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第二十二話 嘆き

 オーレルが到着した時、ケリ川は地獄のような状態だった。


「かかってこい! 全員まとめてあの世に送ってやる!」


「このカマ野郎共が! くたばれ!」


 あるヴァニエ兵は罵声を浴びせながらシビル兵に馬乗りになり、何度も何度も折れた短剣を首に刺し続けていた。またあるヴァニエ兵は背中に斧を叩き込まれ、それが折れて無くなるとシビル兵は被っていた兜で殴り付けている。


「お前は絶対に中に入るなよ! 生きて帰れんぞ!」


 敵味方入り乱れての混戦になった結果、もはや敵も味方も関係ないとばかりに斬りつけてくる兵士も多かった。そんな中にオーレルが飛び込んでいけばまず生きては帰れないだろう。


 だからオーレルは絶対に戦場の真ん中には入ろうとせず、外側から背中を向けているシビル兵だけを狙った。


「おああっ!」


 ちょうどにらみ合いをしていたシビル兵が目の前にいた。一騎討ちの作法など頭にないオーレルはシビル兵の後ろに回り込むと、首筋に向かって斧を振り抜いた。


 残念ながら首は落ちなかったものの、それでも十分致命傷は与えられる。


 ──ああもう嫌だ! 帰ってくれよシビルの奴等も!


 赤い月が描かれた軍服を目印にオーレルは次々と斧で攻撃を加えていく。油断している者や背中に注意していないものはもれなく後ろからオーレルの斧が襲いかかる。


 だがオーレルも、もう殺しはしたくない。


「いい加減、故郷に帰れよ!! お前らだって待ってる家族がいるはずじゃないのか!? なんだってこんなところで人殺しなんてやってるんだよ馬鹿野郎共が!!」


 オーレルは矛盾していた。帰れと言うくせに斧を全力で振り抜いて、逃げようと背中を見せるシビル兵を後ろから襲う。意思とは裏腹に腕が動いた。


「まて! まてやめろ!」


 丁度オーレルの足元に倒れていたシビル兵がいた。


「くたばれ!!」


 シビル兵はまだ腰に剣を持っていた。だからオーレルも躊躇はしなかった。鎧に守られていない首筋に斧を何度も振りシビル兵が沈黙するまで斬りつけた。


 荒い息を整えながら、オーレルは一目散に敵の槍の届かない場所へと逃げる。そして逃げながらこんな言葉を聞いた。


「ヴァニエ兵よ聞け! 退け! 一旦退くんだ! シビル兵の別動隊がいたぞ、挟まれるぞ!」


 声の主はヴァニエ兵だった。彼はある一点を指差して大声で騒ぎ立てていた。


 オーレルがそちらに視線を送ると、オーレルが来た方向から旗を掲げて猛進してくるシビル兵の一団が目に映った。



 

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