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Drunk Dream  作者: ゆすてる
2/6

かんこどり

ジョブの概念。世界観的な何か。そしてヒロイン(仮)の登場になります。

 なぜ、履歴書めいた物を書かねばならないのか。

 そう思いながらゲームの世界で筆を取っているのが俺、アカツキ・コウヘイだ。


「なんと言っても、自由な第二の人生だからね。しっかりアピールしちゃって!」

「はぁ……まぁ、わかりました」


 そんな俺の前で、鼻息荒く、両手を胸の前でギュッと握って熱弁してるのがエルゼさん。

 始まりの町、グランウォールで新入りへのチュートリアルを承っているというお姉さんだ。

 彼女はモンスターから獲得できる各種素材の流通を担うという狩猟ギルドの受付嬢なのだが、このところ閑古鳥だったらしく妙に張り切っている。

 いかにもゲームって感じのする狩猟ギルドが閑古鳥ということにも驚いたが、一番驚いたのは、受付なんていう地味な役割がNPCじゃなかったことだ。

 聞けば、この世界はゲーム進行が致命的な場合を除き、NPCが出てくることはないのだと言う。

 商人や受付を初めとした様々な業務に就いている人々は、みんな好き好んで給料もらってやってるんだそうだ。もちろんゲーム内通貨で。


「あ、ステータスの書き込みもお願いね」

「はい……って結構項目多いですね。これ、レベルアップでポイント振っていくんですか?」

「うんうん。後々、どこを伸ばすかで個性が出るから慎重にね。まぁ、好きに振っても大丈夫。一箇所に全部ポイント注ぎ込んでる子もいるから」


 そう言って、エルゼさんは笑う。


「最近の子だと確か、HPに極振りすゆ~、って言ってたかな。防御を上げる人は多いけど、HPは珍しいのよ?」

「……珍しい、ってことは需要がないんじゃないですかね」


 無難なところで行くと前衛は攻撃力のためにSTR、または命中精度や器用さのためにDEXを上げる、ってところか。

 防御もVITで物理、MNDで魔法が上がるみたいだし、そっちの方が目に見えて効果がありそうだ。


「ところで、あなたは前衛と後衛どっちにするの?」

「まだどんなジョブがあるのかも見てないので、なんとも」

「それじゃあ最後にジョブの説明ね。これは一覧を見てもらおうかしら」


 言いながら、エルゼさんが一覧表を渡してくれる。

 まぁとりあえずスタンダードなジョブ、を……


「……多くないですか」

「第二の人生だからね!」


 すんごい笑顔で親指を立てるエルゼさん。

 そりゃあ人生だって言うなら職がたくさんあるのもわかる。わかるけど、五十を超えるのは余程のことなんじゃないだろうか。

 う~ん……一応どのジョブにも後からぺーぺーとして転職できるらしいけど、技能のマスターには時間かかるだろうしなぁ……

 とりあえず、最近の流行とか聞いておこう。狩猟ギルドに人がいないってのも戦闘系が流行ってないからかもしれないし。

 

「そういえば、なんでここのギルドはこんなに人がいないんですか?」

「よっくぞ聞いてくれました!」


 ば~ん! とテーブルを叩いて熱意アピールするエルゼさん。

 ちょっと心臓に悪い。


「この通りに他にもギルドがあったでしょ? 植栽ギルドとか」

「ありましたね」

「その名の通り、植物を植えるわけなんだけどね……」


 その後一時間以上にわたってエルゼさんの愚痴を聞かされた。

 要約すれば、すでに様々な素材が養殖可能となっているため、一部の凶悪、あるいは稀少なモンスターの物でもない限り、アイテムが狩猟ギルドに持ち込まれる機会がなくなっているのだそうだ。

