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硝子の薔薇

こんにちは。はじめまして。水少納言です。原稿用紙2枚の超掌編です。

 打ちました。大きく弧を描いた放物線は、センターの頭上、超えました。スタンドに入った、ホームラン。

 実況のアナウンサーの声がテレビから流れてきた。また大谷がホームランを打ったようだ。

「あなた、もう時間よ」

 テレビのスポーツコーナーに夢中になっている僕に妻が出勤時間だと告げる。

 鞄を持って玄関のドアを開けて外に出る。秋口だというのにまだまだ暑い。左手にはごみ袋。家の前に置いた。今日はプラごみの日か。そう呟いて駅に向かう。

 スーツを着たサラリーマンに混じって、学生服の高校生たちが楽しげに騒いでいる。

 そんな姿を見ていると自分の高校時代が思い浮かぶ。勉強はできる方ではなかったから、かといってスポーツができるほど運動神経の良くなかったから、運動部には属さず、いわゆる帰宅部だった。

 恋愛のことばっかり考えていた高校時代だったな。思い出すなあ。駅で見かけた可愛い子がいて、同じ車両に乗り込んで、チラチラ見ていたの。声をかける勇気もなくて。

 携帯電話のない頃だったから、今みたいに気軽に電話番号を聞くこともできなかった。

 中学時代、よく電話帳の番号一覧から好きなコの電話番号を探した。世帯主の名前だったから、お父さんの名前まで覚えてしまった。

 ノートの端っこに、あのコの名前と僕の名字とくっつけては消したっけ。

 あの頃には戻りたくないかな。僕は今が一番しあわせだと思うから。

 

 

お読みいただきありがとうございました。

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