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立浜高校探偵部  作者: 中上炎
探偵部の冒険
20/93

8.赤い円③

 「……え? 春茅君? タカ君ではなくて?」

 「……僕……ですか? 先輩?」

 「あぁ。君以外にあり得ない。今回の犯人はリンに詳しい者だ。リンが青い炎を生むことや、その加工方法に入手手段。……君は私と一緒に園芸をしていたときに、リンの知識を得たんだろう?」


 ま、待って欲しい! 何だか事態はとんでもない方向に進んでないか!?


 激しい動悸が僕を襲い、刹那どこからか慰めるように吹き渡る風が頭を冷やしていく。


 ――いや、確かに佐伯には無理かもしれないけどさ。あいつ……才能も努力も運動に費やしてる残念少年だし。


 「待って下さい! 確かにリンのことは知ってましたけど……それなら佐伯だって」

 「彼には無理だ。今回のトリックには事前の準備がどうしても必要だ。となれば、毎日のように部活のある野球部に彼には難しい。むしろ、活動日が限られている探偵部の方を疑うべきだろう」


 うぐぐ。まずい。久瀬さんは完全に僕を疑ってしまっている……。どうにかしないと……!?


 けれども、ちと先輩は既に確信しているようで……それどころか、まだ解けてない謎を解こうととても楽しそうに笑っていて……。そのまま僕を検めるように近づいてきて……。


 あぁ、もう! 心が跳ねるのが収まらないっ!


 「それはそうかもしれませんけど……それは状況証拠じゃ――」

 「……火種として探偵部の去年の灯油を持って行ったのも君だろう? 私の記憶では、確かに去年のあまりがあった筈なんだ。部室の鍵を持ってるのは君と私だけ」


 うぐぐ。そうだ。お陰でここ数日、僕とちと先輩は寒波に耐えられずにストーブを使おうとして……燃料がないことに絶望したんだった。


 そんな追い詰められた僕に対し、ちと先輩は天使の微笑みを浮かべながら悪魔の言葉を囁くのだ。


 「何だったら……灯油泥棒ということで、警察沙汰にしても良いんだぞ?」


 あわわわわ!? それは拙すぎるぅ!? だって、灯油の入っていた一斗缶には僕の指紋がべったりと付いてる筈なんだ!? そうだよ!? 確かにこの心霊騒動を発案したのは僕なんだ! 他でもない……親友の佐伯が困っていたから……しょうがないだろ?


 リンのことは……ちと先輩が園芸部の代わりに花壇を手入れしている時に知ったんだ。灯油は……森亜の謎を解こうと部室を捜索したときに偶然見つけただけ。


 それだけなのだ……。こ、こうなっては致し方ない。


 で、でも、どうにかして、あれだけは隠さないと!?


 「そ、その……」

 「ふふん。中々良く出来た謎解きだったと、褒めてあげても良いんだぞ?」


 つまり……警察か、ご褒美か。この二択である。半ば焦りで冷静な判断が出来なくなっていた哀れな僕は、もちろん飛びついてしまう。


 「す、すみません! 僕がやったんです!」

 「……春茅君ッ! どうしてこんな真似を!?」


 やや怒りが戻ってきたらしい久瀬さんが詰め寄る。刹那、僕は共犯の佐伯と視線を交わし合っていた。そう。確かに発案は僕なんだけど……佐伯も協力していたのだ。例えば……久瀬さんが小説の題材を探しそうな相手に先回りして狐火の噂を流したり……さっきも即席の設定を付け加えて、皆を空き地の方へと誘導したり。


 ……僕のやることは一つだけだ。


 「佐伯に恋人が出来て悔しかったんだ! だから、ちょっと脅かしてやろうと思っただけなんだ! 久瀬さん、本当にごめん!!!」


 土下座である。憧れのちと先輩の前だったけど、戸惑いはない。頭を下げる前の最後の景色は印象的だった。本気で申し訳なさそうに頭を下げる佐伯、白けきった顔のちと先輩。そして、軽蔑するかのような久瀬さん。


