5・刻印具
そこに予期せぬ来客が現れた。
「こんにちわ、先輩」
「お邪魔します」
「新田。それに二宮と京介も。どうかしたのか?」
やってきたのは京介、勝、浩の1年生三人だった。
「どうかしたのか、じゃないですよ。さっきから何度も連絡してたのに、全然出てくれないじゃないですか」
着信があったことは当然知っているが、来客が多いため、飛鳥は大量の荷物を両手に持っていた。あとで掛けなおすつもりでそのままにしていたのだが、どうやらそれが浩からだったらしい。三人がしびれを切らせてここに来たのも、当然のことだろう。
「ああ、悪い。両手がふさがってたから、出られなかったんだよ。それで、何かあったのか?」
「はい。勝が少し行き詰ってるので、アドバイスを貰えないかと思いまして」
「それはいいが、二宮、何に行き詰ったんだ?」
勝は少し気落ちしているように見える。飛鳥が出した課題に行き詰っているのはわかるが、何に悩んでいるのかは、聞いてみなければわからない。
「広域系です。俺、広域系には適性が低くて、どんなに頑張っても3メートルが限界なんです……」
「そうなの?」
「ええ。勝は干渉系と探索系に適性があるの。でも広域系への適性は低くてね」
久美は京介だけではなく、勝と浩の適性も知っている。だからなのか、少し驚いている。
「それでいて3メートルまで展開できるなんて、すごくない?」
「この一ヶ月、ずっとやらされてた成果ってところかしらね。飛鳥、二宮君は術師じゃないんだから、少しぐらい大目に見てあげたら?」
「見てからだな。二宮、やってみろ」
「わかりました。E級だけどかまいませんか?」
「ああ」
刻印術師でなくとも、広域系に適性がある者は少なくない。事実、美花は広域系にも適性があるため、術師を含めた2年生でもトップクラスだ。刻印具に組み込まれたA級術式イラプションとムスペルヘイムも、今では使いこなしている。
「それじゃ、行きます!」
勝は手にした腕時計状装飾型刻印具から、風性E級広域術式エアーを発動させた。領域内の気流を操る術式だが、殺傷力はほとんど生み出せない。そのため屋内施設の気流を操作し、換気や空調を整えることに用いられることが多い術式でもある。
その術式は勝の言うように半径3メートルで展開されているが、同時に少し冷たい風が流れているようにも感じられる。
「飛鳥、これって」
真桜もさつきも聖美も、風属性に高い適性を持っているため、風性広域系術式の基本でもあるエアーは当然使えるし、よく知っている。違和感があることはすぐに気がついた。
「だな。二宮、お前のエアーだけどな、処理を少し間違えてる。エアーは気温や室温を下げたりすることはできないのに、今は冷たい風が流れてる。それを意識してるんじゃないのか?」
三人だけではなく、飛鳥と久美も気付いている。冷たい風が流れているとなれば、真っ先に思い浮かぶのは水属性術式だ。水属性に適性を持つ二人が気付くもの当然と言えるだろう。
「え?そうだったんですか?エアーって空調にも使われてるから、それが普通なんだと思ってました……」
エアーは空調システムの根幹に据えられている。生活型の冷暖房にも組み込まれているのだから、勝の考えも間違っているわけではない。だがそれは、術式を組み合わせた結果だ。
「使う術式を正確に把握しないと、余計な処理をして強度を下げることもけっこうあるぞ」
術式を正確に把握しなければ、積層術は使えない。相手に合わせることもできるが、強度を下げてしまっては積層術の意味がない。入学直後の1年生はよく勘違いしているが、それも広域系の授業が始まるまでだ。
「と言うことは……勝、ちょっと刻印具見せて」
「お、おう」
浩はその違いをよく知っているが、勝が強く思い込んでしまっていたことに心当たりがあった。だから勝から刻印具を借り、刻印化された術式を確認している。
