異世界に生まれて四年経ちました-4
こんばんは、藁氏です。
更新ペースが半端無いことにw
気持ちの良い陽光が俺を照らしていた。春の陽気とでもいったところか。温かなぬくもりに包まれて、俺は芝生に寝転んだ。昨日小雨が降ったせいで若干湿り気のある芝生だったのだが、それもこの陽光に照らされていくうちに次第に乾いていくだろう。
朝ご飯を食べ終えた俺は、間髪居れずに庭の芝生へと行った。三歳頃までは、一人で外に出て行こうとすると、親や兄弟や使用人に口々に反対されていたので中々自由に出来なかったが、四歳になって魔法も習い始めた今では、ある程度自由が約束されていた。
先程庭といったが、訂正しておこう。正しくは、某ネズミランドの半個分程の広さを有するグラウンドのようなものだ。
これを庭と言ってしまっては、一般家庭にあるものが縁側に変わり果ててしまう。
「んー、良い気持ち……」
とにもかくにも、本当に寝るには絶好の天気なのである。朝起きたばかりなのだが、昨日の疲れ(主にユリン)が抜けきれておらず、すぐにまた眠くなる。
「あー、イルヴァ様だー」
俺がうとうととしかけてきたところに、急に邪魔が入った。
「んぁ?」
ぼふっ。
「むぎゅ!?」
顔の上に思いっきり、何かが落ちてきた。鼻が! 鼻が痛いです!! 何処のボディープレスだよ。半泣きになりながらも、その何かをどかす。
「えへへー、イルヴァ様とこうやって会うのは久しぶりかな?」
「そんな訳無いだろう。ついこないだも会ったじゃないか。それと、会っていきなりボディープレスする癖は止めたほうがいい。っていうか、止めてほしい。そろそろ僕の鼻がぺきっと逝きそうだから」
愛らしい童顔に、満面の笑みを浮かべるこの少女。名をヨハネス・メイランジェという。俺は面倒くさいからメイと呼んでいるが。俺のイルヴェーランドを略称してイルヴァと呼ばれているんだから、俺がメイと呼んでも問題ないだろう。
メイの言動は限りなく幼い。俺に比べたら果てしなく幼いだろう。まぁ、俺の精神は大人なわけだから比較するのもどうかと思うが。
だが、メイは既に十歳で女だが俺よりも遥かに体が大きい。男性よりも女性の方が成長が早いというのは本当だろう。精神面はともかくとして。
「んー、まぁいいじゃない。それよりも、どうせ暇してるんでしょ? 私と一緒にお花畑にお花を摘みに行きましょうよ」
メイは花が好きで、暇があれば一日中花を観察しているぐらいだ。これも、女子独特の感性ってやつなのか? 俺からしてみれば、地面から生えてるものは全部草なんだけど。そういえば、俺が前世で幼い時に、母さんが大事にしていた花壇の花を雑草だと思って根こそぎ引っこ抜いてしまって、後で本気で殴られたなぁ。
「それ、男がやる事じゃないだろ。それに、花なんか摘んでもつまらない」
「えー、行こうよー」
駄々をこねるメイ。どうしたものかと俺が困り果てていると、城のほうから一人の女性が走りよってきた。あれは確か、メイのお母さんかな? もうそこまで若くないはずだが、メイと同じような童顔でどこか幼さを感じさせる。
「メイ、探したわよ。イルヴァ様、申し訳ございません。ご迷惑をおかけしたようで……」
深く頭を下げるメイのお母さん。俺は、どうにもこういう反応が苦手だ。前世では、ただの学生だっただけなので、どうにもこういう敬われるのは慣れない。確かに、俺は王族で身分が高いのだから、こういう反応をされるのは仕方が無いと言えば仕方が無いのだが……。
「あ、いえ。別に大丈夫です。それよりも、探していたというのは?」
「この子、今日はお勉強をしなければならない日なのに、気が付いたらいなくなっていて……」
はぁ。つまりは――
「サボリか」
「えへへー、だってお勉強ってつまんないだもん。でも、お母さんに見つかっちゃったから帰るね。イルヴァ様、また今度遊んでねー」
「それはいいが、花摘み以外でな。後、ボディープレスをするなよ?」
「うーん、やだー」
「おい! ボディプレスすんなよ!」
「じゃあねー」
「人の話を聞けよ!?」
――良かったのか悪かったのか。結局、メイによって眠気が吹っ飛んでしまった俺はすごすごと城の中へと戻っていった。