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第二十七話 帰路

 オーレルが戦場となっていたケリ川へたどり着くと、もはや勝利は決定していた。血で赤く染まった川の中ではヴァニエ人達が喜びで抱き合い。勝利に酔う。


 シビル兵達は既に僅かな生き残りを連れて去っていったあとだった。


「ヴァニエの勝利だ!! はっはっはっはっは!!」


「ざまぁみやがれシビルの糞野郎共が!」


 遅れてやってきたオーレル達は完全に蚊帳の外。事態が呑み込めていなかった。


「な、なぁオーレル。勝ったのか? 俺達が」


「あたしたち帰れるの?」


 後ろにいる村人達が嬉しそうな声をあげるのを聞いて、オーレルもようやく肩の力が抜けた。適当に血のついた斧を捨てながら、その場にへたり込む。


「お、おいオーレル、大丈夫か?」


「ああ、大丈夫だよ。力が抜けただけさ」


 ようやく戦いが終わった。その事をオーレルは喜んでいたのだが、それだけではない。


 ──いっぱい殺した。生き残るためだけど、いっぱい。けどもうこれから先は人なんて殺さなくていいんだな。


 気がつくとオーレルは黙って泣いていた。いろんな感情がごちゃ混ぜになっていた。


「帰ろう。村に帰るんだ。皆が待ってる」


 肩を貸してくれる村人達にそう言い、カウス村へと帰ろうとした、その時だった。木陰からシビル兵の生き残りが短剣片手に突っ込んできたのだ。


「死ねヴァニエ人!! 豚のように!」


 狙いはオーレル、シビル兵からしてみればもう誰でもよかったのだろう。真っ直ぐに迷いなく突っ込んできた。


 もう避けるのさえ間に合わない。せっかく生き残ったのにこんなことで死ぬのかと諦めかけた時だった。


「ぐっ……がっ……」


 何処かから飛来した矢がシビル兵の首に突き刺さったのだ。


「何処から」


 助けてくれた人を探そうと、オーレルは矢の飛んできた方向へと目を向け、そこで言葉を失った。


「よう、感動の再会にはちょっと時間が足りなかったか?」


 聞きなれた声と共に、弓を持った男がオーレル達の目の前に現れる。


 人懐っこい笑みを浮かべたアルヴィの姿がそこにはあった。


「アルヴィなのか?」


「他の誰に見えるってんだ? 安心しろ他の奴らも無事だ。あとで運ぶのを手伝ってもらうぞ。俺の作戦のお陰でどうにかなったな」


 誇らしげな表情を浮かべるアルヴィにオーレルは飛び付いた。


「おー痛い痛い、やめろよまだ傷が痛むし熱もあるんだ。そっとしてくれ」


「馬鹿野郎が、死んだと思ってたぞクソ!」


「ハッハ、俺が死ぬか。さて帰ろうや、おまえの村とやらにな。おまえの嫁さんを紹介してくれ」


 こうして、オーレル達は帰路についた。

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