第二十六話 決着
オーレル達に向かって、シビル兵達は襲いかかった。だが彼等も録な武器を持っておらず、手に丸太や先の折れた槍が握られているのみ。
オーレル達にも勝機があった。
「全員でかかるんだ! 勇気をふりしぼれ!」
両手で斧を握りしめ、後ろに振りかぶり、向かってきたシビル兵めがけて振り抜く。他のシビル兵に対しても、村人たちは勇敢に向かっていった。
もはや勢いの消え失せたシビル軍は撤退しつつあり、彼等も撤退するほうが生き残れる分良さそうなものだが、戦うのを止められない。
「俺達はシビル軍の正規兵だ! ここで戦わなくちゃどうにもならないんだ! お前等命がけで戦え!! 後は無いぞ!」
意地、なのだろう。
オーレルと対峙するシビル兵は下唇を噛みしめながら手にした木の棒を振り回してきた。
「がはっ」
腹に一撃貰ったオーレルはたまらず後ずさる。シビル兵はその後も攻撃の手を緩めることは無かった。何度も何度もオーレルの頭や肩を殴りつける、そして殴るたびに地面には真新しい血が飛び、オーレルの意識も遠のきそうになる。
「お前等に分かるか!? 突然こんな! クソッタレな場所に! クソみたいな大公の! 一声で連れてこられて! くだらねぇ殺し合いさせられてる! どこもかしこもクソまみれだ!」
殴りつけるシビル兵に、オーレルも反撃した。
「そんなに嫌ならやめちまえ!」
木の棒を頭に受けながらオーレルは手にした斧をシビル兵の首に叩き込んで黙らせた。
「攻めに来てこともあろうに敵にそんなことほざいてんじゃねぇこの侵略者共が! お前等のお陰で何人死んだと思ってるんだ! なんの罪もない農民まで手にかけたくせしやがって!」
たまらず倒れ込んだシビル兵の頭に再度一撃、兜もろとも叩き割って止めをさした。
「オーレル左だ!」
一緒に戦っていた村人の1人がそう叫んできた。
「くたばれ! 死ね! あの世に行け! このベリー中毒のクソ共が!」
血まみれのシビル兵が村人を殺そうと全力で殴打している最中だった。オーレルはシビル兵の後ろから忍び寄ると兜の無い頭目掛けて斧を振り下ろした。
「た、助かった」
「次だ! 数はこっちの方がもう多いんだ! 複数人で囲んで一気に殴りまくれ!」
安堵する間もなく、オーレルは周りで戦う村人にそう命令した。
1人を3人で囲み、背中から殴りつけ怯んだところを全員で殴りつけて止めを刺していく。
「倒したら執着するな! 次に移れ! 多少息があったとしてもどうせ死ぬ!」
「次はあいつだ殺せ!」
最後の1人は背中を見せて逃げ帰ろうとしていたが、オーレルが投げた斧でその場に倒れ伏した。
「かかれ!」
村人たちはそこらで拾ったような石で殴りつけていた。シビル兵もすぐには死ねず、何度も何度も殴打されることになった。
こうして最後の1人が倒された後、オーレル達の周囲は静寂に包まれた。




