
「ってそっちかーい!?」
同時に状況を察したおっさんとカルっちが介抱しようとし……叔母さんは言いました。
「う゛っ……勢いよく立ち上がったら……世界が回って……」
「うわぁぁぁ!?」
同時に飛び退くリョウっち。何故かその瞬間がスローモーションのように見える。リョウっちがいなくなるや、叔母さんは我慢の必要も無いと言わんばかりにテーブルに崩れ落ちた。最後の抵抗だろうか、洋服を庇うようにテーブルに身を乗り出す。だけれど、その時に腕がテーブルの暗黒カクテルの入ったグラスにぶつかって倒してしまう。檻から解き放たれた暗黒酒がゆっくりとテーブルに放射状に広がっていき、津波と化して使用済みトランプの山に接触、カードを端から無残な青黒い色に染め上げた。悪夢の天変地異が引き起こされた中、ついに叔母さんは――
――っていうか私、なんでこんなどうでもいいシーンに限って、スローモーションで認識してるんだ。誰が得するんだしこの記憶。やめやめ! こんなのなーし!
とにかく、だ。そんなことがあったせいで10分ほどゲームは中断してしまったのだ。おっさんが青い顔の叔母さんを介抱し、カルっちがすかさず空いてるグラスにミネラルウォーターを注いで渡す。
……あ、一応叔母さんの名誉のために言うけど、ギリギリで結界は破られなかった。人類の活躍によって、青黒悪魔は再び酸の地獄に引き摺り戻されんだし。
「すまん、遅くなっ……何をやっているんだ?」
「お姉……酷いタイミングだし……」
そうして、お姉が梅谷さんからサンドイッチやらお菓子やらを受け取って戻ってきたときには、どうにか事態は収束していた。その頃には叔母さんはおっさんとカルっちの懸命な介抱によって多少は回復し……テーブルの方も私とリョウっちでどうにか綺麗になっていた。
……まぁ、不運なことに最初の方に使ったトランプは使用済山札の下の方にあったから、津波の染みが残っちゃったけど……幸いなことにまだ使ってない山札に被害は無かった。ギリギリセーフ!
「あ゛、千歳ちゃん、何でも無いんですよ!? ただ、これはですね――」
「――梅谷」
「承知しました」
叔母さんの必死の言い訳を聞くまでも無く、お姉が裁定を下した。梅谷は相変わらずの鉄面皮で粛々と寺島家のオープンキッチンから薬を取り出し、淡々と飲ませていく。……さすがはクールビューティー。
かくして、私たちは再び席に着いたのだ。
「さて、次のゲームに入るのだが……」
そう言うはお姉。再びディーラー役に戻ったのだ。だけれど、お姉一押しのリョウっちは既に敗退が決定してしまっている。これには私もカルっちも憐憫の情を隠しきれない。……でも、だよ?
「その前に提案がある。梅谷に買い物ついでにお金を下ろしてきてもらった――」
「ちと先輩!?」
思わず私はおっさんと顔を見合わせていた。……不覚にも、お互い渋い顔で。だってそうでしょ?
