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別れのエチュード

今回も短めの書き出しをどうぞ

 いつもより早く目が覚めた朝ぼらけ。

 夏休み明け、九月一日。

「別れよう」

 通学途中の公園で、君は僕の黒目を真っ直ぐに突き刺すように突然そう放った。

 だから、僕は拍子抜けして膝から崩れ落ちると、君は僕の白目をむくように

「やめて」

 と一言だけ付け足す。

 そのあとの会話が鮮明に今でも甦る。

「別れの予感」は、朝、始発駅でローズカラーの電車に乗ったとき、いつもは二人並んで座るのに、三人掛けのシートの間に白髪の紳士が割って入ったことだった。

 時間の軸が、りんごの皮のように、今どこを剥いているのかわからなくなり、またどこかでプツリと切れるような感じだった。

「もっと、色んな人と出会った方がいいと思う。エエ大学行ったらエエ女の人いっぱいおるし、私ももっと色んな男の人と出会いたい」

 二つ年下の君の方が余程大人だった。

 君の唇が動いた。だけど何を言おうとしているのか。

 僕には聞こえなかった。いや聞かなかった。

 最後に聞こえた言葉だけをはっきりと覚えている。

「さようなら」

 たった一言の言葉がこれほどに深く胸に刻まれたことはない。

 いつもは「バイバイ」なのに。

「さようなら」は僕には再び会うための約束でなく、永遠の別れのメッセージ。

 

 


お読みいただきありがとうございました

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