異世界に生まれて四年経ちました-2
藁氏です。
ユニアクや評価の伸び方が予想外すぎて、唖然呆然です。
一つお気に入りが増えるたび、1ptでも評価が上がるたび、一喜一憂しております。
これからも宜しくお願いします。
「坊ちゃん、どうしましたか? ご気分が優れないようですが」
そういって俺を労わってくれるのは、学習係であるライラット・バンナム。年の頃は、初老を迎えた辺りというところか。その開いているのかも疑わしい細い目は、正にゲームに出てくる賢者といった雰囲気である。
だが、現役時代には『鬼畜魔術師ライラット』と呼ばれていたらしい。『鬼の~』とか『暴君~』とかなら分かるのだが、『鬼畜』っていうのはどういうことだよ。ライラット、一体戦場で何をしたら鬼畜になれるんだ?
昔話はともかく。今のライラットは先程も言ったのだが、賢者といった感じでとにかく魔法に関する知識が豊富だ。そして、教え方が上手い。俺は勉強が嫌いだ。だから、魔法の構造云々なんて勉強するのは真っ平御免なのだが、このライラットが教えるなら別だ。
たまに息抜きもさせてくれるし、実戦で使うのに必要な必要最低限の知識だけを絞って教えてくれたり、面白いサイドストーリーを織り交ぜてくれたりと、とにかく子供の(精神年齢二一歳)俺でも、分かりやすく教えてくれる。
王族のVIP待遇ということで、日によって教える人が変わるのだがこのライラットよりも面白く教える先生は一人も居ない。父に頼めば、そんな日替わりメニューにしなくても良くなるのだが、そうなると今まで教えていた人たちは全員職を失ってしまうわけで。流石に、俺の私情で人の人生をどうこうするのは、抵抗があるから我慢している。
「ちょっと、遊んでた」
果たして魔のメリーゴラウンドを遊びというのか甚だ疑問だが、どうせユリンがぶっ倒れたと言っても信じては貰えないだろうから、そう言っておいた。
案の定、人の良いライラットはそれ以上追求する事無く「そうですか」で済ませると、早速魔法の勉強に入った。
「それでは、今日は空間上位魔法『ロジック』についてお勉強をしていきます。初めに、坊ちゃんは空間下位魔法についてはご存知ですよね?」
空間下位魔法。つまりは、空間を操作する魔法の事だ。ほとんどの魔法には、下位と中位と上位の魔法があるのだが、下位はその魔法の基本で、中位はそれの応用。上位はそれの発展といった感じである。空間下位魔法は――えーと……。
「――ご存知じゃないです」
溜息を吐くライラット。
「坊ちゃんは覚えるのも早いですが、忘れるのも早いですねぇ。全く、天才肌なのに勿体無い。それでは、要約してもう一度説明致します」
「うん。有難う」
「まず、空間魔法とは空間を操作する魔法というのは大丈夫ですよね? 具体的には、空間を歪めたり、空間を一時的に切り取ったり、空間を作り出したり――異空間というやつですね。その他にも色々とありますが、一般的に使われるのはこのぐらいです。
空間魔法は、他の魔法と比べて非常に魔力の消費が激しいです。故に、実戦的では無いと言われています。
ですが、逆に言えば使うことが出来れば非常に重宝する強力な魔法でもあるのです」
「ライラットは使ったことがあるの?」
「私は戦場で使ったことがありません。というよりも、使う必要がありませんでしたので。まぁ、異空間を作り出すぐらいはやった事がありますが」
「確かに、ライラットは普通に強いから空間魔法なんていらないよね」
「お褒めに頂き光栄です。
さて、それでは空間下位魔法についてです。空間下位魔法は空間魔法の基本で空間を歪めるというあたりから始まります。具体的に、それでどうなるのかという事はありません。視覚的にはぐにゃりと視界が歪んで見えます。
これは、使うというよりも他の空間魔法を使うための基礎知識と言えます。前に坊ちゃんに教えたときは、数分でこれをマスターしていましたが、そろそろ思い出しましたでしょうか?」
記憶の糸を辿っていくが、思い出したのは昨日食べた食事だけ。ライラットには申し訳ないが、どうやら完璧に忘れてしまったらしい。
小さく首を振ったが、ライラットは愉快気に笑う。
「まぁ、坊ちゃんは覚えるのが早いから心配はいらないでしょう。それでは、復習はこれで終わりです。ここからは、空間上位魔法であるロジックについての説明を――」