 うぅぅ。惨めだよぅ。本当は……謎解きはもう少しスマートに、かつただの自然現象だというのを納得させるだけのつもりだったのだ。その為に青い炎=リン説の証明用の分まで部室に準備してたのに……。


 そう、きっかけはつい先週のことなのだ。




 「オカルト研究会の残党……ですか?」


 僕は受験勉強で留守のちと先輩の代わりに、部室でクマちゃん先生と話していた。何でも、しぶとい油汚れのように残っているオカルト研究会の残党に、新たな動きがあったようなのだ。


 クマちゃん先生は生徒指導もお仕事。当然揉め事になりそうな情報は掴んでいる。


 「あぁ。春茅と同じ1年の久瀬という生徒なんだが、どうも前々からマークしていたオカルト研究会と接触しているという情報があってな……」

 「久瀬……何処かで聞いたような名前です……」

 「……多分、お前の友達の佐伯関係じゃないか? 何でも一度強引な勧誘を受けたときに佐伯が庇ったそうで、その縁で付き合ってるとか何とか」


 クマちゃん先生はやっぱり生徒に慕われていた。お陰でかなり詳しい生徒事情にも通じているのだ。


 「……なるほど、少し佐伯に話を聞いてみます。……彼女がオカルトに見向きもしないように出来るかもしれません」

 「そうしてもらえると助かるよ。……春茅、気をつけろ。オカルト研究会残党は、既に元のオカルト研究会から変質している。黒い噂も多い。どちらかというと、あれは神代の狂信者のような奴らだ」

 「それはそうでしょう。そういう奴らだけが、オカルト研究会崩壊後も活動を続けたんでしょうから」


 さもありなんと頷くクマちゃん先生。僕は直ぐに立ち上がっていた。……親友を見捨てるわけにはいかないからね。


 そうして思い立ったが吉日。僕はその日の活動が終わるや佐伯と話をし、即座に思いついた計画を実行に移すべく神社へと足を向けたのである。


 既に日も暮れ始めた黄昏時。赤く彩られた境内を僕は歩いていた。もちろん下見である。僕が考えた青い炎計画は、当然ながら火災の危険が伴っている。だから実行場所は選ばなければならないし……許可も取らなくては駄目だろう。


 「くふふっ、お兄さん。どうしたの? 我が家に何かご用かしら?」

 「ほあ!? ……ビックリした。えっと巫女さんですか? ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど……」


 砂利の上で空き地を眺めていた僕に対し、いつの間にやら近づいてきた巫女さんが話しかけてきたのだ。


 やや古めかしい感じで、白衣に朱色の袴を履いていて、中々のオシャレさんなのか振り袖まで揺らしながら口元を隠して笑っているではないか。


 僕は正直に巫女さんに話の内容を伝えると、彼女はあっさりと僕を社殿の中に入れてくれた。中で奉られたご神体の前には、同じく白の狩衣に水色の袴を着た神主さんが居た。頭には……えっと、なんていったかな。……そう、烏帽子を被っている。


 「ねぇ、聞いてよ。このお兄さん、なんだかとっても面白そうなことを考えていらっしゃるの」

 「ほうほう。それは興味深い。是非とも妹だけじゃなく、私にも聞かせてはくれまいか?」


 かくして僕は神主兄妹に事情を話し、無事協力を取り付けることに成功したのだ。


 白面に狐目が特徴の兄妹は、僕の話を聞くなりあっさりとOKしてくれた。


 「くふふ。ただの空き地ですのでお気になさらずに。むしろこれを機に立浜の学び舎で我が社が有名になってくれれば、神様もお喜びになりましょうぞ」

 「くふふっ。お兄さん、稲荷神社は商売の神様なの。俗っぽいけど……お賽銭を頂かないと、おまんまも油揚げも食べられないからね?」


 くふふ。くふふっ。そんな笑い方をする兄妹はとてもよく似ていた。


 かくして、神社の全面的なバックアップと共に僕は佐伯と共に作戦を実行に移したのである!




