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film.3 なぜ、あの子は言葉を失くしてしまったのか

 前回のLostMemoryは、生徒達の記憶を抜いた犯人を捕まえることができ、依頼された陸上部の少年の友達の記憶を取り戻すことができた。


 喫茶店NeverStartは、休日も開店している。

平日も休日も関係なく来店してくれる常連客がいて毎度助かっている。本業の稼ぎが振るわないからね

チリチリーン 店のドアが開いた「いらっしゃいませ」

「おっす、亮!収支はどうだ?」そう言って、幸太がやって来た。「おはよう、開口一番の言葉がお金か…がめついなー順調だよ」ため息混じりに答えると、「しゃーないだろ、誰のせいだと思ってるんだよ」あきれながら返されてしまい、正論なのでなにも言い返せない。幸太がカウンター席に座り店全体を見回した「みんな常連の人?」

「全員ではないが大体がそうだよ。固定されてきてるね」フーンと幸太は一人一人の顔を見ながら返事しているように見えた。「亮にとって大切なお客さんって訳だな」

「なんだそれ?まあ、そうだな」変わったことを言うなと不思議がっていたがガタンっ!今度は店の奥のドアが開いた。「起きたかおはよう、空」ドアには小さい少年 空が立っていた。空はコクンと首を下に向けて返した。

「空!おはよー!」幸太が続けて挨拶すると空は目を反らし反応しなかった。「こら空、反応くらいしてあげなさい」「まあまあ、いいよ別にこんなオジさんに懐くわけないよ」幸太は笑いながら話した。

 

 空は言葉が話せない。いや、正確には話せなくなってしまった、と言うべきか。

 今から一年ほど前のことだ、私は探偵の依頼を受けていてその情報集めをしていた時、空はまだ小学生一年生の時だ。「うわーん!お父さん!お母さん!」と泣く声が聞こえその場所まで向かった。そこには一人で泣きじゃくっていた空がいた。どんな状況なのか私は理解できずに「君!どうしたんだ?お母さんたちは?どこにいるんだ?」と尋ねたが、「急にお父さんとお母さんが僕のこと知らない子だって言って居なくなっちゃった!」

「なに!?」どういうことだ?とりあえず両親に事情を聴かないとな…「お家はどこだい?」そこから空をなだめて一緒に住んでいた家に向かうと二人はおらず、街を探した。「お父さん、お母さんどこにもいない…」空がまた泣きそうになっていた。「大丈夫だ!オジさんが探して送り届けるよ、何たって名探偵の杉山亮だからね!」

そう言い、捜索を続けたが私は重大なミスを犯してしまった…

 色々と街の中を探していると、「あ!お父さん!お母さんだ!」と空が笑顔になりその方向をみると男女二人が歩いていた。空が一足早くその二人のもとへ向かい、「お父さん、お母さん!なにしてたの?」と二人を呼び止めたが、二人は振り返り冷たい目で「だれ?あなた…私達に子どもなんていないわよ、どこかに行きなさい」なんて冷たい目なんだ!空をみると「なんでそんなこと言うの?」澄んだ瞳から大粒の涙がこぼれていた。急いで空のもとへ向かい「大丈夫か?あなた達!実の子どもになんてことを!!」怒りを露にし二人のいる方向に目を向け追いつこうとすると、一台の車が二人と私の間に割って入ってきた。

 その車から、一人の男性が降りてきた。大柄で黒いコートを着た男であった。「何ですかあなたは!そこをどいてください!あの二人に用があるんです!」亮は声を荒げたが逆にその大男は冷静な口調で「それはできない相談だ、これからこの二人はオレの家族になるんだ。邪魔をしないでくれ」

「家族だと!?ふざけたことを!」亮は空のために雰囲気で勝てないとわかっているはずの大男に立ち向かったが、頬に一撃殴られ地面に倒れた。その後空の両親と大男は車に乗り姿をくらましてしまった。

 私が次に目を開けたのは市内の病院だった。「起きたか!亮!心配したぞ!」声のする方に向くと幸太が安堵の顔で立っていて、その奥には空がいた。「私は大丈夫だ、だがあの子は…」亮はベッドから上半身を起こし空の方向をみた。

