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第六話 ジェスター皇帝とマイス国王

 ピュセルお姉さんの騎士団の人達はとても優秀で僕達が入ってきた地下のジャイアント・アントの巣穴の出入口に騎士団の人達が近づかないよう僕達が誤魔化している事に気づき、僕達に気付かれないように地下の巣穴出入口を付近を調査をした結果、マナ・クリスタルの大鉱脈を発見、主であるピュセルお姉さんに報告していたそうです。


 上手く誤魔化せたと思ったのになあ……。 僕ってやっぱり隠し事ができないんでしょうか?


 ピュセルお姉さんから僕達に下された指示は、先ずピュセルお姉さんと共に冒険者ギルドに赴きマナ・クリスタルの大鉱脈発見の報告をする事です。

 その為、冒険者ギルドまでの護衛をローゼンクロイツ辺境伯――ピュセルお姉さんの騎士隊を伴って、ピュセルお姉さんが証人となり同時に僕達の後ろ盾となる事でラージック王国や他の帝国貴族の横槍を防ぐそうです。


 これで名実ともに僕ととボルナレフさんが大鉱脈の発見者であり権利の所有者となります。


 ちなみに僕がニンバスのダンジョンで倒したオーガ・キングと発見したダンジョン・コアの事も報告するとマナ・クリスタル大鉱脈の事も含めた業績の御蔭で冒険者ランクが超越級になりました。


 そして問題はその後です。


 ボルナレフさんは既にレムス技師として師匠から一人前として認められていたので、お師匠さんの工房で自分の工房を建てるのに独立資金を稼いでいたところ、兄弟子に殺されそうになりました。

 その時に偶然、マナ・クリスタルの大鉱脈を発見し、その利権で十分独立資金が得られます。

 更に帝国内では有望な魔法金属等の鉱脈や鉱山が沢山在り、ダンジョンも多数存在するので魔法生物――魔物の素材も手に入り易い上に帝国第二王女でありローゼンクロイツ辺境伯のピュセルお姉さんが後ろ盾になってくれました。


 ですのでローゼンクロイツ領で工房を開き、もうラージック王国にあるお師匠さんの工房に戻るつもりはないとの事です。


 ただ、ラージック王国に居る大恩有るお師匠さんには生存報告と事件の詳細をしたためた手紙を送り、兄弟子達の処遇をお師匠さんに任せると言っていました。


 そして、僕はと言うと今現在、ドゥゴール帝国の首都にあるお城の謁見室で皇帝陛下の御前に膝を突いて頭を垂れてます。


 正直おっかないです。


 だって皇帝陛下、一時間ずっと玉座に座ったまま不機嫌な顔で肘掛けに人差し指をトントンと叩き続けているのですから。だからといってこっちから話しかければ不敬に当たります。


 打つ手無しです。 お願いだから誰か助けて。


「はあ~……ピュセルの奴、婚姻相手にやっぱりこいつを連れて来やがったか……」


 やっと皇帝陛下が喋ってくれました。 が、何やら僕を連れt来る事を予め予想していたような感じです。

 それと皇帝陛下、言葉遣いが乱暴です。


「俺が第二皇女ピュセルの父、ジェスター・E・ドゥゴールだ。 許す。 (おもて)を上げろ。 ……お前がレーウォン・R・ラズメイルか。 まったく、あいつ好みの男だな。 話はピュセルから聞いている。 お前、ピュセルと結婚したいんだって? でも駄目だ」


 僕が何か言う前にピュセルお姉さんとの婚姻を即行で反対された。 それはそうそうだ。 だって他国の、しかも身分の低い下級貴族の息子……いや、もう貴族でもないか。 が、皇女様と結婚させて下さいと言って素直にさせてもらえる訳がない。


「だってお前、まだ成人してないだろ? 当分の間は婚約で、ちゃんと成人した後で結婚しろ。 後日、正式にピュセルの婚約者として披露パーティーするからそのつもりでな。 それと婚前交渉は控えろよ。 結婚式の時、新郎妊婦なんてなったら周りから口喧しく色々言われて苦労するぞ。 分かったか?」


 へ!? 結婚許されたの? 何で? どして?