「やっぱり、エアーにアイス・バレットが干渉しちゃってるじゃないか。あれ?これって……オゾン・ボールにライトニング・バンド?」
「オゾン・ボール?B級のか?」
課題を出すにあたり、飛鳥は三人の適性と非適性属性を聞かされている。勝は風属性に適性があるが、オゾン・ボールは広域干渉系だ。適性の低い勝が組み込むなど、考えにくい。しかもライトニング・バンドは火性支援系に属する、勝の非適性属性の術式でもある。そのため組み込む理由も必要性もないと言える。しかも干渉しあっているなど、どう考えてもありえない組み方だ。
続く浩のセリフにも、確かな不安が滲んでいる。
「はい。そのオゾン・ボールに、ライトニング・バンドが干渉してます。これって大丈夫なんですか?」
「いや、マズいな。二宮、お前、刻印具の検査はしたか?」
眉をひそめているのは飛鳥だけではない。火属性に適性を持つ遥から見ても、明らかにおかしいとわかる。
「検査って、四月のですか?してませんけど」
「してないって、あんな事件があったのに、なんでしなかったのよ!?」
驚いたのは久美だけではない。京介でさえ検査のために、自ら刻印具を提出していたのだから、勝が検査していなかったとは思ってもいなかった。検査をしていない生徒は、全員が頼まれたことはないと証言しているが、何人かは明らかに不審な動きを見せている。
事実、2年生が修学旅行中に、一度不正術式の騒ぎがあった。雪乃が争いごとを嫌う温和な性格だということが災いしたようだが、温和で温厚な性格であろうと、雪乃が生成者だという事実に変わりはない。そのため不本意ではあるが、雪乃は3年生最強とされている。そんな雪乃がなめられるなど、風紀委員の沽券にも関わる大問題だ。雪乃は責任を取るつもりだったが、雪乃が出張る必要はないということで遥と昌幸が制圧したらしい。その不正術式を使用した生徒は、刻印術氏優位論者だったと聞いている。
「頼まれて組み込んだ術式なんてないからだよ。それにこの刻印具、連盟から貰ったんだし」
だがそれ以上に、勝のセリフには聞き逃すことのできないものがあった。
「連盟から?ちょっと待て、二宮。それはいつの話だ?」
「先輩達が修学旅行中ですけど」
場の空気が変わった。明らかに不審どころの話ではない。
「久美、委員長に早めに来てもらえるよう連絡してくれ。俺は親父に問い合わせる」
「わかったわ。勝、この刻印具、少し預かるわよ」
「え?え?」
「ど、どういうことなんですか?」
よくないことが起きているのはなんとなくわかる。だが三人は何が起きているのか、まだ理解できていない。
「連盟から刻印具を貰うなんてことは、普通ならありえないのよ。例外も存在するけど、それはちゃんと記録されているの。でもあなたの刻印具は、エアーだけじゃなくオゾン・ボールまでもがおかしなことになってる。多分だけど、他の術式もね」
現在連盟が正式にテスターとして登録しているのは大河と美花だけであり、三華星となったさつきも、それぐらいの情報閲覧は許可されている。だから断言できる。勝に刻印具を渡したのは連盟ではない。
「誰か裏にいるわね。二宮君、だったわね。他に刻印具は持ってきてないの?」
「ありますけど……そんな大事だったなんて……」
勝は大きく落ち込んでしまっている。四月の事件では自分も巻き込まれたのだから、甘い囁きが落とし穴だということは身に染みて理解している。だがまさか、連盟の名前で送られてきた刻印具が、上級生達が顔色を変えるほど危険なものだとは思いもしなかった。
「四月と同じ手口だな。しかも連盟の名前で刻印具となれば、信じない奴の方が少ないだろ」
「飛鳥達の修学旅行中って言ったな。ってことはあの騒ぎ、無関係じゃないかもしれないってことか」
「とりあえず、三人とも入りなさい。真桜、お昼だけど」
「ええ。この子達の分も作ります。香奈先輩、手伝ってもらってもいいですか?」