 ただその分、途轍もない価格の取引となるため、ギルド全体としては潤っているとのこと。


「わかるでしょう? 飛び散る汗と血、強敵との会合、そして逆境で見せる不敵な笑み……これを仮想現実のロマンと言わずしてどうするの!?」

「えぇはいそうですね」


 加えて、狩猟への熱い思いが語られている。

 しかしまぁ、一攫千金狙いでなら狩猟の道もアリということはわかった。

 話は適当に聞き流しておいて、ジョブを真剣に考えよう。

 正直、さっき話に出たHP全ベットの子じゃないけど、普通じゃあつまらない。

 するってーと、中衛。立ち回りの工夫が必要なピーキージョブとされている、このあたりを攻める方が面白そうだ。

 中途半端で終わらないような工夫も大事になる。できれば前にも出られると嬉しいな。

 ……うん。これにしよう。


「痛覚のカット機能を極力削ってる人もいるのよ。戦場には臨場感が必要だか」

「あの、ジョブ決めました」

「らって――え? 決めたの?」

「はい。このクラフティメイジにしようかと」


 このジョブは支援効果を掛けながら前に出る魔法使いらしい。

 クレリックに回復力は劣り、ブラックメイジに攻撃力は劣るものの双方の魔法をある程度使うことができ、敵への弱体に秀でている。

 器用貧乏と称されるらしいが、極めれば戦力の要になるとも。


「う~ん。これはまたお姉さん好みなジョブね」

「そうなんですか?」

「使い手の知恵次第な魔法が多いのよ。いくつか君の先輩たちが確立した戦法もあるけど、その辺りは追々教えてあげる」

「お願いします」

「はい。それじゃあアカツキ・コウヘイの狩猟ギルド登録、確かに承りました」


 エルゼさんはそう言って、楽しそうに俺の履歴書を壁に貼り付けた。

 どうやらそこは、最近ここで狩猟ギルドに登録した人々の一覧になっているようだ。

 つまり、俺とレベルが近い人の一覧ってことか。

 一覧と言っても、ほんの数枚しかない。戦闘担当職は本当に不人気みたいだ。


「そこ、見てもいいですか?」

「いいわよ~。あ、そうだ。ちょっと見ながら待ってて」


 パタパタと、エルゼさんがカウンターの奥に消えていく。

 その間に、同期と思しきメンバーに目を通す。

 誰も彼も、エルゼさんに言われたからだろうか、しっかり書いてる。

 とりあえず目についた一枚の自己アピール欄を見る。

 

『タフネス目指して頑張ります! ゆろしくお願いします!』

 

 ……この子は言語に難がある子らしい。

 あ、いや、待てよ?フォルドさんの一人称が古風だったみたいに、海外の言葉遣いでも癖があるとこんな感じで訳されるのかもしれないな。

 関西弁とかそういうの、海外にはどんな風に伝わってるのかも気になるな……


「お待たせ。はい、これ」


 そんなことを考えているところに、エルゼさんが帰ってきた。

 とりあえず、差し出されている物を受け取る。


「これは、剣と盾……バッジ、ですか?」

「そ。そのバッジはクラフティメイジの証拠よ。好きなところに付けておいてね」


 剣はいかにもオーソドックスな初期装備って感じの突剣。金属製じゃなくて、象牙のような色合いと筋の入り方だ。

 盾も木製で、なめした毛皮が貼り付けてあるもの。打、斬の双方に対応できるにはできるのだろうが、耐久性は高くない気がする。

 重量はどちらもさほど感じない。低レベルでステータスも低い内だし、軽くて扱いやすいものが選ばれているのだろう。

 支給品として受け取れるのは嬉しいけど、長い付き合いにするわけにはいかないな。

 たぶん、この中で一番大事なのはこのバッジだ。なかなかに凝った造りで、鷲が片方の翼を広げた形をしている。

 そして、ところどころ鷲の背に隠れているものの、CとMの二文字が赤く自己主張をしている。クラフティメイジの略称かな。

 うん、いいじゃないか。とりあえず、襟にでも付けておこう。


「それを付けている間、クラフティメイジとして扱った技能の熟練度が上昇していくの」

「へぇ、そういう仕組みに……あ、他のジョブとの共有技能とか、あるんですか?」

「あるわよ。そこに目を付けるなんて、アカツキ君、わりとゲーマーなのね」

「ははは。まぁ、それなりにやってます」


 クラフティメイジの技能として使えるのは、器用貧乏の仇名に相応しくかなりの数に及ぶ。

 それらが転職した時に生かせるというのは大きい。もし、この道は自分に向いていないからと断念しても、次に繋ぎやすい技能熟練度を持っているのだから。


「なら、あとは習うより慣れよ。早速町の外に出て、戦闘経験を積んでらっしゃいな」

「そうさせてもらいます」

「どんな素材でも、ちゃんと買い取ってあげるから持ってきてね」

「お願いします。それじゃあ、行ってきます」


 ギルドを出ていく俺を、エルゼさんは軽く手を振って見送ってくれた。

 表の通りに出る。さて、外に行くには確か西門から出れば……


「ん?」


 その西門の前で、パーティ募集をしている子がいた。

 両手でメッセージボードを抱えている。文面は『MMです! 楽しいこと大歓迎です!』と簡潔だ。

 MMって何の略だ?