「あの、ピュセルお姉……ピュセル様との婚姻を許して頂けるのですか?」


「ん? 許すも何も、もうやる事やっちまった後だろう? それにピュセルがお膳立てしたせいで反対する材料がねえし。 そうだな……強いて言うならお前には足りないものがある位か」


「足りないもの? 権力と財力と名声ですか?」


「馬鹿野郎! 全然違う! 権力は俺やピュセルがお前の後ろ盾に成る事で得られるし、財力も今後マナ・クリスタルの大鉱脈の利権で莫大な金が手に入る。 金の運用はピュセルに任せておけば問題にはならんだろう。 名声もお前自身がレムスの性能に革命を起こした事と先のマナ・クリスタルの大鉱脈発見で既に得ている。 お前に足りんのは貫禄と威厳だ! ……とは言っても貫禄は年を重ねにゃならんし、威厳は人生経験積まにゃあ得られん。 まあ、今のお前ではどうする事も出来んがな」


 そりゃ無理だ。 歳を取るには時間が掛かる。


「お前に人生経験を積ませる方法は少し俺に考えがある。 全ては婚約披露パーティーの後だ」


 そう言ってジェスター皇帝陛下は口角を釣り上げた。 まるで面白そうな新しい玩具を手に入れた子供のように。

 何やらまた嫌な予感がします。 これ以上の無理難題は堪忍して下さい。 心が折れそうです……。


 それにしてもやる事やったとは一体何の事でしょう?




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




――ラージック王国 王宮 謁見室――


 ラージック国王であるマイス・D・ラインバッハは頭を痛めていた。


 息子で王太子であるオルフェウスが大問題をやらかしたのである。


「父上、お呼びにより参上つかまつりました」


「……お前、やらかしてくれたな」


「は? 一体何の事で御座いましょうか?」


「これを見よ!」


 そう言って控えていた侍従長に一枚の手紙を渡し、侍従長が礼儀に則り王太子の下へ手紙を持って来て差し出す。

 父王の物言いに苛ついて、侍従長から差し出されたその手紙をオルフェウスは少々乱暴な所作で受け取り手紙の内容を確認する。

 手紙を読んでいる途中からワナワナと体を震わせるオルフェウス。


「こ、これは! 一体どいう事だ!!」


「それは私が問いたい。 オルフェウスよ。 レーウォン・R・ラズメイルは確かアストラ魔法学園で生活しており、卒業を間近に控えていたはず。 それが何故、ドゥゴール帝国に居り、しかも第二皇女の婚約者になっておるのだ?」


「そッ、それは、レーウォン・R・ラズメイルは魔法適性を偽りアストラ魔法学園に入学しておりました! 故に退校処分としたのです!」


「では、何故その事を私に報告しなかった? 私は仮にもアストラ魔法学園の理事長だぞ.」


「それは、瑣末な問題に父上の御手をわずわらわせる必要もないと思いまして……」


「我が国の経済に大きく貢献した者の処遇が瑣末な問題か……」


「……」


「話しを勧めよう。 その直後、ラズメイル男爵家に子爵への陞爵の話が私の所に来ておるのだ。 しかもそれはお前の指示と宰相から聞いたぞ。 そうであるな宰相よ」


「その通りに御座います」


 宰相は平坦な口調で答えた。


「説明せよ、オルフェウス」


 マイス国王は冷淡な口調でオルフェイスに問いただした。


「ラ、ラズメイル男爵家は長きに渡り騎士として王家に仕えてくれました。 その恩に報いるのは当然の事かと……」


 言い淀んで答えるオルフェイス。

 マイス国王は溜め息を盛大に吐き出した。


「オルフェウスよ、調べはついている。 レーウォン・R・ラズメイルは職人の不手際で不良品の石版で能力適性測定で誤作動が生じ本来の適性ではなく、全く予期せぬスキルと適性限界が表示されてしまったと。 それにもめげずレーウォンは魔法学園で魔法を使えるようになる為に魔法の知識を学び、その結果、レムスに掛かるコストを大幅に下げ、その上でレムスの性能を以前のものより飛躍的に上げる技術を確立するという革命を起こした。 そしてわが国はその恩恵を受け経済発展を遂げた。 例え魔法学園の入学資格を下回ったとしてもこれだけで卒業資格は十分に得ているはずだぞ? それにそもそも能力適正を偽ること事態不可能だ」