「全部で30万円ある。全部親に文句を言われずに使える、私のお金だ。これでポンドを買い取りたい」
――それはルール違反だよ、お姉。
だけれど、私もおっさんも、それを口にすることは無かった。お姉が全部分かってて無粋な真似をしているのも分かったし、なにより……
「駄目です先輩! 僕はそんなことまでして勝つつもりはありません!?」
……リョウっちがそれを受け入れないだろう。だってお姉のやってることは、控えめに言ってギャンブルで全財産すった恋人にお金を貢ぐという行為になるのだから。いくら叔父夫婦が味方してくれているとは言え、おっさんはリョウっち以上にお父さんに借りがあるわけで……
「……後輩にも済まない。私も少々興奮してしまったようだ。あの時つい君の手札が強いと判断して、確認もせずにそのまま背中を押してしまった」
「違うんです!?」
……そう言えば、あの時のリョウっちは無理せずフォールドしようとしていたっけ。残りの山札を見るに、ポーカーは精々あと1ゲームのみ。もし、リョウっちがフォールドしていたら……きっと、無難に終わっていたに違いない……
お姉は、必死で言い縋るリョウっちに言った。それは……間違いなく本心だと思う。
「ありがとう。だが、元を正せば、全部私の愚かな行為のせいなんだ。だから、大丈夫――」
「ちと先輩……」
「気にするな。この敗北は私のせいだ。君に落ち度はない――」
「――ちと先輩ッ!」
リョウっちが立ち上がって吠えた。私も叔父さんも口を挟まない。後は当事者同士の問題だろう。私にできることは、この件が2人の間でしこりにならないこと祈るのみ――
――そうして、リョウっちは言ってのけた。悪戯成功と言わんばかりの笑顔で……あぁ、何てズルい! それこそ、その顔は……かつで私が魅了された探偵の顔で――
「僕は……僕は、まだ負けてませんよ?」
「……!?」
私はほのかに残された憧れと、湧き上がる闘争心に身を委ねながら聞いていた。だって……だよ! ルールを思い出してみて! あぁ! お姉は自責の念に囚われて気付いてないけど! まだ1つだけリョウっちに生き残る道があったのだ! それは――
「だが、もう君にはポンドが――」
「――ちと先輩、ようはポーカー以外の方法でポンドを得れば良いだけなんです! つまり……モモちゃんか才賀先輩のインチキの謎を解き明かせば良い」
探偵同士の直接対決ッ! もはやリョウっちが生き残る道はそれしかない! あぁ、なんだか、ワクワクしてきたし!
「くくく……なるほどなぁ、そうこなくては面白くない!」
「ふふ! カルっちも聞いた? 私ってば、最高に良い仕事をしたんだし!」
まったく、本当に! 私は誰の味方をしてるんだかッ! だって、おっさんと私の間には決定的な差異がある。おっさんのあれは、トリックなどない技術だろう。一方、私の方は歴とした証拠がある。つまり、起死回生を図るリョウっちの攻撃は当然私を狙うはずで――
「モモちゃん、直接対決は久しぶりだね」
――ほぉら来たァァッッ! 先輩と後輩、探偵と助手、ホームズとワトソンの決闘だしッッ!!!
気がつけば立ち上がり、ファイティングポーズを取っていた。同時にカルっちに視線を流すと、慌てた彼女はそれでも私の隣に控えてくれる。大変よろしい。さて、引退間近の方々に私たちの流儀を見せつけてやるとしよう。
「ほほう……実に面白い展開だし! だけども……問題が1つあるじゃん? 私は、イカサマなど、していないしッ!」
そう。勘違いしないで欲しいのだけれど……私はイカサマなんて一切していないのだ。そこんとこ、勘違いしない欲しい。
おっさんもお姉も、誰も口を挟まない。それを聞いたリョウっちは……
「そうだろうね! なにしろ、モモちゃんは素直な子だから――」
――悪巧みをすれば、直ぐに分かる。
リョウっちはそう言っているのだ! その通りッ! 私は他の人と同じ目線になることができる。でも、それは言い換えれば私の目線にも別の人間が立てると言うことで……
――裏表のない素直な娘。善悪や我を越えたそれこそが、私の形質なのだろう……!
「そう! それとは対照的に、今この場にいるおっさんやお姉、それにリョウっちはどいつもこいつも鋭い人間ばっかりじゃん? そんな中で平然とイカサマをするのは不可能なんだし!」
部外者なんて関係ない! 今、私、最後になって初めてリョウっちと対等なところに立てたのだッ!
「うん。モモちゃんの言い分には一理ある――」
「――でも、思い返すに私に怪しい素振りなんてなかった――」
「――それは当然だ。だって、僕達は準備なんて一切無しにゲームに参加したんだから――」
「――そして、私たちプレイヤーが席を立ったのは一度っきり。トランプの山札は全部お姉が管理していたし、使用済みのカードはテーブルの隅に寄せてある――」
「――そこに手を伸ばせば、誰だって気付くだろう――」
「――つまり、このテーブルに座っていた……3人には不可能だった」
心が……シンクロする……! あぁ、なんだろう、この感じ……。言葉になんてしなくとも、思考が相手に伝わる心地よさ……! こんなのは初めてだ! 敵同士なのに、味方の助手役以上に結びついたこの感じ……先輩ならきっとやってくれるだろうという安心感……そう、これは――
「――だから、カルちゃんに頼んだんでしょ?」
――友情なんだッッッ! 相手の手の内知り尽くし! それゆえ動きも分かりきり! だけれどそれらを越えてくるッ!
