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刻印術師の高校生活  作者: 氷山 玲士
第四章 刻印の光と闇編
62/164

15・オルレアン

――現地時間PM3:06 ユーロ フランス オルレアン ロワール川ほとり――

 今日の予定はオルレアン観光。オルレアンはパリの南西約130キロに位置する都市だが、サン・クロワ大聖堂やオルレアン美術館、マルトロワ広場以外にめぼしい観光施設はない。

 だがこの街に生まれ、魔女狩りによって命を落とした聖女ジャンヌ・ダルクは、刻印術師と言われている。そういったいわれもあってか、現在もさまざまな研究がなされており、フランスではパリに次いで刻印術が発達している都市でもある。


「すごかったけど、よくわからなかったわ」


 さゆりがぼやくのは、サン・クロワ大聖堂のステンド・グラスのことだ。だがわずか十数枚でジャンヌ・ダルクの生涯を描いているため、刻印術師かどうかはそれだけでは判別できるものではない。


「あれだけじゃわからなくて当然だろ」

「確かジャンヌ・ダルク通りに研究所があるんだっけ?」

「あるな。だけど研究所っていうより、喫茶店っていうイメージの方が強いみたいだぜ」

「そうなの?」

「そういえばそんなお店があるって、ネットにもあったわね。オルレアンっていう土地柄のせいだと思ってたけど、あそこが研究所だったんだ」

「多分そこだな。後で行ってみようぜ」

「それはいいけど、時間あるのか?」

「今は……三時まわったとこか。微妙だな」

「四時集合だっけ?」

「ええ。その喫茶店が混んでたら、多分間に合わないわよ」

「土産も買わなきゃだしな」

「下調べって大切だよなぁ」

「だねぇ。知ってたら絶対予定に入れてたのに」

「今更だな。ん?お、おい、飛鳥……あれ見ろよ!」

「ん?何か……」

「どうしたの……って、嘘……!?」

「なんで……こんな所に……」

「ジャンヌ……シュヴァルベ……!」


 声をかけた敦、飛鳥だけではなく、真桜、さゆり、久美も絶句していた。ジャンヌ・シュヴァルベ――魔剣ダインスレイフの生成者が、まさかこんなところを歩いているなど、思いもよらなかった。


「……大河、美花と田中を連れて逃げろ」

「お、おい!どういう意味だよ!?」

「そうよ!いったい何があったの!?」

「簡単に話したでしょ。魔剣のことを……」

「魔剣って……まさか!」

「嘘……」

「だったらよかったんだけどな……。本音を言えば、俺達も逃げたい。だけどあいつ、どう見てもこっちに気づいてるだろ」

「そうよね……。少なくとも私達は、狙われる理由があるんだし」

「頼む、大河。それから名村先生に、俺達は集合時間に間に合わないことも伝えておいてくれ。魔剣って言えばわかってくれるはずだ」

「……わかった。今日の晩飯はモンマルトルだからな。遅れるなよ」

「努力するわ」


 大河、美花、かすみは刻印術師ではないため、ダインスレイフの印子だけで命を奪われてしまう可能性がある。

 昨日、明星高校と古文書学校の代表がパリ大学に呼び出され、何かの説明を受けていたことは三人も知っている。詳細は教えてもらえなかったが、刻印神器が関係していると言われてしまえば、突っ込んだ話など聞くこともできないし、することもできない。だから昨日は聞かなかった。

 だがまさか、いきなり直面するとも思わなかった。


「心配しないで。ダインスレイフは眠っているから」

「えっ!?」

 聞こえた声は威圧するように響く重低音ではなく、まだ少女と言ってさしつかえない、少し高い声だった。

「ジャンヌ……さん?」

「ええ。はじめまして、ね。昨日はごめんなさい。そして会いたかったわ。神槍ブリューナクの生成者、三上飛鳥君、真桜さん」


 この場の誰もが驚いたが、一番驚いていたのは敦だろう。予想していたとはいえ、こんなところで暴露されるとは思ってもいなかった。


「俺達に会いたかったって……どういうことなんだ?」

「私とクリスのことは聞いてるでしょう?私達は失敗してしまったのに、何故あなた達が成功できたのか、それが聞きたくてね」

「失敗って……」

「失敗でしょう。私はダインスレイフに取り込まれ、死ぬことすら許されていないんだから。この手で最愛の弟を殺してしまったのに、死ぬこともできないなんて……地獄よ……」

