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ゴシックロマンスの世界。gothic romance world  ゴシック小説のダークで深い世界 研究序説

作者: 舜風人

ゴシックロマンスとは18世紀のイギリスで起こった文学のトレンドである。


どれも陰鬱な古城や古い豪壮な館が登場し,そこにはなにやら曰く因縁めいた館の当主がいて、

そのふるい館に、ある日、女性が、まるで因縁の糸に導かれるように、やってくる。

そして古い館の暗い秘密が次第に暴露されて、女性は危うく、危険が迫るが、

間一髪、救援者が現れて、大団円へと、一挙に展開して幕を閉じる、という筋立ての物語が展開されるのである。私はこうしたゴシックロマンスが大好きである。

古城、マーブルホール、長い廊下、シャンデリア、歴代の肖像画、貴婦人の衣装、たまらない魅力である。

ホレスウオルポールの「オトラント城奇譚」あたりが嚆矢らしい。

アンラドクリフもゴシックロマンの大家として知られている。

『ユードルフォの秘密』と『イタリアの惨劇』が代表作だ。

「嵐が丘」エミリーブロンテも広義のゴシックロマンだ。

ゴシック小説の伝統はアメリカにも引き継がれて

ポーの「アッシャー家の崩壊」もゴシックロマンだ。

ナサニエルホーソンの「七破風の家」もそうだ。



プロットはそれぞれ微細に違うが大まかな筋立ては全く同じである。

ところで、、、

ゴシックロマンスを否定される向きもある。

自然主義文学こそ最高という批評家達だ。

しかし事実を事実として書くだけなら、それはドキュメントでいいだろう。


小説はあくまでフィクションだ。

虚妄の中に人生の真理を描出するのが本筋だ。

ゴシックロマンスのおどろおどろしい、設定を私はむしろ賞賛したいほどだ。


古城、幽閉された狂人、呪われた一族、先祖の因縁、殺人、大理石の大ホール、舞踏会、中世風の衣装、壮麗な回廊。荒れた墓地、鐘楼、地下牢、拷問室、亡霊の出現する部屋、

夢とミステリーがあっていいではないか。

たとえば、、

自然主義文学で、下積み女の悲惨な一生を延々とこれでもこれでもかと

何百ページも描いた自然主義小説より100倍ましだよ。



ゴシックロマンスの典型的な、内容は主として舞台を中世の古城に置いて、時代は18世紀、


たとえば、こんな感じだ。

主人公は若くて美貌の娘、しかも、

故あって零落していまは、家庭教師をして糊口をしのいでいる境遇。


ある日さる、名家から家庭教師の仰せが届く。


行ってみるとそこは深い森の奥の古城だった。そこに得たいの知れぬ、城主の主人がおり、

妖しげな老嬢メイドも、そしてまた、召使の男が容貌怪異でこれまた怪しい。

肝心の子弟はといえば、線の細そうなか弱い病弱の年のころは12歳くらいの娘。しかも、その城には開けてはならないという、秘密の部屋もあるらしい。そして、地下牢の跡や深夜にギーッと鳴る扉、中世の拷問具などもそこにはある。そしてどこまでも続く、長い大理石の回廊、荒れた墓地、妖怪のすむ森、亡霊の出現する先塔、、、、、、、。


てな内容のお話がおどろおどろしく続く趣向になっている。こうした傾向のロマン小説がその頃イギリスでは盛期を迎えたのである。


こうしたものがイギリス人はお好みのようでその後も連綿として繰り返して創作されてきているのである。(かく言う私もだいすきであるが、、、。)


さて具体的にはどんな作品があるのか。


まず、挙げなくてはならないのが、これらの作品。


オトラント城奇譚、  ホレス・ウオルポール作


イタリアの惨劇、ユードルフォの怪、   アン・ラッドクリフ女性作


イギリスの老男爵     クララ・リーブ女性作


バテック   ベックフォード


マンク     MGルイス


フランケンシュタイン     メアリーシェリー女性


放浪者メルモス     マチュリン作


ジェーンエア     Sブロンテ女性


嵐が丘        Eブロンテ女性


レベッカ        ダフネデュモーリア女性


更にアメリカにも引き継がれて、


七破風の家     ナサニエルホーソン


緋文字      ナサニエルホーソン


ウイーランド   CBブラウン


EAポーの諸作品にも濃厚に受け継がれている。「アッシャー家の崩壊』「ちんば蛙」などがその例。


文豪ディケンズの作品にもゴシックっぽいのがあるように、もう、これはイギリス人の性向なのかもしれない。例えば「荒涼館」「大いなる遺産」など、

コナンドイルの探偵小説も多分にゴシック的である。『まだらの紐」など。


そしてアメリカはアニヤ・シートンの1945年に発表された小説、「ドラゴンウィック」もゴシックロマンスである。これは映画化されて私の大好きな映画の一つでもある。ジーンティアニー主演だから余計気に入っている作品だ。

こういう風に連綿とゴシックロマンスの伝統が受け継がれているのである。


さらにドイツにもその影響は及び

ゲーテの「ドイツ亡命者の談話」や

シラーの「見霊者」

ホフマンの「悪魔の美酒」「イグナーツデンナー」などに引き継がれている。


私は、こうしたゴシックロマンスが大好きである。



イギリス ゴシックロマンス、書誌


* 『オトラント城奇譚』(1764) ホレス・ウォルポール

* 『イギリスの老男爵』(1777) クレアラ・リーヴ

* 『ヴァテック』(1782) ベックフォード

* 『森のロマンス』(1792) アン・ラドクリフ

* 『ユードルフォの謎』(1794) アン・ラドクリフ

* 『ケイレブ・ウィリアムズ』(1794) ウィリアム・ゴドウィン

* 『マンク―破戒僧』(1795/1796?) マシュー・G・ルイス

* 『イタリアの惨劇』(1797) アン・ラドクリフ

* 『フランケンシュタイン』(1818) メアリ・シェリー

* 『放浪者メルモス』(1820) チャールズ・ロバート・マチューリン




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