「いいわよ。遥ちゃん、葛西君。浩君達のこと、よろしくね」
「ああ」
「三条が来てからになるだろうけどな」
「それでもよ。二宮君は私達と同じ、術師じゃない普通の人間なんだから」
「わかってるさ」
遥も昌幸も香奈も、事の重大さを十分に理解している。遥も昌幸も、不正術式を行使した1年生術師を制圧したのだから、関係を疑わずにはいられない。
勝は自分達と同じく、刻印術師ではない。飛鳥と真桜がいなければ、自分達も引っかかっていたであろう罠だ。このままでは勝が再起不能になってしまうことも想像に難くない。勝のメンタル・ケアは、術師ではない自分達でなければできないことだと理解している。
香奈も遥と昌幸に任せっきりにするつもりはないが、真桜だけで十何人分の料理を作るのは大変だ。話の続きは雪乃が来てからになるだろうが、それでも放置しておいていい状況ではない。
「飛鳥、どこか落ち着ける場所はないか?」
「母屋の和室ぐらいですね。あんまり使ってないので散らかってますけど、それでもよければ使ってください」
「わかった。行くぞ、葛西、二宮」
「ああ」
「わ、わかりました……」
「後でお茶持っていくわ。悪いけど、その子のこと、お願いね」
「わかってます」
遥と昌幸は、勝を連れて母屋に足を向けた。
――AM11:50 源神社 母屋 居間――
「これは不正術式じゃありませんね。ライセンスがあります」
久美から連絡を受けた雪乃は、急いで源神社に駆け付けた。居間に通された雪乃はすぐにワイズ・オペレーターを生成し、勝の刻印具を接続した。その結果を口にしたわけだが、それが逆に場の不信感を煽っている。
「ライセンスがあるって、どういうことなの?」
「誰かが意図的に、この刻印具を作ったんだと思います。ライセンスですが、どうも複数人分あるみたいですから」
「数人分?それっておかしくないですか?」
「そうよね。刻印具に組み込める術式は、試験を受けた本人だけのはずだし」
「それが数人分となると、不正術式じゃなくとも怪しすぎるわね」
「誰のライセンスか、わかるんですか?」
「さすがにそこまではわからないわ。あ、ちょっと待って。これは……南徳光?」
「南徳光ですって!?」
「でもあいつ……死んだはずじゃ……!?」
「姉ちゃん、誰なんだ、そいつ?」
「過激派のトップよ。でも神槍事件の時に……」
「ああ……。俺と真桜が倒した……」
「あれから逃げられるわけもないし……なんで南のライセンスが……」
過激派のトップ 南徳光は、神槍事件の際、飛鳥と真桜が生成した刻印神器ブリューナクの神話級刻印術アンサラーによって、部下諸共、この世から消えた。その南のライセンスが組み込まれているなど、ますますもってただ事ではない。
「飛鳥、代表はなんて言ってたの?」
「二宮の刻印具は、連盟は知らないそうだ。雅人さんやさつきさんの目を誤魔化せるはずもないしな」
「そういえば三剣士も三華星も、ある程度の情報を閲覧できるんだっけか」
「ええ。大河や美花のことも秘匿度は結構高いけど、議員連中は知ってるわ。だけどこの時期に事を荒立てるなんてバカなこと、普通なら考えないわよ」
「総会談まで一ヶ月ですもんね。こんな大事な時期に事を荒立てて喜ぶなんて、それこそ過激派ぐらいですけど……」
「その過激派もほとんどが粛清されてるし、何より後ろ盾がなくなっちゃってるものね」
「でも南のライセンスが出てきた以上、全くの無関係というわけでもないでしょうね。雪乃、確認できたのは南のライセンスだけ?」
「はい。あの人のことは知っていましたから私でも特定できましたが、これ以上は連盟でもないと……」
術式のライセンスは取得者の名前が記されているわけではない。刻印化の際、術式の構成とは無関係な許諾試験合格印という術式に干渉しない特殊な刻印を組み込んでいる。当然、発動の邪魔にもならない。雪乃が南のライセンスを特定できた理由は、神槍事件の際、南の印子をワイズ・オペレーターが記録していたからだ。
