第四話 想う
現在オーレルはヴァニエ王国内に居るわけだが夜になると色々と問題が出てくる。狼などの野生動物はその最たる例だろう。
今回は居なかったが。
「甘くて美味しい」
オーレルは道を外れて森に入り、適当にベリーを摘んできた。この国ではよくとれる青いベリーから少し貴重な黄色いベリーもある。取ってきた場所にはまだまだベリーがある、食料にはしばらくは困らないだろう。
「飯はどうにかなるけど、問題は帰れないことだよなぁ……早くどっかに行ってくれないかな」
甘酸っぱいベリーを食べながら、道を塞いでいるシビル兵に視線を向ける。彼等は何処にも行こうとせず、焚き火を囲んで食事をとっていた。
きっと夜も交代でここにいるつもりだろう。
「そういやヒルッカが作ってくれたジャム、あれにもこれが使われてたんだったな。いつも甘ったれてばかりだったし、ここのベリーを摘んで帰ったら、ヒルッカも少しは喜んでくれるかな?」
オーレルは夜明けを永遠に繰り返しているような空を見上げ……
「また、食いたいな」
ぽつりと、そう漏らした。
窓の外に見える空を眺めながら、ヒルッカは火にかけた鍋をかき混ぜていた。鍋の中身は青いベリー、奇しくもオーレルが現在食べているものと同じだった。
「これだけあれば、沢山食べるオーレルでも満足するよね」
ヴァニエでは少し森に入るだけでベリーが大量にとれる。秋ごろになると雪が積もるこの国ではこうしてベリーをジャムや蜂蜜漬けにして保存食にするのが一般的だ。
「もうすぐ寝る時間かな。いっつもオーレルにあわせて動いてたから、なんか調子狂うな」
オーレルの両親は5歳の時に流行り病で亡くなりそれ以来ヒルッカの家に引き取られ一緒に暮らしていた、オーレルが一人立ちしてからもヒルッカは手助けをしていたのだがその時の癖が抜けない。
出来の悪い弟のようなオーレル、だが優しい面も沢山あった、一度森の中で狼に襲われた時には身を挺してヒルッカを助けてくれたりもした。
「帰ってきてね、オーレル」
オーレルも見ているであろう白夜の空を窓から眺めつつ、ヒルッカはベッドに横になり眠りについた。