 「……そんなことだろうと思っていたよ…………」

 「うぅぅ、しくしく。……先輩は最初からお見通しだったんですね……」


 その後、劇的な佐伯の愛の言葉を久瀬さんはうっとりと聞き遂げると、僕とちと先輩のことなど綺麗さっぱり忘れて、イチャイチャイチャイチャしながら仲良くなっていた。


 ――あれ? 僕土下座までする必要は無かったんじゃない? そんなことを考えていると、不意に乗っていた車が小さくはねて僕は頭を軽くぶつけていた。


 そう。今僕たちは、ちと先輩が電話で呼びだした車に乗って帰り道を辿っているのだ。運転しているのは梅谷さんという、ちと先輩の女中さんである。


 佐伯と久瀬さんは僕とちと先輩の前の広い座席でピタリと身体を寄せ合って甘えていた。ピロートークかと思うほどのだだ甘の言葉が広がっていく。あぁ、これが二人だけの世界って奴か……。まるで僕たちの声が届いてないみたい……。


 お陰で僕がちと先輩に小声でネタばらししてるのも、全く気づかない様子。さすが、リムジンは広―い!


 「大体、幽霊嫌いの君が今日に限っては全く怯えてなかったじゃないか。おかしいと思ったんだよ」

 「あぁ……そこは盲点でした。……ってことは、かなり最初の方から疑ってたんですね」


 ちと先輩はリムジンの窓から遠ざかっていく稲荷神社の方へと視線を向けながら呟く。その視線は僕には向いていない。


 だけれど、それは無関心さを表しているのかと思えば、そうでもないようで


 「……ところで、後輩。今回の謎を解いたんだ。ご褒美を貰っても良いか?」

 「……? 何でしょう? こうなったからにはすっかり白状しますけど?」


 ちと先輩は前から聞こえてくるバカップルの声を華麗に聞き流している。


 「1つめだが……そもそも何故君はこんなことをしたんだ?」

 「……? それは久瀬さんの目を覚まさせる為に――」

 「それこそまさかだ! こんな大がかりなことしなくとも、いくらでも出来たじゃないか」

 「……ぅえ!?」


 あわ!? ままま、まずい!? ちと先輩……僕の真の目的に気づいているっぽいし!?


 「そう、その妖しいオカルト研究会残党とやらに私と2人で直接ぶつかれば良かったんだ。何故こんな真似を?」

 「い、いや、その! ちょっと格好つけてみたくなったっていうか……!?」


 だ、駄目だ! 僕の動揺が顔どころか言葉にまで現れているぅ!? 案の定ちと先輩はとがめるような視線でこっちを振り向いたじゃないか!?


 「……ご褒美」

 「で、でも、その」

 「くれないのはルール違反だ。帽子を没収するぞ?」


 もはや退路はない。ええい、一か八かだ! 思い切って覚悟を決めよう! 勇気を振り絞って言うしかない!


 「だ、だって、その……!」

 「うん。なんだ?」

 「……クリスマスです! どうしても、ちと先輩と! クリスマスを! 一緒に! 過ごしたかったんですっ!!!!」


 言った。言ってしまった。しかも、勢い余って予想以上に大きな声で。佐伯が振り向いた。久瀬さんももちろんこっちを見た。その顔にはさっきまでの感情はなくなり、逆にワクワクしながらこっちを見て小さく応援している。


 そして、肝心のちと先輩はと言うと――


 「そ……その……な?」

 「な、なんですょう!?」


 あ、声が上擦った。


 見ればちと先輩は珍しいことに頬を朱に染めると、僕と視線を合わせずにいる。そうして、その白い喉が緩やかに動いたのだ。


 「……次は……普通に誘ってくれ?」

 「…………ッッッ!!!!!」


 …………?


