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異世界に生まれて六ヵ月経ちました

藁氏です。


ハイペース更新になりましたが、書き溜めたものを放出しただけなので、これからは亀になります。



そういえば、早速お気に入り登録2件有難うございました。

 あはは、異世界に来ちゃいました!



 俺は今、それぐらい軽い気持ちでこの世界にいた。そよぐ風、突き抜けるような青空に、斑点のように浮かんでいる白い雲。



 その全てが現実の物だと俺は確信している。何がどうして、どうなったのか。俺は今、どうしているのか。何故、ここに居るのか。何より、此処は何処なのか。



 そんな問いがいくつもいくつも、泡のように浮かんでは弾け、弾けては浮かんでいた。だが、俺はそれに対して答えを見出すことは出来ないし、何よりも答えを出したからどうだっていうんだ? 一体、その答えを出したところで何が変わるんだ?



 俺のこの状況は変わるのか? 俺は元の世界に帰れるのか? 正直、何が変わるとも思えない。それに、俺は今のこの状況で満足している。



 上手く言葉を話すことは出来ない。歩くことも出来ない。一人で何かをすることは出来ない。だが、俺はそれを不幸せだとは思わないし、直にそれも改善されていくのだろう。




 虹ヶ峰翔也一七歳男。もう一度人生、やり直しています。



 何がどうしてどうなったかなんて、説明出来ない。なぜなら、俺でさえも今のこの状況を完璧に把握出来ている訳ではないからだ。だから、詳しい経緯は説明しない。簡略に言ってしまえば、今の俺は赤ん坊だ。しかも、生まれて間もない生後何ヶ月の赤ん坊。



 故に、俺には何も出来ない。前まで俺が培ってきた記憶は消える事は無かったので、何もしないというのは一番辛かったが、身近な情報は取り入れられるだけ全て取り入れた。



 まず、この国は俺の居た世界ではない。



 何故かって? そりゃ、俺が目を覚ました瞬間にトマトの様な赤い物体が空を飛んでいたら、誰でも自分の頭を疑うか、この世界の理を疑うだろう。



 残念ながら、俺の頭はおかしくはあれど、狂ってはいないので前者の説は消えている。



 次に、先ほども言ったが俺は赤ん坊であるという事。これは、実際に確認したわけではないのだが、俺が話せないことや、歩けないことやその他諸々により、俺は赤ん坊であると仮定している。




 そして、俺はどうやら金持ちの家の子供のようだ。僅かに動く首の間接で一日かけて、色々なものを見渡したのだが、この家相当ヤバい。何がヤバいかって、まず装飾品の数が半端じゃない。正直、装飾品なんてものは俺は今の今まで見たことが無かった。俺のかつての家は、片田舎の安いボロアパートで壁には雑誌に付いてきたアイドルポスター。



 それに、部屋の隅に山のように詰まれたライトノベルの本。装飾品等という類は一つも無かった。というか、装飾品なんて実物あるのか? 等と思っていた。



 が、やはりファンタジーのような世界にはあるようで。



 金銀のコインや、宝石がたくさんつけられた王冠、更には見るからに高価そうな剣や盾。更には、ネックレスやイヤリング等。それはもう数え切れない程だ。



「イルヴァ様、ミルクのご用意が出来ました」



 そういって、優しそうな笑みを浮かべるのは、乳母であるユリンだ。本名はよく分からないが、自分で自己紹介していたのだから、そうなのであろう。恐らくは、俺が言葉を理解していないだろうと思っているのだろう、一人で愚痴を零しているのを俺は良く聞かされている。



 その優しそうな顔に負けず劣らず、性格も優しいのだがこの女、俺にとっては時たまに悪魔に変身するのである。



「それでは、ミルクいっぱい飲んでくださいね?」


 そういって、哺乳瓶を俺の口元へと近づけるが俺は決して口を開くことはしない。開けば最後、俺の口にその白濁液が流し込まされることは確定なのだ。



 それだけは、どうしても阻止しなければならない。前世でのミルクは嫌いではなかった。寧ろ、好きな方だった。飲むことに対して、何の抵抗も無かったしそんな事を考える必要も無かった。だが、この世界のミルクは違う。とにかく、不味い。


 コナコナとした味わいに、ほんのり塩味。いや、ってかミルクって塩味だっけ?



 それはともかく。要するに、すこぶる不味さなのだ。一度味わったら二度と味わいたくない。故に、俺はささやかながら抵抗する。



 必死に口を噤めば、諦めて帰ると思っていた俺が間違いだった。


 無理やり、哺乳瓶の口を捻じ込ませられる。その不快さといったら、たまったものではない。



「どうしたんですか? ちゃんと飲んでくださいね」


 飲めるか馬鹿野郎!


 グイグイと捻じ込まれる哺乳瓶に、俺は耐え切れず


「あぎゃぶ!」


 発した言葉は、もはや通じるものでは無かった。悲しいかな、言いたいことが伝わらない赤ん坊の虚しさがこれほどとは。


 そして、しまったと思ったときにはもう既に遅かった。流し込まれる不可解な白濁の液。口いっぱいに広がるコナコナとした触感と、塩味。


「うぎゃぶぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」



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