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空色箱

ハガネブルーム

掲載日:2025/04/16

 巨木をぐるりと囲む金属製の階段。

 冴えた空気の中、重いブーツの音と共に登る。

 鉱石ランプの明かりが僕を感知して灯り、通り過ぎると消えていく。

 踊り場で足を止め、暗い街を見下ろす。

 まだ眠る街。もう1刻もすれば、白い煙が立ち上り始めるだろう。

 それまでに終わらせなきゃ。少し歩を速める。


 辿り着いたのは金属製の扉。

 周りを這う蒸気と電気のパイプはまだ冷たく静かだ。

「よっと……」

 重たい扉を開け放し、中へ。

 

 久しぶりの部屋は、少し埃っぽい。

 鍵穴に息を吹きかけ、鍵を差し込む。


 きりきり、きりきりきり……


 動かなくなるまで回したら、隣に並ぶボタンを撫で、設定を確認する。

「季節。気温。天候……」

 小気味よい音と共にONにすると、小さな真空管が連動して灯る。

 全て灯ったのを確認して、最後のスイッチを押した。


 かちゃり


 間髪入れずに「ぴん、ぴぴん」と何か弾けるような音がした。

 外に出ると、空の端が白み始めていて。

 ぴん。と弾ける音が頭上から降ってきた。

 それは、薄桃色の金属片が弾け開く音――花が、咲く音だ。

 1刻もすれば、この木は薄桃色に輝く花で満開になるだろう。


 ああ、春がきた。


 小さな春の音を聞きながら。

 僕は目覚めていく街を眺めていた。

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― 新着の感想 ―
空色杯選考通過おめでとうございます! 朝の清々しい空気とその中に響く擬音の表現がピッタリはまっていて素敵なファンタジーでした。 春を運んでいるような物語素敵でした。
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