あぁ! やっぱり、私はホームズのヒロインには成れなかった。代わりに私が成れたのは……強敵だッッ! 探偵の……怪盗だッッ!!
「わ、私ですかッ!?」
迫真の演技ッ!! 素晴らしい! カルっち! 驚きながらも完璧な仕草で無関係を装っている! これなら、女優だって目指せるしッッ!
だけども……惜しいっ! 身を守るように片手が胸の前にやってきて、逃げるようにもう片方の手が……カルっちのスカートの脇へと――
「別に驚くことじゃないっしょ? 実際叔母さんやお姉だって、プレイヤーの手札を覗いて、勝負を観戦していたわけだし……」
「うん。そうだね。でもね、モモちゃん。紫先輩やちと先輩とカルちゃんとの間には、決定的な差があるんだよ?」
――見破ら……れた。
失敗した。リョウっちの視線がカルっちが咄嗟に庇ってしまったポケットへと向けられている。
「カルちゃんは賢い。だから、ゲームにイカサマに関する規定が加わった時点でイカサマの応酬になるのを理解したんだ。そして……モモちゃんを守ろうとした。そんなところかな?」
「私は――」
「――リョウっち、ムードはもう十分だし。持ち時間は1分だけなんだからね?」
お姉が決めたシンキングタイムは1分だけなのだ。この短くも儚く苛烈な時間は、夢のように消え去り忘れ去られるのみ。それでいいんだし。
私がそう言うと、リョウっちは鋭い視線を私に向けてきた。心の奥まで覗かれてしまいそうなそれを……だけれど私は逃げずに受け止める。どうせ、既にリョウっちの推理は完成させているのだろうから。
「――音楽でしょ? 音楽でプレイヤーの手札の内容をモモちゃんに伝えてたんだ」
「ジュークボックスのことだし? まぁ確かにカルっちは動かしたけど――」
カルっちが動かしたのはたったの1回だけ。“Puff the magic dragon”だけだ。たった1回の暗号を解読されたくらいじゃ、どうとでも言い張れる――
「違うよ。イカサマに使ってたのはスマートフォンの着メロの方だ」
思わず渋い顔をしていた。隠すつもりなんてない。隠してもバレる。なら、この戦いを思う存分楽しんだ方が良さそうだ。
「着メロ?」
「咄嗟に考えたものだし、とてもシンプルな暗号だと思う。それこそ、相手の手札が”強い”か”弱いか”か。ここからは推測だけど、男性ボーカルなら才賀先輩の手札が強い。女性ボーカルなら僕の手札が強い。混声なら双方の手札が強い、じゃないかな?」
そう。そして……そのシンプルさに解読されない自信があったんだし。あまりにも大雑把な内容であれば、それだけ解読も難しいと思ったのだ。だけれど、さすがはリョウっち、と言ったところかな? だけれど……甘い。
それには何の証拠もないのだ。つまり、私はこう言えばいいわけじゃん?
「それは無理だし。だってリョウっち、着メロは着信があったから流れるんだよ? 確かにカルっちはスマホを弄ってたけど……共犯者たる私は弄ってない」
つまり、カルっちが1人で音楽を鳴らすのは無理なのだ。なにしろ、カルっちは全ての着信を、”ポケットの中で鳴ったスマホを取り出す”という手順を踏んで対応していたから。そもそも、実際のスマホにも着信履歴が残ってるわけで……
「だからだよ」
「後輩……それはどういう……」
あぁ、もしかして、リョウっちも私と同じ気持ちなのかな……いや、きっとそうだ。だって、リョウっちなのにお姉をほとんど意識していない! さっきからリョウっちの視線は私が独り占めか!