「……気持ちはわかります。私も飛鳥も、お互いがかけがえのない、大切な半身だから」

「二心融合を成功させているわけだから、その表現が大袈裟だとは思わないわ。でもあなた達は兄妹とはいえ、血の繋がりはないはずでしょう?この世でもっとも血の繋がりが濃い双子の私達より、あなた達の繋がりが強いとも思えないわ」

「確かに私達に血の繋がりはないわ。だけど私達は、そんなものに捕らわれたりなんかしない。ダインスレイフの生成が失敗だって言うなら、それはあなた達が血の繋がりを意識しすぎたせいよ」

「血の繋がりだけが全てじゃない。俺と真桜の間には、刻印よりも深い何かがある。それは間違いないんだ」

「刻印よりも深い……何か……」

「ジャンヌさん、もしかしてあなた……ダインスレイフに身を任せていない?」

「……何故そう思うの?」

「私があなたの立場なら、死を許されないなら、世界を破壊しようとするかもしれないから……。飛鳥のいない世界なんて、私には耐えられない……。だから……」

「世界と同時に、自分も滅ぼそうというの?その結果、歴史に名を残す大罪人となっても?」

「多分する、と思う。あなたがどうかわからないけど、私と飛鳥はブリューナクを生成してから、何度も夢を見たわ。世界を滅ぼす夢を。それは決して、ただの夢じゃない。実現しようと思えばできないわけじゃないの」

