file.6 なぜ、人はこの瞬間が好きなのか
前回のLostMemoryは、空の同級生の姉 美香さんが一週間前から失踪してしまった。そこで美香さんを見つけることに成功したが、空の両親をさらった大男と新たにメガネをかけた男も登場し、美香さんを見失ってしまった…
「さぁ、そのカジノのことを話してもらうぞ」桜木が取り調べ室で、違法カジノに行こうとしていた男性 富田さんに聞いていた。私はマジックミラー越しに拝見していた。「カジノの名前はカジノ"コロッセオ"大体は普通のカジノです。でも一つ変わったものがあって…」
「それは、そのカジノを仕切っているゲームマスターへ挑戦して勝てば大儲け、負ければその人にとっての一番の思い出を取られるっていう人生そのものを賭けたゲームがあるんです」「なにっ!?」桜木は机を叩きさらに問い詰めた「負けた後はどうなるんだ!」「負けたら…今までの生活には戻れず、薬漬けにされたように破産させられるまでカジノでギャンブルさせ続けられるんです」
「っ…!」桜木は声を失ってしまった。亮は驚きつつも「…まさか美香さんもそのゲームに挑戦して負けてしまったのか?」亮は急いでミラー越しの取り調べ室に入り、「カジノの場所とそのゲームはいつやるか教えてくれ!」
人気の少ない通りに数人立っており、何かを待っている様子を刑事の二宮、桜木が物陰から見ていた。時間が経つと一台のバスが不自然な位置で止まり、待っていた数人が乗ってどこかに去っていった。「本当にこれで良かったんですか?二宮さん」「彼を信じるしかないね」
バスは少し森に入った所で止まり皆が下車した。そこには案内人が立っており順に地下に続くある場所に連れていかれた。ドアを通り抜けるとそこは、ルーレット、スロットなどが並んでいて無数の人が嗜んでいた。ここが噂のカジノ"コロッセオ"だ。一人の男が何かを探すように歩いていた。ふと一人の女性の所で止まり声をかけた「兼山美香さんですよね?」声をかけられた女性は驚いた様子だ。ここで自分を知っている人なんていないと思ったからで、声をかけた人を見ると男性【亮】だった。「家族があなたを待っていますよ。ここを出ましょう?」「…家族?」
次の瞬間灯りが消え、一つスポットライトが当たり一人の男性が出てきた。どうやらここのゲームマスターのようだ。「今日もカジノ"コロッセオ"を楽しんでいただきありがとうございます!さて、コロッセオ名物の私との人生を賭けたゲーム、やりたいかたはいらっしゃいますか?」「はい!自分がやりたいです!」奥から中年の男性が手を挙げ立候補した。「わかりました。ではこちらへどうぞ」「あなたの好きなゲームはありますか?」ゲームマスターが中年男性に尋ね「ルーレットで」ルーレット台へ案内されゲームが始まった。ゲームマスターは金塊を中年男性は記憶を賭けた。何回かルーレットをし、「赤の29だ!」回った玉は黒の32に止まった。「なっ!」「外れましたね、これであなたの負けです」
「まっ待ってくれ!次だ!次には自分につきが来る!だから!」「負け犬は決まってそう言うんですよ」ゲームマスターは袖を捲りSDM型腕時計を操作し中年男性から記憶を抜き取った。(…この男の仕業だったか、地下にいては気づけないわけだ)
「では次に勝負をしたい人はいますか?」スッと一人手を挙げた「私がやります」「わかりました。では好きなゲームは?」「ブラックジャックで」
①ブラックジャックは親【ディーラー】と子【プレイヤー】に分かれる
②カードをシャッフルしお互いにカードを二枚配る。親はカード二枚の内、一枚表もう一枚を裏にする 子は二枚とも裏にして子がカードの数字が21を越えないようにカードを追加していく
③21を越えたらバースト【負け】になる。21を越えないように調整し、最後に親がカードを引き親より21に近ければ勝ちとなる
「では、賭けるものは私は金塊、あなたは思い出でよろしいですね?」「いや、お金は要らない。欲しいのはあなたが奪っていった記憶全てだ!」「…なるほど、良いでしょう。ですが、それではバランスが悪いですね。私が不利だ」目を閉じていた亮が深く息を吸って「なら、私の記憶全てを賭ける」会場全体がどよめいた。「良いでしょう、これでバランスが取れた。ですが、私には記憶全てを取れませんので、しばし時間が掛かりますが必ず全て記憶を貰いますよ?」亮がニヤリと笑い「フッ、勝ってから言え」
親【ゲームマスター】子【亮】になった。ゲームマスターがトランプを亮に渡し「5回勝負です。シャッフルは任せますよ、不正だの言われても不愉快ですからね。私は実力で勝つんです」亮は無言でシャッフルを始めた。ゲームマスターは亮のカード捌きをみて(こいつ、素人ではないな…)警戒をした。
ゲームが始まった。お互いにカードを配り、亮はカードを一枚ずつ要求し、数字を20でとめた。その後、ゲームマスターがカードを引き19で止まり亮の勝ちになった。「言うほどのことはありますね」
4回まで勝負が終わり2勝2敗であり、次で決まる。「ここまで私に競るプレイヤーはいませんでしたよ、やはり只者でありませんね?」「黙ってろ、次で最後だ」
お互いにカードを配り、ゲームマスターの二枚の内一枚はA、このカードは1と11になれる。亮は二枚めくり【クラブ3】【ハート5】で足して8である。もう一枚を要求し【スペード2】がでてこれで10になった。Aが出れば21になるが、ゲームマスターが持っている分とこれまでにでたAは三枚で残り一枚しかないが山札はまだたくさんある。ここからAを引く確率は極めて低い。中途半端な数字だと21には遠く及ばなく、親がバーストする可能性もあるがそれに賭けることはできない。なら、Aを引くしかない…亮の長考が続く
「どうしましたか?引くんですか?引かないんですか?あなたには誰も救えませんよ?」亮は少し救えないの言葉に引っ掛かりがあったが抑え込んだ。
ゲームマスターの揺さぶりが始まり勝負の世界ではこの揺さぶりにどれだけ耐えれるかが勝負の一つである。亮は走馬灯のように今までの育んだ思い出や美香さんと兼山家のことが頭によぎり、覚悟ができた。
カードを一枚要求した。カードをゆっくり亮はめくった。会場はどよめき、ゲームマスターは脂汗をかいた。カードは【スペードA】これで21ブラックジャックだ
賭け事はこの瞬間が一番身体から色んなものがでてくる…この多幸感!優越感!