「この時期に厄介ね……」
「でも、なんで勝が……」
京介や浩は、親友が狙われた理由がさっぱりわからなかった。だが上級生達には心当たりがありすぎる。
「二宮君を狙った理由って、やっぱり……」
「でしょうね。1年生だということも、都合がよかったんだと思います」
「でも連盟が関与してないなら、この刻印具、どこで作ったんでしょうか?」
「このタイプって、確かJFSが生産してたわよね?関係あるんでしょうか?」
「さつき、御堂に連絡してみたらどう?」
「御堂?なんで……って、そういえばそうか」
「御堂先輩に?なんでなんですか?」
「御堂のお父さんはJFSの重役なのよ。御堂自身も大学に通いながら、刻印具の開発に携わっているみたいよ」
御堂翔はさつきや聖美の同級生であり、元生徒会長でもある。現在はさつき達と同じ明星大学に進学しているが、JFS――ジャパン・フューチャリング・シールズという刻印具メーカーで父と共に新たな刻印具の開発に携わっている。
「そうだったんですね。じゃあ御堂先輩に聞けば、JFSが関わっているかどうかは判明するってことですか?」
「それは微妙ね。あいつがJFSの全てを知っているわけじゃないし、何より企業秘密かもしれないし」
「あいつらの件がありますしね。でももし関係があるなら、放置はできませんよ?」
大河と美花が所有しているA級刻印術が組み込まれた刻印具は、当然ながらトップ・シークレットだ。開発は連盟本部で行われたが、JFSをはじめとしたいくつかの刻印具メーカーから出向している技術者もいる。
「それは当然だけど、問題は誰が勝にこんな欠陥刻印具を送り付けたのか、ね」
「それは確かにね。飛鳥の課題に使ってたのが幸いだったって言えるわよ、これ」
「そ、そんなに危険だったんですか?」
「危険ね。エアーに組み込まれたアイス・バレットはともかく、オゾン・ボールに干渉してたライトニング・バンドなんて、二宮君だって無事じゃ済まないわ。火は風に煽られることは知ってるでしょ?」
「相克関係ですね。でもライトニング・バンドって雷系じゃ?」
「その雷系は火属性だろ。酸素が充満した領域内で電離なんてされたら、それこそ一大事だぞ」
「あっ……!」
ライトニング・バンドが干渉していたとなれば、オゾン・ボールを発動させた瞬間にライトニング・バンドも発動することになる。オゾン・ボールは酸素の球体を作り出す広域系結界術式であり、結界内の酸素を操る。酸素は電子を引き付けやすい性質があるため、雷系術式との相応関係が成立しやすく、容易に電離現象を引き起こす。そんな結界内に雷系に属する火属性術式が干渉してしまえば、結界内は灼熱の地獄と化し、使用者に大きなダメージがもたらされることは確実だ。
「まだいくつかあったけど、オゾン・ボールが一番危険だったわ。さすがにA級は組み込まれてなかったみたいだけど」
「あったらあったで、それこそ大問題よ。いったいどこのどいつが、こんなもの作ったのかしらね」
「連盟やJFSが直接関与してるとは思わないけど……どこに優位論者が紛れてるかわかりませんしね……」
さゆりの不安も当然のものだ。刻印術師優位論者は、全員が過激派というわけではない。連盟議会にも粛清から逃れた優位論者が存在しているし、思想に賛同しなかった者もいる。優位論に感化されてしまっている若者も少なくないため、不正術式の不正使用も年々増加傾向にある。
「総会談前に不安の種は排除しておきたいし、その刻印具、私達が連盟に持って行くしかないでしょうね」
「それが一番安心できます。すいませんけどお願いします」
さつきの結論に、誰もが安心している。刻印三剣士と三華星を同時に敵に回すバカはいない。仮にいたとしても、簡単に返り討ちに遭う。京都の連盟本部まで問題の刻印具を届けてもらうのに、これほど信頼できる者はいない。
