04.AIには出来ない最も大切なこと
いくら思いついたと言ったって、これをいきなりそのまま子供にやらせるわけにはいかない。下手したら一生の傷を残すことになりかねない。
とすると、コンピューターを使ったシミュレーションが必要だ。それってもしかしたらAIでできるんじゃないだろうか。
「疑似教師と疑似生徒をAIで用意して、そこで実験を繰り返して効率がいい教材とか教え方を求めることってできるかな?」
>はい、できます。認知はAIの得意分野なので、できる可能性は高いでしょう。ただしある程度の開発は必要です。
「人間の教師用の研修教材もできるかな?」
>はい、それも同じことですよ。
できるのは生徒のためのカリキュラムや学習資料だけじゃない。
AIの上で疑似的にベテラン教師と新米教師を用意すれば、新米教師用の研修プログラムも作成できてしまうってことか。
いや、ベテラン教師は必ずしも必要じゃない。疑似生徒の学習効率を使えば、疑似教師の指導効率も測定できるってことなんだから。
これ、もしかしたら教育の革命が起こるんじゃないか?
これで効率が高いと考えられる教材ができることは分かった。次は実際にそれを使っての教育ってことになる。
いや、ちょっと待て。いきなりやっちゃっていいのか?
これもデカジマさんに聞こう。
「良い教材ができたら実験授業に移っていい? それとも何か準備が必要?」
>いい質問ですね、もちろん準備が必要です。医学と同じように倫理規定を決めて置く必要があるでしょうね。
倫理規定だと! なんだそれは。
デカジマさんは、その点数が人間を測るモノサシに使われてしまったらどうするか? そう考えると医学のカルテと同じく、大切な個人情報として秘匿する必要があるという。
そうか、教育のための工学だと思っていたけど、これは教育のための医学だったのか。
そう、これは教育医学。
人の未来を直接扱う以上、精神医学と同じ分野の研究になるんだ。
倫理規定は医学準拠、そして医学だと足りない部分があれば医学と連携して決めていかなければならない。
データの取り扱いだけじゃない。どの段階で実験授業=臨床に進んでいいのか。教育である以上、間違いなく未成年、子供を扱うことになる。絶対にしっかりした倫理規定を設けておかないといけないのだ。
・保護者、そして子供本人の同意をとること
・安全を確保する、危害を加えないこと
・プライバシー保護と守秘義務
・公正と正義
実際にはもっと細かく規定されているし、大切なことが他にもあるかも知れない。ここは本当に大事な所だ。AIに任せっきりにして適当に決めていいものじゃない。
そしてそこをパスすればいよいよ……
>いえいえ、先に教師側で実験してみる方法もありますよ。
そうか。人間教師がAI生徒相手にいろいろ試してみて、その結果を見る実験があってもいいのか。
医学と倫理、これはやっぱり侮れない。




