第十七話 離別
一方のオーレル達だが、先へと進むにつれて戦場の気配がしてきた。そこかしこで怒号が聞こえ、慌てた様子のシビル兵がそこに向かって駆けていくのだ。
「このまま真っ直ぐいくとシビル兵とヴァニエ兵が小競り合いしてるところに突っ込んじまう。迂回しようぜ」
先に偵察に言っていた村人はこう報告した。もう既にヴァニエ軍の本隊がいると言われるケリ川へと辿りつける。そうすればオーレル達も助かるが残り僅かの距離がたまらなく遠い。
「しっかりとした休みを取らせてやりたいけど、キツいな」
「まぁな……」
後方には殆ど敵は居なくなっているが、問題は前方だった。かなりの数のシビル兵がオーレル達のこれから行く道に立ちふさがっていて。加えて残っていたヴァニエ兵との小競り合いも頻発している。
「なぁオーレル。俺たちを、怪我人を置いていってくれ」
「なんだって?」
オーレルが黒髪を掻いて悩んでいると、アルヴィが思いもよらない提案をしてきた。
「俺たちを置いていけば、ちっとは素早く動けるだろ?」
「馬鹿言え。置いていけるか。村の仲間なんだろ?」
正直、オーレルからしてみれば大助かりだった。現在いる村人のうち動けない怪我人は6名、洞窟の戦いでさらに負傷者が増えた状態だ。それらを気にしなくていいのなら、確かに移動は早くなる。
「一応言っとくがな。俺たちはくたばるつもりは一切ない。動けないなりに隠れてやり過ごすつもりだ」
「けどそれは……」
「やらせろよ。その代わりお前も約束してくれ。そいつ等を安全なところまでしっかり連れていってくれ」
言葉につまった。約束が果たせるか分からない。
「オーレル。やってくれ」
「いやそれは」
「やれっつってんだよこのタコ野郎が!」
アルヴィは声を荒げた。
「いいか? こいつらをお前に付いていかせるのはお前の護衛の為だけじゃない。というか本当の目的は安全な場所まで少しでも戦力揃えていかせるためだ。お前が拒否して、全員を危険に晒すってんなら今ここでお前の首に短剣を突き立てるぞ! ごっふごっふごっふ……げっほげっほ」
「アルヴィ……」
喋り終わったあと、アルヴィは派手に咳き込んだ。よく見れば身体が震えている。顔も赤く、熱もかなり出ているように見える。
「……いけ、少しでも多く助かる道を選べ」
「……分かった」
「いい子だ。坊や」