「そっちはそれでいいとしても、二宮君の様子はどうなの?」
「戸波先輩と葛西先輩にお任せしてますが……」
「さっきお茶を持っていったんですけど、相当ショックだったみたいです」
「それも仕方ないわよ。戸波君と葛西君が来てくれてて助かったわ」
「刻印術師の私達じゃ、慰めにならないでしょうからね……」
「親父は四月の事件と同様、二宮の刻印具の件を問題にしないと言っていました」
「それはよかったけど……あまり朗報ってわけでもないわね」
「ん?誰か来たわね」
そこに母屋のインター・ホンが鳴った。どうやら来客のようだ。飛鳥は居間のモニターを操作し、玄関を映し出した。
「丁度いいタイミングですね。大河と美花です」
「それは本当にナイス・タイミングだな」
「二人にも説明してから、二宮君のことを頼むしかないでしょうね」
大河と美花は、本当に連盟から刻印具を贈られている。しかも製造段階から二人の印子を記憶させ、A級刻印術まで組み込まれている特注品だ。連盟から刻印具を渡される際、二人は素性を余す所なく調べられている。飛鳥と真桜の親友という理由も大きいが、それだけで連盟がテストを任せることはない。万が一刻印術師優位論者の手に落ちてしまった場合、即座に奪還、もしくは破壊する戦力もある。2,3年生はそれをよく知っている。
「心配するな、新田、京介。二宮に落ち度はないんだからな」
だが京介も浩も、心配そうな顔をしている。同時に刻印術師である自分達では力になれないだろうことも感じ取ってしまった。連盟の返答はありがたいが、それとこれとは別問題だ。
「そうそう。むしろ二宮は巻き込まれただけだ」
「謝るとしたら、飛鳥の方でしょうねぇ」
「待て、井上、さゆり。なんで俺だけなんだ?」
「何か言いたそうな顔してるけど、あながち間違ってはいないんじゃない?」
「……三剣士に三華星、高校生の生成者がこれだけいれば、誰が何を狙ってきても不思議じゃないと思いますが?」
飛鳥と真桜は刻印神器ブリューナクの生成者だ。この場の2,3年生はもちろん、聖美もそれを知っている。他国もそのことを知っているはずだから、国内にいるはずの今回の件の黒幕が知らないということも考えにくい。
そのためいつものことだが、この手の言い合いは飛鳥にとって非常に分が悪い。事情を知らない京介と浩も、二人が融合型刻印法具の生成者だということは知っている。融合型の生成者は、日本では飛鳥と真桜しか確認されていないため、そのことだと思ってくれているだろうが、あまり突っ込まれたくはない話でもある。
そんな飛鳥を助けるため、ではなく、結果的に偶然、大河と美花が居間に入ってきた。大河と美花は勝同様、刻印術師ではない。だが一流の術師に匹敵する実力を持っている。しかも勝とは境遇も似ている。おそらく二人以上の適任はいないだろう。
大河も美花も、看過できない事態が起きていることを、既に雰囲気から察している。
世界刻印術総会談開催まであと一ヶ月、どこまでできるかはわからない。だが放置しておく、などという選択肢はない。災いの種は早めに刈り取らなければならない。来日する要人は刻印術師だけではなく、政治家や軍人も多い。特にロシアのグリツィーニアとブラジルのリゲルは刻印神器生成者でもあるため、その身に何かあれば、それは即座に国際問題へと発展する。本人達の意思に関わらずに、だ。
飛鳥も非公開とはいえ、神器生成者の一人だ。たとえ自身の存在が公になったとしても、やるべきこと、守るべきものを失うことなど、あってはならない。雅人とさつきはそんな飛鳥と真桜の盾として忠誠を誓ってくれている。だからこそ、自分達の力に責任を持たなければならないと思っている。
それが先月フランスで、ダインスレイフとの戦いを経て、飛鳥が出した答えだった。