「まっまだだ!まだ私のターンがある!」そう言ってゲームマスターがカードを捲ると【クラブ4】がでて合計15になった。「これで6を出せば延長に…」新たにカードを捲ると【ハート10】がでてバーストになった「なんだとっ!!」ゲームマスターは「次は!次は私に運がくる!」亮はカードを机に落とし「負け犬ってのはいつも、そう言うんだよ」ゲームマスターは悔し顔で睨み付けた。「もう負けは決まっている。あんたもこのカジノも」
「全員、動くな!」入り口から大量の警察がなだれ込んできた。「これから違法カジノを取り締まる!」二宮と桜木が警察官を率いてきたのだ。「ありがとう亮くんが発信器で、ここの場所を教えてくれたお陰だよ」「いえいえ、早くゲームマスターも…」ゲームマスターがいる方を向くと誰もいなく逃げられてしまった。「逃がすか!」亮と二宮が追いかけた。
「はぁ!はぁ!捕まってたまるか!」ゲームマスターが逃げまどうが、走り二人がゲームマスターに追いつき捕えた。「なぜ、SDMを使ってカジノをやっている!」亮が問い詰めると、「はっ!人間ってのは、簡単に稼ぐことばかり考える。だから、貧乏人で金が欲しそうな奴を勧誘し最初の方だけわざと勝たせた。それで、調子に乗ったところで地獄のどん底に叩き落とす!!それで、負けを返そうと意地になる!負けた時の顔と家族や一番の記憶を抜かれる時の悔しそうな顔を見ると堪らなく興奮するんだよ!!はぁーっはっはっ!!」「貴様っ!」二宮が「午後15時33分現行犯で逮捕する」手錠をかけた。亮は怒りで殴りそうにる感情を抑え、SDM型腕時計を手首から外し、リューズを逆回転させ抜き取った記憶を全てを元通りにした。
ゲームマスター他従業員達、客をパトカーに乗せ去るところを最後まで亮は見届けた。自分も帰ろうとした時「また、家族がいなくなってしまったか」大男が立っていたのだ。「また襲いにきたのか」亮の問いに「いや、そのつもりだったが、さっきの勝負映像で観ていたぞ。それと、おれを目の前にして恐れないその男気に免じて今回はいい。」「それと、どこかで見たことがあると思ったが、確か一年くらい前におれに挑んできた奴だったな…いい目をしている 名前は?」その大男はどこか清々しい顔で私を見つめてくる。「名探偵の杉山亮だ」「そうか、覚えたぞ おれの名前はギフト!俺達サルガタナスに楯突くなら立ち塞がる壁だ!…覚えておけ」
そう言って、振り返り立ち去ろうとし一度立ち止まった「それと、いいことを教えてやろう」「??」
「俺達を意識しすぎないことだな、いつか足元をすくわれることになる」そう言いギフトは歩を進めた。どういうことだ!?だが、これで少しサルガタナスに近づくことができた!必ず突き止めてやる!
事件は解決した。今回の犯人は自分の脳汁を出したいがための動機であった。だが、今まで記憶を抜かれていた人達は本来の生活に戻ることができた。美香さんも記憶が戻り家族のもとに帰った。やはり家族の記憶を抜かれておりそれで、家に帰ることがなかったのだ。これで、兼山家に平和が訪れた。「杉山さん!ありがとうございました!これ受け取ってください」そう言い封筒に入ったお金を渡されたが、「頂きたいところですが、要りません」近くにいた幸太が飲んでいたコーヒーを吹き「はぁ!?」
「ですが、受け取らない変わりに駿くん!空と友達になって欲しい。仲良くしてやってくれないか?」「うん!わかった!」そう言って近くにいた空と一緒にどこかに遊びに出掛けた。驚いていた幸太であったが、理由を聞き「まったく…」と苦笑いをして了承した。
「空くん!こっちおいで!」空はコクンと頷き二人で走り出した。
ありがとうございました
亮がギャンブルに強いっていうことが解りましたね、過去に何かあったのでしょうか?
空にも友達ができ、謎の大男 ギフトと名乗る男もでてきました!これからが楽しみですね!