 ……………………。


 ……っ!


 ぃいよっしゃぁぁぁぁぁ!!!!


 みんな聞いた!? 聞いたよね!? 間違いないよね!? 僕の耳は確かに聞いたからね!?


 あぁ、やった! ついにここまで来たんだ! 


 見れば佐伯はガッツポーズを決めて無言で祝福し、久瀬さんは満面の笑みで手帳を取り出していた! どうだ! 最高の題材だろう!?


 「さっっっっすが!!! これが探偵部なんですね! 凄い、創作意欲が湧き上がってきました! 特に千歳先輩です! 探偵部創設以来の秀才の噂に間違いなしですっ!」

 「そ、それは過分だよ。私なんて治村先輩と比べたら……」


 文学少女のまま再びハイテンションに戻った久瀬さんの掛け値なしの賛辞に、ちと先輩はむず痒そう頭を振った。そして、久瀬さんは言ったのだ。


 ……そう。僕たちの運命の分岐点だ。


 「治村先輩……ですか?」

 「あれ? 久瀬さん、知ってるの?」


 不思議そうな僕の問いに、同じく不思議そうな顔の久瀬さんは小さく頷いてから言った。


 「……治村部長はどっちかって言うと春茅君の方だと思いますけど?」


 思わず視線を向けた僕とちと先輩に、彼女は気づかず恋人の手を握った。


 「それで、千歳先輩は才賀先輩です!」

 「久瀬さん!? その才賀先輩って誰のこと!?」

 「……? 春茅君……知らないの? 治村先輩の憧れの人にして、巫女の祟りにも負けず、生徒会の森亜を破った伝説の立高生だよ?」


 あぁ! なんて事だ!? どれだけ探しても見つからなかった森亜の謎の鍵が……どうしてこんな所に!?


 「……久瀬、その話を詳しく聞かせてくれ」

 「……? もちろんです。世間一般では善人とされている森亜副会長と、悪人とされていた才賀先輩ですが、その実体は全く逆の物でした! っと私達文藝部には伝わっています。……少なくとも、過去に作られた文藝部の小説には、そういう話が多いんです」


 僕は……開いた口がふさがらなかった。ようやく気づくことが出来たのだ。そう。探偵部を作り上げたのは治村初代探偵部長。と、言うことは、謎の人物Aこと才賀先輩は、当然探偵部ではなかったのだ……。だって、探偵部自体が存在しないのだから……!


