02.AIは無限に進化できるの?
あれは2026年の3月、小雨の降るある日のことだった。
そもそもAIって何だろう?
なぜか突然そう思ってAIのデカジマさんに聞いてみた。
「AIってどういう物なの? 技術的に教えて!」
>AIとは、多数のトランジスタで構成された演算ノードを大規模並列に集積した半導体アレイ上で、固定パラメーター(重み)を高速クロックで逐次適用しつつ行列演算を膨大に実行することで、入力信号を多層の非線形変換として処理する計算体系です。
う~ん、なるほど。まったくわからん!
何度も色々聞いてみて、なんとなく分かったのは次のような話だ。
スマホやPCは真ん中に高速で大きな計算機と大量のメモリーが入っていて、それで全部をやってのけるようにできている。
でもAIはこれとは違う。一つ一つでは何も計算できないような小さな小さなコンピューターの粒が、何十億個と大量に並んでいる。そして同時に連携させて動かすことで色々なことを考えられるようになっている。
なんでそんな粒々が集まったぐらいで人間みたいに考えられるようになるのか? これは本当に不思議なんだけど、人間の脳みそも同じように小さな細胞同士が連携して動いている。だからそんな感じの物を作ってみたらできてしまった。それがAIの正体。
雰囲気としては人間の脳みそみたいな感じだけれど、見た目の作りは全然違う。ただの半導体チップがめちゃくちゃ大量に並んでるだけだったりする。
で、これ、実際にはグラフィックボードのエンジン部分(GPU)を使ってる。プレイステーション5(プレステ5)のすごい版だと思ってもらえばいい。AIはプレステが大量に並んでる、それでだいたい合ってると思う。
プレステ5が何億、何十億と同時に動いているのを想像してみて欲しい。そりゃもう思いっきり熱くなるし、とんでもないぐらいの電気が必要だ。こうなると専用の発電所がないと無理っぽいのが分かるんじゃないかと思う。
何となくとはいえ、ここまでわかったところでハッと気がついた。
これってつまり、プレステみたいにどんどん進化していくってことじゃないだろうか。いったいどこまで進化するんだろう? もう永遠に進化し続けちゃうのか?
永遠にどこまでも進化したら、人類なんて蹴散らされてしまうよね。これって、やっぱり未来はヤバいの? 人類オワコン?
よし、これもデカジマさんに聞いてみよう。
「AIって100年後にも進化し続けるの?」
>はい。確実ではありませんが、その可能性高いですよ。
マジか……ヤバいな。
いや少し待て。何か続きがあるぞ。
>研究は100年程度では終わらないでしょう。しかし技術向上は10年から20年ぐらいで頭打ちになるかもしれません。
「なぜ10年から20年で技術向上が止まるの?」
>半導体の集積度と消費電力の限界です。
集積度、それと電力か……。
半導体はシリコンの板の上に印刷するようにして作るんだけど、その細かさが原子の大きさに近づいているらしい。原子って一番小さい単位だから、それより細かくするのは絶対に無理なので、もうほとんど限界に近いみたいだ。
でも電力ってまだまだいけそうな気がするけど、そんな限界なんだろうか。
もしも新しい発電所を建てるとなったら、お金がかかるのは間違いない。建てるには広い土地が必要だし、冷却だって必要だ。発電所が1個から2個になれば、電気代だって2倍になってしまう。
でも発電所の中の機械を新しく開発すれば、まだまだいけるんじゃないだろうか。
調べてみると、どうやらこれも限界が近いようだ。
発電所ではお湯を沸かしてその蒸気の力でタービンを回す、そしてその回転で発電機を回す、という構造になっている。発電所の効率はこのタービンの性能にかかっているんだけど、そこがもうギリギリいっぱいになっているのだ。
蒸気と言ったって100℃なんてことはない。高圧にして500℃から1500℃くらいの高温まで上げてからタービンに吹き付ける。現在のタービンは最新型のジェット旅客機のエンジンとほぼ同じ構造になっているから、このぐらいの温度ではなんともない。
発電機を回すためのタービンには、これ以上の改善は期待できない。まさかそんな状況だとはまったく知らなかった。
「いつぐらいにAIの技術向上が止まるの?」
>早ければ5年~10年後です。そこから配置の最適化などをすすめても10年~20年後になりますね。
ソフトウエア技術はもう少し持つかもしれない。でもハードウエアとしてはそこで頭打ちだ。
10年から20年後。AIの限界は思ったより早くやってきそうだ。そしてどうやらすべての人間の置き換えには至らずに済みそうだ。
AIの能力向上がどこかで止まるということは、人間が遊んでても暮らせるような世界はやってこないし、人間が滅びてAIだけが生き残るデストピアもやってこない。
やっぱり今までどおり働くしかないみたい。ちょっと残念だけど、ちょっと安心だ。それはそうだけど、これからもAIの圧力にさらされ続けるのには変わりない。何とかしないといけないのは間違いないのだ。
そんなこと言ったって、これからやってくる大AI時代に対抗することなんてできるんだろうか?




