プロローグ
こんばんは。復帰一作目です。
よろしければ、感想下さい。読みやすさを重視して見ました。
虹ヶ峰翔也は突然トラックにはねられて死んだ。はねられるというよりは、プレスされたというほうが正しいのだろうか。
事故現場は、とある片田舎にあるコンビニの前の交差点。この辺りには、街灯と呼べるものはほとんど無く、空から照らされる月明かりだけが、唯一の光だった。
寒々とした、風景。コンビニとは言うものの、都会のように二四時間営業している訳ではない。営業時間は午前九時から午後八時まで。この御時勢に、一体何の冗談だ、と都会から来た人は言うが、この町に住んでいる者からすれば当然のことである。
そんな片田舎のコンビニへと続く道を、翔也は一人歩いていた。時間は、午後七時を丁度過ぎた辺り。もう既に、太陽の光は無く月明かりだけが視界を照らす手段となる。道の脇には田んぼがあり、そこからは心地よい虫の音が聞こえてきた。
「うー、さむっ……」
そんな事を一人愚痴りながら歩道をずんずんと歩いていく。
この町が出来てからほとんど手入れされていないこの道は、歩道と車道の境界線も曖昧になっていて、たまに車とスレスレになる時がある。
ようやく、コンビニの光が見えてきた。そろそろ閉店してしまう時間なので、翔也は少し早歩きをする。店によって、時間帯は違うのだが、翔也が住んでいるこの辺りでは、このコンビニが唯一生活必需品が買える店だった。
閉店してしまえば、明日の朝まではもうやってはいない。
翔也は、自宅でオンラインゲームをやっていたのだが、熱中するあまりすっかり食事を取ることを忘れてしまい、お腹が空いてしまった。だから、このコンビニで食料――お金が無い高校生には大助かりのカップヌードルと、少しばかり格好をつけてみようと、一年前から買っているワックスを買いにこのコンビニへと足を運んだのだ。
ピカッと不自然な光が翔也を照らした。この明るさは、月の光ではない。人為的なもの。簡単に言えば、車のライトの光だった。
この道は暗いから、どちらかといえば夜の間は、歩行者のほうが車を避けなければならない。面倒だが、自分の命を守るためだ。
翔也は道の端っこまで移動した。こうすれば、自然とトラックは反対方向に車体を寄せ、それでこの一件は全て終わり。日常の中の一コマとして、あったという事実だけは残るが人の記憶からは自然に消えていくはずだった。
だが――。
翔也の意識はそこで途切れていた。何の音も無く、ただ重い鉛が自分の身体に圧し掛かってきたような感触。その、違和感のある感触を感じながら、何を考えるでもなく一瞬にして翔也の意識は飛ばされてしまった。
――翌日の新聞の三面の小見出しには申し訳程度で、この事故の事が書かれていた。
“○○町の交差点で昨夜7時頃、交通事故が発生した。被害者は、高校生の虹ヶ峰翔也さん(17)で、遺体は通報のあった加害者の運転手からの通報で、病院に運ばれたが、全身複雑骨折、脳挫傷で死亡が確認された。警察は、△△容疑者を自動車運転過失致死の疑いで逮捕した。容疑者は「居眠りをしていた。夜勤明けでついうとうととしてしまった」等と話しており、近日中にも――”
しかし、これは終わりでは無い。むしろ、始まりだった――。