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子供の成長

作者: ユキさん
掲載日:2026/02/05

子供は、私に日記を差し出した。


親から聞いた話だが、その子は、変なことを言い始め、最近、家ではまともに会話もできなくなってしまったらしい。


「お茶とコーヒーどっちがいい?」


「お茶がいい」


お茶を入れ、せんべいを机の皿に置く


「せんべい、食べてもいいよ」


そういうと、子供はすぐ手を出して食べ始めた。


子供と言っても既に16となる。背丈は私を超えている。最近の子供は成長が早い。


私は目線を日記に戻した。


日記の最初は、

ある人物の特徴が書かれていた。


背丈がとても高く、顔はよく見えないが、撫でてくれる。よく撫でたり髪触ってくる。


子供の方に目をやる。


子供は、おせんべいを頬張りながら、まるでそこに誰かが居るかのように、小さなブランケットを敷いていた。


日記を読み進める。


次の頁には、ある人物との出会ったことについて書かれていた。


寝ようとした時、そこに居たらしい。何かあった日だったのだろうか。


子供は、その日からずーと彼と一緒に寝ているようだ。


「自分の親の名前とかわかる?」


「知らないです。」


家族に興味は無いのだろうか?それとも、【彼】の方が子供にとっての家族なのだろうか。


日記の中に気になる記述があった。


(最近、いい気分。ずーと眠いや、あの人はいい匂いする。撫でてくれるし。またやってくれないかな)


この日記の最初の頁の日付は、この子が中学校に入る辺りの時期だろうか、何かあったのだろうか。


「なんで日記を書き始めたとか理由はある?」


「覚えてない。」


「そんなもんだよね」


私はこの子供を治してくれと、子供の親からお願いされた。しかも、数年は遊んで暮らせる額を用意された。


断る理由がなかった。


しかし、治すにしても、幻覚と付き合っていくしかない気もする。


この子供から幻覚を奪ったら、どうなるのだろうか?


そんなことを考えながら、子供と雑談を重ねていくうちに、お茶は冷めてしまった。


気づけば、子供はうとうととし始めた。


私は処方箋を書いた。


様子を見るしかない。


1月後、この子供に会う約束を交わした。


親から、子供が部屋から出てこなくなったと聞いた。その為、家にお邪魔させてもらう事になった。


家が大きすぎるせいか、子供の母も自分の子供の部屋までの道を覚えていなかった。

とても、時間がかかった。


部屋の前に着くと、子供の母はスマホを取りだし、仕事の連絡をし始めた。


目のクマも酷いし、忙しそうだ。


「お願いしますね、必要ならお金幾らでも用意しますので」


その声は、とても重かった。


「頑張りますね」


私は笑顔で答えるしかなかった。


子供部屋のドアは空いていた。


ドアを軽くノックする。


返事はない。


部屋は電気が着いていた。


割れた小さな鏡

たくさんの毛布が置いてあるベッド、枕が二つ


部屋の奥の机で、子供は何かを書いていた。前見せてもらった日記にも見える。


部屋にこもっていた子供は後ろ姿だけでも、すっかり様変わりしたように見える。見た目は変わっていないのにどこか大人びていて、まるで別人だった。


…子供とはいえ、こんなすぐに変わるものだろうか?子供言うよりは青年に近い。


彼は、椅子から立ち上がる。


「お久しぶりです、先生」


「ああ、随分変わったようだけど、最近どうだい?」


「心配をかけて申し訳ないです。ちょっといろいろありまして」


「コーヒーでも飲みますか?」


「じゃあ貰おうかな」


青年は2つコーヒーを入れ、先に自身の分を飲む。


変な匂いはしない。

変なものを入れた様子もない。

あとから私も飲むが...


...とても苦い。この子供は普通に飲んでいるが、よく飲めるものだ。もはや私より大人なのではないだろうか。


青年はコーヒーを飲みながら話す。


「話始める前に、ひとつ、お願いしてもいいでしょうか?」


「なにか?」


「髪、触ってもいいですか?」


理由を聞こうとしたがやめた。


「仕事のルール的にダメなんだ。」


「...本当に?」


青年はなんだか泣き出しそうな気がした。

とても困った。


「...いいよ」


「ありがとうございます!」


部屋のすぐ外には青年の母もいる。多分、大丈夫。


青年は、私をその辺にあった椅子に座らせ、髪を触り始めた。なんだかこそばゆい。


青年の指は、貴重品を触るかのごとく、丁寧に私の髪を触っていた。とても、冷たかった。


「中々、他の人の頭を触ることってないんですよね」


その声はどこか楽しげだった。


「いい匂いがしますね」


「そうかな、特別なシャンプーを使ってるつもりはないんだけど」


青年は少し笑った。


「あの子も、このくらい素直ならいいんですけど」


青年は小さな声でそういった気がする。


髪を触られながら、他愛のない雑談を何度か重ねる。そして、私は気になっていたことについて聞いた。


「最近、何かあったのかい?前あった時とは、なんだか色々と変わったように見えるが」


「ある子にお願いをされてしまいまして」


少し困ったような声で青年は話す。


「お願い?」


「そう、お願いです。その子は毎日毎日、一緒に居てとか、眠いとか、とかそんな事ばかり言うんですけど」


少し、青年の呼吸が荒くなる。


「大丈夫かい?」


青年は呼吸を整え、話を続ける。


「あの子が寝ちゃって、でも私も眠くて、あの子はいいんですけど、何か足りなくて」


なにか返そうと思ったけども、頭が上手く働かない。


それでも、何を話そうか少し考えていた間に、青年は満足したのか、髪を触るのを辞めた。


青年の髪は、とても綺麗だな...


「先生、ありがとうございますね」


青年は嬉しそうだった。


私が座っている椅子の背に青年は手を乗せた。


「そういえば先生、普通、誰ともしれない人に対して日記って渡すと思いますか?」


「そうかなぁ、どうだろ、あはは」


「まだこの治療やるんですか?」


「もうちょっと見させてもらおうかな」


「あんまり、相手の事を観察するのは嫌われますよ」


悪寒を感じる。


「ごめんね、それでも仕事だからさ、どんな形であれ君を治さなきゃならないんだよね」


それに、青年の母からの圧もある。早く終わらせろと。


「うーん、まぁいいですけど、後悔はしませんね?」


青年から幻覚を取り除くことはできないかもしれないが、それでも、何か助けになる何かをしてあげたい。


青年は椅子に座る私を後ろからただ見ている。


私は椅子から立ち上がり、青年の顔を見ようとした。


立ち上がろうとした、が、椅子にもたれかかってしまう。


「大丈夫ですか?」


青年は気分が良さそうだ。


頭が端から白で塗りつぶされるように真っ白になる。心臓の音はうるさく、周りの雑音ばかりが耳に入る。


私は椅子から崩れ落ちた。


倒れる私に青年は見守るように近づく


「コーヒー冷めちゃいましたね」

「大丈夫?」


目の前の女は、スマホに夢中なようだ。

相変わらず目の下のくまがすごい。


「大丈夫だよ。おかあさん」

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