羽がない天子
白く細い足が
空の上でぶらぶら舞っていた
僕はそれが
あの子の暇つぶしで在ることを知っている
雲の波が海を思わせるその時
面影に隠れて見ていた僕の姿に
あの子は気付いたようで
舞が止まり
擦って出来た瞳の中の傷が
螺旋をうねれせて
こちらを見つめている
澄んだ月が
もう誰にも見れないように
中空という空と空の微妙な位置に腰を下ろす
まだ空は太陽が表立っているから
見えるとはいっても
薄らとあるだけ
紙に透かした程度の厚
かつてはあそこに天使がいたのだろうか
あれこれ考えても
今はあの子がいる
数日間で書きためたスケッチにもありのまま
白く細い足が
空の上でぶらぶら舞っていた
僕はそれが
あの子の暇つぶしで在ることを知っている