「……言いたいことはわかるわ。多分私も、この世界を滅ぼしたいから。クリスのいない世界なんて、私には何の意味もないから……」

「だからダインスレイフに身を委ねているのか?」

「ええ。手始めにブリューナクを……同じ二心融合術で生成された神槍を滅ぼすことで、私は世界を滅ぼすつもりよ」

「やっぱりか。だと思ったよ」

「そのつもりがなければ、ヘルヘイムなんて使わないわよね」

「えっ!?」

「い、いつの間に……」

「俺達に話しかける直前、だな。最初からそのつもりだったんだろう?」

「ええ。でもあなた達と話したかったのも本当。この点はダインスレイフと意見が合っていたわ」


 同時にジャンヌは、ダインスレイフを生成した。禍々しい姿は先日と変わらない。


「思ったより早い再会だったな、小僧、小娘」

「ダインスレイフ……!」


 だが先日と違い、今日はジャンヌとダインスレイフの意思が、思惑が一致している。能力も最大限発揮できるであろう状況だ。


「ジャンヌさん……あなたの立場も気持ちも、私達にはよくわかるわ。さすがに聞いた瞬間はショックだったけど、それでもあなた達の思い通りにさせるわけにはいかないの!」

「俺達はあなたを止める。あなたを縛るその魔剣を、必ず打ち砕く!真桜!」

「ええ!」


 飛鳥が右手を、真桜が左手を合わせると同時に光が溢れ、その中から一本の槍が姿を現した。


「我は神槍ブリューナク。愚かなる魔剣よ、我が主達に害をなすこと、まかりならん。そなたの刃……我が貫き、破壊する」

「ようやく姿を見せたか、ブリューナク。待ちわびたぞ」

「あれが……ブリューナク……!」

「そっか。井上君、見るの初めてなんだっけ」


 驚く敦を横目に、飛鳥と真桜はブリューナクを二つに折った。それぞれが一振りの剣となったブリューナクを手にし、ジャンヌに向き合っている。


「槍が……剣に!?なんなんだ、あれ……!」

「驚くわよね、初めて見たら。私達も腰抜かしそうになったし」

「いや……軽く腰抜かしてるよ……。ブリューナクとダインスレイフ……目の前に二つも刻印神器があるなんて、とても信じられねえ……」

「井上、さゆり、久美。悪いが自分の身は自分で守ってくれ。あんまり余裕はないからな」

「それもそれで困るわよ。一番困るのは井上君だけど」

「加減……は無理だよな。確かに俺が一番ヤベえ……。こんなことなら、佐倉達と一緒に行けばよかったぜ……」

「心配はいらぬ。お主達は我が眷族が相手をしてやろう。退屈はせぬぞ?」

「け、眷族!?」

「いらねえよ!余計なお世話だよ!!」


 ダインスレイフの周囲に多数の刻印が現れた。飛鳥と真桜も初めて見る刻印だ。


「な、なんだ!?」

「刻印術……じゃない!?」

「召喚の刻印だ。主達よ、気をつけろ。あれはダインスレイフを作ったと言われる北欧の小人族ドゥエルグ達だ」

「小人族?ドゥエルグ!?」

「ドゥエルグは太古の巨人 ユミルから生まれ、神々の武具を作り上げるも、最終的には神々と対立せし闇の妖精族。ダインスレイフもダインというドゥエルグが作り、鍛えた物」

「じゃああれは……本物のドゥエルグなの!?」

「おいおい、マジか!?俺達三人で、これだけの数のドゥエルグってのを相手しろってのか!?」


 現れたドゥエルグの数は全部で十二体だった。


「ダインスレイフ……!貴様!」

「ジャンヌさん……本気なのね!?」

「本気よ。そっちの子達には気の毒だけど」

「俺達が狙いなら、あいつらを巻き込む必要はないだろ!何故こんなことをする!?」

「あなた達に本気になってもらいたいからよ!私は許されない罪を背負った大罪人だけど、魔剣ダインスレイフの生成者なのよ!同情なんかで手を抜かれたりなんて、許せるわけないじゃない!」

「手を抜くなんて、そんなことするわけないじゃない!」

「そうだ!刻印神器の相手に、そんな余裕はない!」

「それに言ったはずよ。私は世界を滅ぼすって!死ぬのが早いか遅いかの違いでしかないわ!」

「だからって……!」

「……ブリューナク、一つ教えろ。ドゥエルグは闇の妖精っつったよな?ってことは、闇属性ってことか?」

「その通りだ」

「サンキュ。飛鳥!真桜!こっちは何とか持ちこたえとくから、早くダインスレイフを叩き折ってくれよ……!」

「井上君!?」

「何か手でもあるのか?」

「ドゥエルグが闇属性ならな。もっとも、どれだけ低く見積もっても、一流並の強さだろうけどな」

「神々と敵対してたんだから、それは最低限でしょうね」

「ちょっと厳しいけど、何とかするしかないか」

「さゆり!久美!」

「人の心配はいいから、あなた達はダインスレイフを何とかしなさいな。折った程度で、このドゥエルグっていうのが消えるとも思えないけど」

「……わかった!なるべく早くダインスレイフを破壊する!それまで、耐えててくれよ!」

「はいよっ!」

「真桜!俺達はジャンヌさんを止めるぞ!」

「ええ!」


 答えると同時に、真桜はシルバリオ・ディザスターを発動させた。世界樹型の結界内で、生半可な術式は通用しない。だがシルバリオ・ディザスターも広域系であり、結界として使うこともできる。


「やっぱり、足止めにしかならないか……!」


 並の術師や生成者なら、シルバリオ・ディザスターの前に銀の像と化すところだ。

 だがダインスレイフを手にしたジャンヌは、並ではない。


「相手が相手なんだ!簡単に勝負がつくとは思ってない!」


 一瞬だけ銀化したように見えたジャンヌに、飛鳥がミスト・アルケミストを発動させながら接近した。無論、油断などない。ジャンヌは銀を分解させると同時にガスト・ブラインドを発動させ、霧を吹き飛ばした。