「カルちゃんは――」
「カルっち」
私がそう言うと、美人な助手役さんは大人しくスカートのポッケからスマートフォンを取り出し、覚悟を決めたのか潔くテーブルの上に載せる。
そこで思わず全員の視線を受けたディーラー役のお姉がスマートフォンを起動し、カルっちの言うパスワードを入力。あっさりとロックは解除された。そしてメールの着信履歴を見れば、彼女のお友だちからのメールがずらり。いずれもポーカーの間の時刻で、間違いなくゲーム中の着メロの原因だ。
「ほら、見て。メールの送り主は全部”永子”とか、全く無関係の赤の他人だし。まさかリョウっちは、この短い間にカルっちがお友だちを説得してイカサマに参加させたとでも言うの?」
私がそう言うと、お姉は困ったような顔でスマホをリョウっちに渡す。だけれど、意外なことにリョウっちは興味なさそうに電源をオフにするや、カルっちに返してしまったのだ。そして言った。
「送り主に意味は無いよ。だって、カルちゃんは送り主名を変える方法を知ってるし、メールも時間指定で送れば良いだけだからね」
……他ならぬカルっち自身との出会いになった事件で。
まずい。防衛ラインが突破されてしまった。しかも、さすがのカルっちも動揺を隠し切れていない。見た目は平静なままだけど、視線が助けを求めるように私を見てしまったんだし。ぐぬぬ、どうやら覚悟を決めないといけないかぁ。
そこでお姉が口を挟んだ。
「後輩。話は分かった。だが、証拠はあるのか?」
「――あります」
自信満々に頷くリョウっち。それにつられるように私も口角を上げていき――
「カルちゃんのもう片方のポケットにあるはずなんです。メールの発信元……モモちゃんのスマホが……!」
リョウっちは素早かった。あくまで紳士的にカルっちの両手を掴むと、そのまま万歳させる。………………そのときカルっちの胸の谷間に視線が泳いだのは見なかった事にするとして。
同時にお姉がカルっちのもう1つのポッケに手を突っ込んだ。そして直ぐに引き抜かれるとそこには……おぉ! 誠に残念ながら、明かりをキラキラと反射するメタルピンクなマイスマホがッッ!
――あちゃあ……。これはどうしようもない……
「春先輩! 無理です! だって私のスマホはペンギーの柄物カバーがついてるのに、モモ先輩のスマホは剥き身なんですよ!? そんな目立つことしたら目敏い先輩方にあっさりと見破られて――」
「――カルちゃんもモモちゃんも、さっき見たときはスマホカバーはお揃いだったよね? 不穏な空気を感じ取って、言い訳できるよう咄嗟にモモちゃんのカバーを取ったんでしょ? スマホそのものを返せなかったのは、その余裕が無かったからだ。つまり、今のカルちゃんは身体の何処かに不自然なスマホカバーを隠している。というわけです、ちと先輩!」
リョウっちはそこまで言いきると、優しい表情でお姉を振り返った。お姉はほっとしたような顔でそれを眺めてたっぽい。
残念だけど、どうやら負けのようだし。カルっち、咄嗟に機転を利かしてくれてありがとう。でも、カバーの隠し場所は間違いなく……服の中だ。というか、物理的に他に隠し場所がない。で、そんな将来有望な後輩を裸にひん剥くわけにもいかないじゃん?
「お見事です……先輩」
私にできたのはそれだけだ。シルクハットを取って一礼……したかったのだけれど、あいにく手持ちが無かったので、代わりにスカートの裾をつまんでちょこんとお辞儀。リョウっちは一瞬だけだけど、私に見惚れてくれて……
「でも、勝ったのは私だからね?」
苦笑いだった。きっと華やかな戦いを終えて現実に戻ったのだろう。
私、陸奥百花。手持ち83ポンドからイカサマがバレて半分を失って失格! つまり、獲得賞金41ポンド! これだけあれば、カルっちと2人でハワイに行くには十分すぎる! タダで豪華な探偵部解散記念パーティーができるのだ! 間違いなく大勝利だしっ!