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第五話 プリンセスの花婿

 ピュセルのイメージは某雪の女王のLさんです。

「それにしても驚きました。 ジャイアント・アントの駆除をしてたらいきなり巣穴からレムスが這い出て来たのですから。 しかもそれにはアストラ魔法学園で卒業間近のはずのレーウ君が出て来て二度ビックリです」


 今、僕とボルナレフさんはピュセルお姉さんの御屋敷に招かれ、お茶とお菓子を頂いています。

 ピュセルお姉さんは僕より三つ年上の十七歳です。

 僕はピュセルお姉さんが上級貴族の娘さんなんだろうな~とは思っていましたが、まさか僕の国ラージック王国の直ぐお隣の国ドゥゴール帝国との国境にあるローゼンクロイツ辺境伯の娘さんとは知りませんでした。


 あれからローゼンクロイツ辺境伯の騎士団の人を案内してクイーン・アントを無事に討伐出来ました。

 クイーン・アントの直ぐ近くの部屋にあった卵は属性魔法のフリーズで孵化しないよう一旦冷却処理してから冒険者ギルドで調理用食材として売るそうです。 食べるととても美味しいらしいそうですが……こんなの食べる人の気が知れません。

 残りのジャイアント・アントと幼虫や蛹は僕達が地下から巣穴に突入して中にいた奴は全て討伐。 地上に這い出てきた残りのジャイアント・アントも騎士団のレムス中隊により殲滅されました。

 今は巣穴を騎士団の人達が埋めている最中です。


 ちなみにマナ・クリスタルの鉱脈については今のところ誤魔化して話していません。

 だって大事な飯の種。 幾ら憧れのピュセルお姉さんでもマナ・クリスタルの鉱脈の事を知ればどうするか分かりませんから。


 僕はピュセルお姉さんから目線を少し逸らして会話します。


「まあ、色々と込み入った事情がありまして、此方に居るボルナレフさんと一緒にダンジョンを探索する事になりまして」


「ボルナレフ……そう言えばラージック王国の有名なレムス工房にとても優秀なレムス技師の方がいらしゃると伺いましたが、貴方がそうでしたか」


「いやいや! 優秀なんてとんでもない! わてなんてまだまだですわ! それよりレーウォンの方が凄いですわ! なんせレムス技術に革命を起こしてレムスの性能を飛躍的に向上させたんやから」


「そうですね! レーウ君は凄いです!」


「いやあ、それ程でも……」


 僕はいたたまれずピュセルお姉さんから更に視線を逸らします。


「……ところでレーウ君、何故お姉さんから視線を逸らすんです? 何か(やま)しい事でも隠しているのですか?」


「とんでもない! ただ、久し振りに再開したピュセルお姉さんが美し過ぎて直視できないだけです!」


 これは本当の事です。

 嘘は言っていません。


 ただ、アストラ魔法学園を退学になった上にその事で父親に絶縁されて実家を追い出されたなんて死んでも言えません。


 だって手紙で散々相談に乗ってもらった上に久し振りの再会で心配を掛けたくありませんし。


「むぅ~! レーウ君、やっぱり何か隠していますね! お姉さんに素直に話しなさい! 話さないとこの屋敷から出してあげませんよ!!」


 何故だ! 何故バレた! 僕のポーカー・フェイスは完璧だったのに!

 そう言えば手紙の遣り取りでもピュセルお姉さんは僕の悩みや隠し事を看破してみせた。

 そう、僕はピュセルお姉さんに隠し事ができないのです!


「……レーウォン、顔や態度に出すぎやで。 そんなんやったらわてでも丸分かりや」


「馬鹿な!? 僕の完璧な演技が見破られるなんて!」


「やっぱり何か隠してましたね!」


「しまったー!? 墓穴を掘ってしまったー!」


「さあ! キリキリ白状するのです! 素直に話せば今なら許してあげます!」


 バレてしまっては仕方がない。

 僕は素直にボルナレフさんに出会うまでの経緯を説明しました。


「……そうですか。 そんな事があったんですね。 それではレーウ君もさぞかし言い難かったでしょう……。 しかし許せないのは理事長代理のオルフェウス王太子とレーウ君の御父様のラズメイル男爵です! レーウ君は素直で真面目な努力家でそりゃあ魔法は全然でもレムスに革命をもたらしたのです! レーウ君は駄目な子じゃないです!」


 ピュセルお姉さん、フォローしてくれるの嬉しいのですが、魔法が全然て……今でも僕の心にグサリと来るのでそれは言わないで下さい。


「なんだったらウチの子になればいいです! そうです! それが良いです!」


 なんかピュセルお姉さんが暴走してます! 誰か止めて下さい!


「そうと決まれば早速、レーウ君のスキルカードを見せて下さい! 対策を立てて御父様を説得する材料にします!」


 出来たら見せたくないんですけれど……とは言える雰囲気ではないですね……。

 こう成っては見せる他無いですね。


「えーと、これです……」


 僕は素直にスキルカードを渡します。

 ピュセルお姉さんはそれを食い入るように見ています。


「す、凄いです。 極級がこんなに……。 適性が高いなんてものじゃないです。 えっ!?」


 ピュセルお姉さんは突然、素っ頓狂な声を出しました。 それからカードを弄って睨んでいます。


「……やはりレーウ君はウチの子に成るべきです! これで御父様を説得できます!」


「ど、どういう事ですか、ピュセルお姉さん」


「レーウ君には大戦略のスキルが有ります。 それもランク限界が伝承級です」


「なんやて!? 《大戦略》やて!!」


 ボルナレフさんが僕のスキルを聞いて大声で叫んだ。


「それがどうしたんですか?」


 二人は僕の言葉に固まります。

 一体どうしたというのでしょう?