「もらった!」


 だが飛鳥は、それも織り込み済みだった。戦闘経験、実戦経験では飛鳥と真桜に分がある。


「くっ!」


 かろうじて飛鳥のブラッド・シェイキングをダインスレイフで受け流し、ジャンヌは距離を取ろうとしている。だがそれを見逃す二人ではない。


「えっ!?」


 真桜のスチール・ブランドがジャンヌの足を金属に変え、動きを封じ、同時に飛鳥が、再びブラッド・シェイキングを発動させ、ブリューナクを振り降ろした。


「ちっ!浅いか!」


 ジャンヌは真桜のスチール・ブランドをガスト・ブラインドで押し返し、同時に背後に飛ぶことで、飛鳥の一撃から逃れた。だが無傷ではない。


「な、なんてコンビネーションなの……」


 軽く頭を押さえ、ブラッド・シェイキングの振動を振り払いながら、ジャンヌが漏らした。

 自分とクリスでさえ、ここまで高速のコンビネーションはできない。にもかかわらず、飛鳥と真桜は、アイコンタクトすら交わさず、次々と術式を発動させている。まさに以心伝心だ。


「しもべよ……」

「ダインスレイフ!?」

「やはり迷いは断ち切れていないようだな。もっとも、汝は我の所有物であり、我が存在するためには不可欠の存在……」

「な、何が言いたいのよ?」

「このままでは汝は、ブリューナクによって滅することになるだろう。それは我の消滅を意味する」

「ま、まさか!?」

「そうだ。さあ、どくがよい」

「さ、させる……もんですか!」

「我に逆らうか?」

「逆らうもなにも……あなたは私達が……私とクリスが生成したのよ!むしろあなたの方が、私達のしもべのはずでしょう!?」

「人間ごときが、いや、神であっても我を従わせることなどできぬ。さあ、その体、我に委ねよ」

「きゃあ……あああああっ!!」

「な、なんだ!?」

「ジャンヌさんの様子が……!」

「小僧、小娘。我をしもべごときと同列に扱うな。我が名はダインスレイフ。一度鞘から抜き放たれれば、生き血をすすり、死をもたらす魔剣なり」

「黙れよ!お前が死をもたらすことは、もうない!ここで必ず、俺達が破壊する!」

「神にすら不可能なことよ。見るがいい」

「え?さ、さゆり!久美!」

「井上!」


 ダインスレイフに促され振り向くと、敦、さゆり、久美が倒れていた。何とか立ち上がるが、ドゥエルグ達の数は減っていない。前方にはドゥエルグ、後方にはヘルヘイムが展開されているため、逃げることも態勢を整えることも難しい。


「き、気に……すんな!」

「そうそう……!」


 だが三人は諦めてはいない。


「で、でも!」

「手はあるって……言っただろ!言った以上、責任は取るさ……!」

「汝のその想い、真のものなり」

「え?ブリューナク?」


 ブリューナクには珍しく、あまり大きな声ではなかった。だがその声が響いた瞬間、敦の右手に多量の印子が渦を巻き、輝き始めている。


「な、なんだ!?」

「これって……まさか!?」

「せ、生成発動!?こんなタイミングで!?」

「おいおい……俺はまだ、覚悟ができてねえんだけどな……」


右の手甲からのびる、四本の爪のような刃。その上部に突き出ている鏃。それが手甲状武装型刻印法具の形状だった。


「ブリューナク!何をしたんだ!?」


 タイミングといいセリフといい、ブリューナクが関与しているだろうことに疑念の予知はない。思わず飛鳥は、手にしているブリューナクに問い掛けた。

 だが返ってきた答えは予想外のものだった。


「我は何もしていない。だが主達が言う我ら刻印神器は、神話の時代より受け継がれし神々の遺産。我らに近しい者ならば、限られた条件を満たせば、発動を促すことは可能だ」

「発動を……促す!?」

「まさか……私達や委員長が生成できたのは!?」

「主達と接し、我の印子を受けていたためだ。もっともそれは、副次的なものにすぎぬが」

「どういうことだ、ブリューナク?」


 ブリューナクの言う“近しい者”とは、生成者である飛鳥と真桜を指す。雅人、さつき、雪乃、さゆり、久美、そして敦。敦や久美とはまだ半年程度の付き合いだが、二人にとってはもう親友とも言える。

