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第十一話 皇帝の立場

今回の話しは短めです。

 僕は再びジェスター皇帝陛下の召喚命令により皇都レインジュエルにあるドゥゴール城に呼び出されてしまいました。

 理由は言わずもがな僕が建造しようとしているレムス、飛翔騎体(フライト・タイプ)についてです。

 

「お前、面白そうな事をしているそうじゃねえか! ピュセルの知れせが無けりゃあ、俺も度肝抜かれてたなあ!」


 謁見室にはジェスター皇帝陛下の喜色浮かべた顔で大声を出して話し掛けて来ました。


「やはりラージック王国と問題になりますか?」


「それもあるが問題は其処じゃねぇんだよ。 ピュセルの手紙によれば飛翔機の構造は世に出回っている技術と大差ないからそれ程問題にはならんし、重要部分の設計はお前がやったから多少ラージック王国が問題視するだろうが、これも何とでも言って誤魔化せるからそれ程のもんじゃねえ。 問題の根幹は飛翔騎体の登場でミリタリー・バランスが崩れるってこった。 お前は今まで十字大陸群のどの国家も出来なかった事をやろうとしてんだ」


 《十字大陸群》とは千年前に崩壊した中央大陸を中心に北限大陸、東方大陸、南暗黒大陸、西欧大陸の五つが密集した大陸を僕達は十字大陸群と呼んでいます。


「もし、飛翔騎体の開発に成功したらこの国は一気に他の国々から危険視される。 何故だか分かるか?」


「……何処の国にも無い飛翔騎体で空から攻められたら防ぐ手立てがない、からでしょうか?」


 皇帝陛下は静かに頷く。


「そうだ。 此方がその気もないのに戦争に引きずり出そうとする輩は出てくるだろうし。 ましてや今の帝国の技術は飛翔船(マナ・シップ)に関しちゃあ一番だが、レムスに関しちゃあ下から数えたほうが早い。 同盟国の白宝国からレムスを融通してもらおうにも限度がある。 仮に飛翔騎体の量産が可能になったとしても搭乗者(ライダー)の育成、軍での運用方法の研究等色々試したり、考えなきゃならん事が多過ぎるから戦力として使い物になるには時間が掛かり過ぎる。 じゃあ、どうすりゃいい?」


 ボルさんと皇帝陛下から今聞いたこの国のレムス事情から思考を巡らせ答えた。


「今ある現存戦力の底上げ、特に性能の低い帝国製のレムスの能力の向上――ですか?」


「ああ、その通り。 だが――お前にそれが出来るか?」


「出来なければ飛翔騎体の建造を皇帝陛下は禁止にされるおつもりでしょう? 僕は飛翔騎体のレムスを作ってみたいし、それで自由に空を駆けてみたいです。 ……ならばやるしか無いでしょう。 まずは現行騎の量産をしている工廠を見学したいのですが宜しでしょうか?」


「構わん。 連絡と許可申請は此方でしておこう」


「それと現行騎を一騎分、試作騎を作るのに欲しいのですが宜しいですか?」


「分かった。 ついでにお前に協力するようレムス工廠の責任者には連絡しておく」


「有難うございます。 皇帝陛下」


 皇帝陛下に向かって僕は腰を折り、深々とお辞儀をします。


「いいって事よ! 俺も飛翔騎体って奴はこの目で拝んでみたいからな! 折角、我が帝国がレムスの技術で五十歩も百歩もリード出来んだ! この機会を見逃す手は無い! ……だがな、国の天辺に立つ者として見れば、我が国の外交問題や軍事方面の問題で現状じゃあ飛翔騎体の建造技術の秘匿はどう足掻いても不可能に近いんだ。 そうすると自然、他国にも飛翔騎体の技術供与は避けられん。 そうなれば我が帝国は飛翔騎体っていう軍事的アドバンテージは失われる。 なら、いっそ飛翔騎体の建造そのものを禁止し、誰の目にも触れさせねえよう技術を秘匿し続けるしかねぇ。 ……情けねぇ話しだけどな。 それを回避する手段がさっき言った方法だ。 すまねえな。 お前の技術を腐らせるような真似言っちまって……」


 皇帝陛下は済まなそうに謝罪する。


「いいえ、皇帝陛下の立場としては仕方ないでしょう。 それでは失礼致します」


 再度、皇帝陛下に腰を折り、礼をして謁見室から退出する寸前、皇帝陛下に呼び止められた。 一体何でしょうか?


「沙霧姫の婚姻の件なんだがな。 白宝国の青海(せいかい)国王から正式に許可が降りた。 だから近いうちに白宝国に行ってもらうからそのつもりでな」


「僕の様な者相手に良く許可が降りましたね?」


 皇帝陛下は苦笑いして裏事情を話してくれました。


「まあ、あの姫さん見た目が美人でも能力が高すぎだからな。 仮に嫁に貰えば十中八九尻に敷かれるのは目に見えてるから誰も嫁には欲しがらんかったし。 何よりマナ・クリスタルを格安で融通してくれる相手だからな、お前さんは。 向こうにしたら嫁に出さん手は無い!といったところだ。 最後に残った厄介な姉貴の嫁ぎ先がいい形で片付いてくれてホッとしてるだろうよ、青海国王は」


「もしかして僕、沙霧姫をいい様に押し付けられた感じですか?」


 皇帝陛下はニマニマした顔で答えます。


「そうとも言うな!」


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