 僕以上に衝撃的だったのか、ちと先輩は虚ろな視線で……それこそ何かを呪うような視線で外を睨んでいる。……心当たりがあったのだろうか。


 「才賀先輩は千歳先輩と同じく格好良いお金持ちで、在籍していた文藝部でも人気があったみたいです。だから、当時の小説やその資料にも残ってました」

 「待って久瀬さん! ってことは……もしかして森亜に関する資料も文藝部に残ってるの!?」


 隣でちと先輩がピクリと動いた。それも気にせず、僕は掴みかかる様な勢いで久瀬さんに近づく。彼女は驚いたように距離を取ってから……


 「……いえ、古い資料の大半は夏休みに廃棄してしまってます……」


 とても言いにくそうに、明後日の方向を見た。


 ……なんて事だ。せっかく掴んだ手がかりは……既に失われていたって事なのか……。


 僕はこっそりと隣を伺ってみた。やっぱりだ。ちと先輩は頭を抱えて震えていた。


 ……それはそうだよね。あと少しの所で探し求めていた手がかりが永遠の闇に葬り去られてしまったんだもの……。


 僕がそう思って慰めの言葉を考えたのと、ちと先輩が頭を上げたのは同時だった。その瞳は悲しみに暮れる……どころか爛々と輝いていて


 「よく分かった。久瀬、佐伯、今日はありがとう。……後輩も良い友達を持ったようだ。私も鼻が高い」

 「でしょう!」

 「……? いえ、どうもです」


 そこまで言うのと同時に、リムジンが停まった。見ればそこは立浜駅の直ぐ近くで、佐伯や久瀬さんの住む家からも近い。


 そのまま2人を見送ったちと先輩は、再び梅谷さんに車を走らせた。その目的地は……先輩の家ではない。もちろん僕の家でも。


 「後輩。良くやったな! 私達はおそらく、二代以降の歴代で最も謎の解決に近いところにいる!」

 「はい! ……でも、せっかくの手がかりも消えてしまいましたね……」


 僕の問いに、ちと先輩は何故かスマートフォンを取り出していた。そうして優しく笑って否定する。


 「久瀬は才賀先輩と言っていたな?」

 「はい。つまり、その才賀さんを探せば良いって事ですよね?」

 「必要ない。既に見つけたからな(・・・・・・・・・)


 ――それはどういう意味なんですか!? でも、僕がそう言おうとしたときには、既にちと先輩は思考の海に沈んでいた。気がつけばリムジンはその値段に比例した快適さを見せつけ、室内のような静けさを保っている。


 「……私はもっと早く気づくべきだった。……思えばおかしいことも多い。何故あんな所にいるのか? まったく能力に見合ってない閑職ではないか。何故探偵部を支援しているのか? なるほど、こういうことだったのか意地悪め……」


 同時に掴んだスマートフォン、その画面を僕に見せつけてくる。なんて事は無い。氏名や電話番号にメールアドレスの書かれたアドレス帳だ………………っ!?


 「寺島……才賀? ……才賀先輩……寺島理事!? まさか……寺島理事が探偵部!?」

 「間違いないだろう。よりにもよってあの叔父は、私達が謎を解けるのか愉しんでいたに違いない! それこそ、私達宛に試験まで出してな!」


 なんて事だ!? 今まで幾度となくちと先輩を助けてくれていた寺島理事が、初代探偵部長を支えた才賀先輩だったなんて!? 


 同時にちと先輩は興奮しきった顔のまま大急ぎでスマートフォンを操作し……寺島理事へと連絡を取る。


 だが、暫く話し合った後に頭が冷えたのか、通話を終えると幾分か大人しくなっていた。


 「後輩……年が明けたら叔父さんに会いに行くぞ。あの抜け目のない叔父は、廃棄されそうだった文藝部の資料も全て回収していたそうだ」

 「……! はい! 必ず行きます!」


 かくして、僕は幸せな気持ちでちと先輩と初詣……のおまけで寺島理事訪問の約束を取り付けたのだった。もちろん、このこともしっかりと活動日誌に残していく。


 思えば、この赤い円事件は神がかった謎だったなぁ。青い炎という神秘的なイメージは勿論だけど、赤い縁。つまり、オカルト研究会や寺島理事、それに生徒会との宿命の絆が明らかになったわけだし。……それに、今思えば狐火は円を描いていた。炎が円を、である。


 「ところで後輩、青い炎はどうやって着火したんだ? 現場には特に仕掛けもなかったが……」

 「あ、あれですね! 実は神社の巫女さんと神主さんに力を借りたんです。人力です。2人とも若いだけあってノリが良くて、素早く回収してくれたみたいです」

 「……巫女に神主?」


 ちと先輩はキョトンとした顔をしていた。いわゆる鳩が豆鉄砲を食ったような顔だ。可愛い。そうして怪訝そうな顔の先輩は言った。


 「あそこの神社の神主は還暦近かったはずだし、家族とも離れて1人で暮らしていたはずだが……?」

 「…………………………え?」


 ………………つ、つまり……どういうこと!? え? え? 僕が会ったあの兄妹は何だったの!? い、今思えば、気配もなく現れる不思議な兄妹だったけどさ!? ま、まさか、あれは本物の……?


 すっかり僕は混乱を極め、動揺のあまり窓の外に視線を向けてしまう。遠くから悪戯成功を喜ぶ笑い声が聞こえたような気がした。


next→幽霊の足

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