 ブリューナクの封印を解いたのはわずか三ヶ月前だが、それでも二人がブリューナクの生成者であることに変わりはない。雅人が初めて生成したのは今から三年前。ブリューナクを生成したのが二年前。時系列的には該当しないように思えるが、飛鳥と真桜は五年前に刻印融合術を発動させている。その時は二心融合術を試さなかったが、既に何かあるような予感を、二人は感じていた。二年前に生成したのも、その予感に従った結果だ。

 だがブリューナクの言葉には、さらに続きがあった。


「刻印の発動、それは本人の意思が不可欠となる。促すことと発動させることは意味が異なる。汝達が発動に成功したのも、汝達の意思に刻印が反応したからに他ならぬ。我の印子はあくまでも補助的なものであり、そこまで大きな力ではない」

「つまり……さゆりも久美も、井上君も……自分の力で生成したってことなの?」

「その通りだ」


 ブリューナクの印子によって、通常より発動しやすい条件が整えられていただけで、本人が確固たる意思を持たなければ生成はできない。ブリューナクはそう言っている。雅人とさつきはもちろん、雪乃もさゆりも久美も、生成した瞬間、本当に心の底から願っていたし、それは敦も同様だ。

 とは言われても、容易に納得できる話ではない。


「……だとよ、井上」

「聞こえてるよ。ったく、何が自分の力で、だよ。誰が見ても、お前のおかげだろうが」


 敦の声に不満はないが、同時に呆れているようにも聞こえる。覚悟がないと言っていた敦だが、自分の言葉と行動、他者を守ろうとする想いは身に覚えがないわけではない。それが生成につながったのだろうと解釈した。


「そうかもね。でも、わかるわ。ブリューナクが言ってたことも、決して間違いじゃないって」

「ええ。私達が生成できた時も、心に強く願った想いがあるから。井上君は責任感、ってところかしら」

「責任感ねぇ。まあいいや。せっかく生成できたんだから、使わせてもらうだけだ。行くぜ!“バスター・バンカー”!!」


 敦は四本の爪を収納し、鏃を伸ばし杭とし、地面に突き立てた。

 発動させた術式はライトニング・スワロー。ドゥエルグ達はダークネス・カーテンと闇性C級防御術式シャドー・シールドを発動させているが、それは正面にのみ展開されている。バスター・バンカーによって発動したライトニング・スワローは、地中を走り、目の前の三体の足下から急上昇し、ドゥエルグを包み込みながら、雷の柱を生成した。


「やれ!一ノ瀬!水谷!」

「オッケー!」


 間髪いれずさゆりがジュエル・トリガーを、久美がノーザン・クロスを発動させた。一体は宝石の雨を受け、ライトニング・スワローとの相応関係によって、さらに巨大化した雷の柱によって消え、もう一体は同じく相応関係によって体内の水分を蒸発させると同時に炎の白鳥と雷の燕となり、同じく消え去った。


「もう一匹!」


 雷の柱に閉じ込められた三体目のドゥエルグは、敦が再展開させた四本の爪にフレイム・ウェブを纏わせ、斬り裂いた。


「これで……残りは九体!」

「さすがにキツいけど、井上君が生成できたおかげで、何とかなる、かな?」

「一人ノルマ三体か。やるしかないわね……!」

「だな!飛鳥!真桜!なるべく急いでくれよ!」

「わかった!」


 だがいくら敦が生成できたとはいえ、初生成は想像以上に印子を消耗する。さゆりも久美も身に覚えがある。バスター・バンカーのおかげで一気に三体を倒せたとはいえ、それでもまだ九体残っている。三人は手にした法具に印子を込め、次の術式を起動させた。

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