「駆け出しのハンターです! 一緒にお出かけしませんか~?」


 声を大にして呼びかける女の子。

 長い水色の髪が、先端に至るにつれてふわふわと波打っている。

 彼女は誰も見向きもしてくれない現状に一度だけ溜息を漏らして、上下させる肩と一緒に頭を垂れた。

 その頭頂に、ぐったりした、でもリラックス全開な表情の……横幅のある猫、なのかなんなのか、よくわからないモノがうつ伏せに乗っている。帽子の一種だろうか。

 

「う~ん……ノブさん。今日も誰も遊んでくれないね」

「もぁ~ぬ」


 ……生きてた。ノブさん、って名前らしい。

 というか鳴き声が可愛くない。欠伸か?

 とりあえずそこは置いといて、駆け出しでやる気に溢れるハンターってことは、たぶん俺と同じような感じだろう。

 あのオプションはよくわからないけど、一緒に戦えれば頭数が増えて危険が減るのは確実だ。


「そのパーティ募集、初心者でも大丈夫ですか?」


 まぁそんな打算的なことは抜きにして、この子は『今日も』って言ってた。

 つまり昨日も同じように呼びかけをしていたってことだ。それをスルーしていくなんてできない。

 最近の狩猟ギルドの人手不足を知っている以上、滅多にない仲間との出会いの機会とも取れるし。


「あ――はい! 私も初心者だから、大丈夫です!」

「もぁ~ぬ」


 勢い良く顔を上げて、女の子が笑顔を見せてくれる。

 おまけに、ノブさんとやらも目尻を下げてご満悦な感じだ。

 それだけで、声をかけて良かったと思える。


「それじゃあ、パーティの加入申請しますね!」

「お願いします」


 最低でも一日は先輩である彼女は、パーティへの入れ方も知っているらしい。

 なにやら真剣な面持ちで、もにょもにょと呪文のようなものを唱える。と、その右手が俄かに光り始めた。


「うん、ちゃんとできた! ここにタッチしてもらえればパーティ結成です」

「なんか、変わったパーティの組み方ですね」

「そうですね。でも、私は好きかな」


 言って、彼女ははにかんだ。

 確かに、こうして触れ合ってパーティを組むのは悪くないかもしれない。

 少なからず、言葉以外の何かを交わしてスタートできるのだから。

 人と触れ合うのが嫌な人間もいると思うけど、そうなるとどうなんだろう?

 まぁ、それはそうなった時にわかるか。


「じゃあタッ……」

「あ、ハイタッチにしましょう! ノブさん、掛け声お願いね!」


 俺の機先を制して、彼女は手を挙げた。

 パーティを組めたことが、よっぽど嬉しいのだろう。

 それになんか、普通に触れにいくよりハイタッチの方が俺も気が楽だ。なんというか、仮想現実とは言え女の子相手だし。


「もぁ~、ぬっ」


 気の抜けるような気合の入った掛け声に合わせて、パチン、と手を打ち合わせる。

 瞬間、彼女のHPとMPが視界の端に表示された。

 なるほど。詳細まではわからなくても、戦闘中はこれだけで十分か。


「あぁーっ!」


 と、彼女が口元を手で隠しながら叫んだ。

 何か大変なことを思い出したような、そんな感じだ。わかりやすい。


「ごめんなさい! 私、興奮してて自己紹介もしないで!」


 それから深く腰を折って、謝罪に移る。

 ……うん。俺もしてないね。自己紹介。


「俺もしてないですし、こっちこそすみません。俺は……」

「レディーファーストです! 私から名乗らせていただきます!」


 また、遮られた。

 色々とツッコミたいところだったけど、そんな隙もなく、彼女は続ける。


「ミコト・ミズサキです! モンスターミミックやってます! ゆろしくお願いします!」

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