「レーウ君、カード操作してスキルの内容確かめました?」


「いいえ、そう言えば初めて渡されたカードでそんな事が出来ると話に聞きましたが、僕のカードでは出来なかったのでそれ以降忘れてました」


「それは多分、レーウ君の能力測定で使用した石版が不良品でそれがカードにも作用して操作できなかったのでしょう……。 このスキルカードはちゃんと正常に動作します。 ……それでですね、これを見て下さい」


 ピュセルお姉さんが見せたのは先ほど言った大戦略のスキルについての内容だ。


 大戦略《伝承級》

   目的を達成する為にはどうすれば良いのかを感覚で理解出来る。


「何ですか? このスキル」


「見たまんまの内容や。 要するに自分が叶えたい望みがあって、なんとな~くやりたいようにやっとったら、いつの間にか望みが叶っとる夢の御都合主義スキルやな。 まあ、何でもかんでも望みが叶う訳やないけど。 自分の実現可能な範囲で望みが叶うスキルやな。 下手な固有スキルよりよっぽど使えるスキルや」


 僕は首を傾げる。


「んん? でも、僕が付与魔法以外で属性魔法の上級以上や他の魔法が使えるよう強く望んで努力しても手に入りませんでしたよ?」


「幾らなんでも適性が全く無い魔法を使えるようにする事はこのスキルの能力を持ってしても無理だったのでしょう。 あるいは大戦略のスキルランクが極級ならば望みが叶っていたかもしれませんね。 もしくは代替の能力が既に有るのかも……」


「代替の能力……魔法回路作製スキルを使ってのスクロール作り……とか?」


「それです! スクロールの魔法は魔法の仕組みさえ知っていればどんな魔法でも作れて誰にでも使えます!」


「ええ~! スクロールは嵩張るし、使い捨てだから材料の羊皮紙と高価な魔石の粉末入り塗料をお金払って買わなきゃならないし、それに一々魔法陣(サークル)を書かなきゃならないから使い勝手が悪いですよ!」


「私に文句を言われても困ります。 でも良かったじゃないですか。 全く魔法を使えないよりは遥かにマシでしょう?」


「それは、そうですけど……。 でも、たかがスキル一つで別の国の、しかも上流貴族の家の子になんてなれるとは思えませんよ……」


「大戦略のスキルは御父様を説得するのに十分な材料になります。 なにせそのスキルの御蔭でウチの御先祖様は一代で強大な大国である我がドゥゴール帝国を建国し、皇帝にまでなったのですから」


「「……へ!?」」


 僕達はピュセルお姉さんの御先祖様の話に目が点になります。 まさか……。


「やはり、知りませんでしたか……。 私のフルネームはピュセル・E・ドゥゴール。 現ドゥゴール帝国皇帝の第二皇女であり、ローゼンクロイツ辺境伯です」


「「ななな、なんですとー!?」」


 僕とボルナレフさんは思わず目を見開いて驚愕します。


「て、なんでレーウォンが驚いてんねん!? 自分、知り合いやろ!?」


「だだだ、だって、だって! 僕、まだ小さかったし! 両親に連れられて僕がピュセルお姉さんと出会った時、ピュセルお姉さん、ピュセルってしか名乗ってなかったし! 手紙での遣り取りでも差出人にピュセルってしか書いてなかったし! 宛名でもピュセルで届いてたし!」


 言い訳の連発だけど……。 うん! 僕、間違ってない!


 そんな僕を見てしてやったりという顔のピュセルお姉さん。

 まさか、態と素性を隠していたりとか……。


「クスクス! レーウ君のその驚く顔が見たくて黙っていたのですよ」


「やっぱりですか!? 人が悪いにも程がありますよ! ピュセルお姉さん!」


「ごめんなさい。 でも私の立場上、本心から気を許せる相手というのが貴方と出会う以前からいなくて……。 それで私、貴方には本名を明かさなかったんです」


「もう、その件はいいです……。 それじゃあ、ウチの子になれというのも冗談なんですね?」


「いいえ、それは本気です。 貴方には私のお婿さんになって貰います」


「またまた~! 冗談はよして下さいよ」


 ピュセルお姉さんは本気の顔色を示しています。

 僕は不安になって聞き返します。


「冗談……ですよね?」


「……レーウ君は私がお嫁さんじゃあ、イヤ、ですか?」


 今度はピュセルお姉さんが不安そうな顔をします。


「そ、そんな事は無いです! ピュセルお姉さんがお嫁さんになってくれたら毎日が幸福の絶頂です!」


 これも嘘偽りのない僕の本心です。

 憧れのお姉さんがお嫁さんなんて嬉しすぎます!


「そう、ですか。 私もレーウ君のお嫁さんになれたら幸せです……」


 周りの空気が甘い雰囲気を(かも)し出しているのは気の所為ではないでしょう。


 ボルナレフさんは今にも口から砂糖を大量に吐き出しそうな顔をしてます。


「でも、やはりピュセルお姉さんのお婿さんに成れる材料が少なすぎます。 やはり無理があるんじゃあ……」


「材料ならありますよ。 レーウ君はラージック王国でレムスに革命を(もたら)しています。 それで彼の国がどれだけ利益を得たか計り知れません。 しかも此方には取って置きの切り札があります」


「取って置きの切り札?」


 な~んか、またまた嫌な予感がします。 大事な隠し事がバレてるような。 例えて言うなら男の子の大事なエッチな絵のコレクションの隠し場所がとっくの昔にバレてるような……。


「貴方達が見つけたマナ・クリスタルの大鉱脈です」


 あ……やっぱりバレてた。


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