「クッ!」


 オルフェウスは歯噛みしながら己の父であるマイス国王の話しを聞いていた。


「更にラズメイル男爵家の現当主であるフィンス・A・ラズメイルを取り調べた。 オルフェウスよ、お前からフィンスに息子で跡継ぎのレーウォンを絶縁する事を条件に子爵へ陞爵させると話を持ちかけられたとフィンスが証言したぞ」


「……クハハハハ! それがどうしたと言うのです! たかだか羽虫を一匹、いたぶっただけではないですか! それで何故私が責められねばならぬのです!!」


 国王は息子の開き直ったその態度に落胆し頭を振った。


「そして、お前はその後のレーウォンの行動を監視し、彼の者が冒険者となると、ならず者を用いて彼の者を暗殺しようとしたな! 何故だ! 何故お前は其処まで彼の者を憎む!!」


 王太子は俯き、そして顔を上げた瞬間、深淵を思わせる暗く濁った瞳を玉座に座る自分の父に向けた。

 その目を見たマイス国王は思わず喉を鳴らして戦慄した。


「レーウォン・R・ラズメイルは国を挙げての私の立太子の式典の折り、隣国のドゥゴール帝国第二皇女ピュセル様が我が国に賓客として来られた際、私は一目見て恋に落ちました。 ピュセル様と楽しい語らいの一時を過ごそうと声を掛けようとしたその時、奴は! レーウォンはピュセル様の目の前でコケたのです! そればかりか! ピュセル様はレーウォンを助け起こすとそまま共に立ち去ってしまわれたのです! その後、ピュセル様は奴と手紙の遣り取りを行い、奴と交流を深めたというではないですか! ピュセル様との大事な語らいの機会を邪魔した奴を私は心底恨みましたよ!」


「なればそれを挽回し、何故ピュセル殿を振り向かせようと努力しなかったのか!」


「しようとしましたとも! ですがピュセル様は私には定型文での遣り取りしかさせてもらえなかったのです!!」


 オルフェイスは一拍置いて再び語りだした。 自らの内にある思いを全て吐き出すように。


「だから、機会を待って奴を消す事を思いついたのです。 しかし結局、奴は生き延びたようですね。 しかも、私が恋い焦がれて手に入れたかったものを手に入れて……。 ですが解せませぬ! 何故、ドゥゴール帝国皇帝は奴と第二皇女の婚姻を許したのか!」


「それは、彼の者がお前の放った暗殺者の追ってから逃げた折に発見したマナ・クリスタルの大鉱脈の利権に絡んでの事であろう。 情報によればその大鉱脈は莫大な埋蔵量を誇り、今後百年以上、帝国の主要産業の一つになる程だそうだ」


「ならば奴には私に感謝して欲しいものですね」


 オルフェイスは戯けてみせた。


「……オルフェイスよ。 自室での謹慎を命ずる。 後で正式に王位継承権を剥奪し、ファルスに王位を継承させる。 衛兵! オルフェイスを連れてゆけ!」


 謁見室に控えていた衛兵がオルフェウスを拘束してオルフェイスの自室へと引きずっていった。


「育て方を間違えてしまったな……」


 マイス国王の顔は(やつ)れ、その面影はまるで老人のようであった。


 ラージック国のオルフェイスは嫉妬と執念深い小さい器の男です。

 でも、こんな奴に限って予想の斜め上を突き破ったとんでもない事をやらかすんですよね……。

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