幸太は「この子か?なぜか救急車に乗る前からずっといたらしいが知り合いか?」「ああ…ちょっとな」

「なあ、空くんきっとご両親は悪い人に騙されているんだよ、だから落ち込まないで!それまでオジさんと一緒にいないか?悪いやつを捕まえて、必ず送り届けてみせるよ!約束したもんな?」痛む頬を無視し満面の笑みで空に笑いかけた。空はコクンと首を下に動かし、そこから二人で暮らす日々が始まったんだ。

 だが、幼い子どもの心には相当ショックであり、初めて会った日以降空の言葉を聞いていないし笑顔もなくなってしまった…精神的苦痛により声を出せなくなってしまっていたんだ。それから、いなくなった日のことを思い出したかのように、夜に「わぁーー!わぁーー!」フラッシュバックして発狂してしまうことも少なくない。私にはただ一緒にいることしかできない。一刻も早く空をご両親の元へ送り届けなければ…でもあの状態のままなら逆効果になってしまう…原因は間違いなくあの大男だ!必ず見つけ出してやる!

 あの日以降、ご両親と大男の情報を掴もうと聞きこみをしているが、全くと言っていいほど手掛かりがないまま今に至る。空とは会話のキャッチボールは出来ないが、首を下に動かすか横に振るかで返事はしてくれる。信頼はしてくれていると思うが、本当の家族ではない私にはやはりどこか壁を感じてしまう…仕方のないことだが、これから形成していけばいい。


 午後になり喫茶店を閉め、二階の事務所に向かうと、ドアの前に一人の男性が立っていた。「ご依頼ですか?」亮が尋ねてると「はい!そうなんです!探している人がいるんです!」とりあえず、事務所に入り先に案内した。男性は首から提げていたカメラを机に置いた。「それで、どんなご依頼でしょうか?」依頼人はカバンから新聞紙を取り出しある見出しを見せてきた。

「今、連日で火災が起きていること知っていますか?」

と聞かれ、「はい、確かこの前常連さんが話していたな…この近くでもあった気が…」

「そうなんです、不自然に何度も起きているんです!しかもこの写真を撮ったのは…自分の同僚なんです」

「それが?」___


 依頼の内容はこうだ、依頼人の樋田充さんは普段記者をしている。この辺りの地域を中心に写真を撮ったりしていた。その仕事を同僚の早川健介さんと一緒に頑張っていたそうだが、急に早川さんが一人で仕事をするようになった。そのタイミングで連続火災事件が起こりその写真提供は全て早川さんのものであった。樋田さんは不審がり早川さんに聞くと、「お前には関係のないことだ、おれは今のままじゃいけないんだ…」と言いそれから会っていないのだという。「お願いします!なんかに取り憑かれたような感じになっていて…あいつを助けたいんです早川を見つけてください!」

樋田さんは深々に頭を下げて「わかりました、この名探偵杉山亮が必ず見つけてみます。」そこから早川さんの経歴や趣味、嗜好を調べ実際にあった火災事件の場所を訪れた。「やあ、二宮さん桜木くん今日は無理なこと言ってすまないね」火災現場で片手を上げ亮は二人を出迎えた。「いやいや、毎度お世話になっているからね」「でも、この火災はなぜ知りたいんですか?これは人為的ではないと鑑識から報告を受けていますが…もしや犯人がいるのですか?」二宮が亮に尋ねた。「鋭いですね、ですがまだわかりませんし犯人を探しているわけではないんです。それとは別の用件の依頼がありまして」

二宮に返事をしたあと亮は「え、この火災はどれも人為的ではないのですか?」 「そうなんですよ、実はおれもおかしいなと思ってるんですが、火災現場の周囲の証言やどれだけ調べても故意的に発火した形跡がないんすよ。だから、ただの火の不始末ってことに」桜木が口を開く。

(これが故意的にでなければもっとおかしいな…早川さんはいつ起こるかわからない火事をどうやって写真に収めることができたんだ…)



 

今回は少し空についてスポットを当ててみました。

空の過去にはなにか、怪しげな雰囲気がありましたね

大男とはなんなのか…

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