マジシャン
書き捨てです
マジシャンを名乗る男は三枚のコインを机の上に置いた。次にトランプをシャッフルした。
「好きなところでストップと言ってください」
通訳の男がそういうと、その場で指名された郁が「ストップ」と言った。それをマジシャンに見えないように、周りの客にだけ見せろ、というので郁は周りの客に見せた。「クラブの8」である。
マジシャンは笑うこともせず、挙句、歯さえも見せず、口を真一文字に結んで、懐から封筒を取り出し、中から「スペードの3」と書いてある紙を客側に見せた。
ため息をつく、あるいは呆れる客をよそに、マジシャンが、
「今度はもう一度引いたカードを周りに見せて欲しい」と通訳が訳すと、引いたカードはいつの間にか「スペードの3」になっていた。さっき周りに見せたのは、確かに「クラブの8」だった。これはタネはわからない。けれど、客は皆一斉に驚きの表情を見せた。
「三枚のコインは?」
と司会の男がいうと、通訳が「スペードの3の3で三枚だ」と訳した。
それをテレビで見ていた光一は、どうせタネがあるんだろう、と懐疑的だった。もちろん、マジックだからタネはあるに違いない。
「それではコマーシャル」
司会の男がそういうとうちで飼っている猫のタマが
「ミャーシャル」と言っているように聞こえた。
「ミャーシャル」
もう一度タマがそう言ったのを光一は聞き逃さなかった。これはもしかして「コマーシャル」というのを真似たのだろうか。そう思うと、光一はもしかすると猫も話すことができるかも、と俄かに考えたのだった。
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