file.Sequel 死なせてしまった後悔を背負う 後編
あれから、何度同じ時間を繰り返したのだろう。亮はあらゆる方法を試しほのかと空が死なないように奔走したが、必ずどちからが死んでしまう結果になる。それに、繰り返される度に被害が増えていき、二人だけに留まらず市民にも死者が出てきている。亮はこの時間の繰り返しは小田切が関与していると仮説を立て監視をしていたが何もなく、事故に巻き込まれてしまうパターンもあった。亮は誰かが死ぬ度に事務所に戻り続けて悔しさとやるせなさがつのっていく。
今回は一人で現場へ向かうことにした亮は街を走っていた。その時、「なんだ、マラソンでも走るつもりか?」目の前にはギフトとジーンがいた。「ギフト…ジーン!お前達なのかこのループの原因は!」「間接的にはな、だがこの現象には関わっていない」「なに!?」「今開発中の試作品があってな、おそらくそれが原因だろう」「試作品?」「ああ、一週間前にお前達が押収しただろう?」「まさか!小田切さんが持っていた…」「だが、なぜか紛失している。その試作品は人の思いに強く反応し作用するようになっている。しかし試作品だからかまだ安定はしていない」「どういうことだ?」「今までのループを見ていると、誰かが死ぬ度に戻る。ということは死ぬことになにか強い思いがある。それに作用して安定しないこともあり時間を巻き戻してしまうのだろう」「抜け出す方法は?」「試作品を破壊するか、その強い思いを持つ人物を殺せば終わる」「いいんですか!ギフト、邪魔者探偵にそこまで教えて」「いいんだ、我々にも今の状況は都合があまりよくなくてな。ヒントは与えたり後は自分で辿り着くことだ、名探偵?」ギフトとジーンはそこから立ち去った。(今はギフトの言葉を信じるしかないのか…本当なら誰が持っている?それか…)
「時間の巻き戻しの起点はほのかか空が死ぬことが多い。それに強く反応するってことは…」亮は何かに気付き走り出した。「杉山さん、事務所に居なかったですね。今日はアポとったはずなんだけどな」「とりあえず三人で現場に行きましょう」二宮、西尾、小田切の三人は事務所を訪れたが亮がいなく先に現場へ行く事になった。
その頃、亮も現場へ向かっていると前にはほのかと空が歩いてきていた。「あ、お父さんだ!」「あれ?さっき電話して迎えに来たの?」「まぁ、そんなところだ」三人は歩行者通路で話していると、工事現場から鉄骨が落ちてきた。(ここだ!)亮は二人を押し飛ばし、その場から避難させた。「亮!」「じゃあな二人とも」(私の仮説が正しければ…) ガランガラン!鉄骨が亮の頭上へ落ち下敷きになってしまった。そこに、近くに通った二宮達が来た。「杉山さん!」
「お父さん!」「亮!」二人は亮を助けようと鉄骨を退かそうとしていた。(これでいいんだ…時間が繰り返されるのは私が二人に死んでほしくないと思う気持ちのせいだったんだ。これでもうループはない)亮はゆっくり目を閉じた。
カチッカチッカチッ
ブーブーブー 亮は目を開けた。周りを見渡すとそこは探偵事務所であった。「え?なぜ…」(この時間の繰り返しからは抜け出せないのか?)
コンコン、探偵事務所の玄関のドアが開いた。そこには二宮、小田切がいた。「あれ?西尾さんは?」「西尾さんは何か思い詰めた表情でいなくなってしまいました」「いなくなった?どこへ?」「それがわからなくて…」「まさか…そう言うことか」亮が何かに気づいた。「亮さん?」「二宮さん、連れていって欲しいところがあるんです」「え?」
亮、二宮、小田切を乗せた車が向かったのは街外れにある展望台であった。屋上へ行くと西尾がベンチに座り空を見上げていた。「西尾さん、やはりここにいましたか」「亮さん、これはどういうことですか?」意味が分からず二宮は亮に尋ねた。「時間の繰り返しは誰も死なせないことにありました。その原因は私のほのかと空を死なせたくないという強い気持ちだと思っていました」「え?なんの話を…」二宮が話についていけていなかった。「この時間の繰り返しの原因は西尾さんにありました」「え?」
すると西尾は、「俺は警察官になり色んな事件を経験してきた。殺人、窃盗、立てこもり…人が死ぬところも何度も目の前で見てきた。もうそれには慣れっこだと勘違いしていた…まさか、俺が人の死にこんなにも繊細だったとはな」「小田切さんを死なせてしまったことを…」「そうだ」「え?私が?死んだ?」小田切は身に覚えのない話に戸惑っていた。「小田切の死の悲しみから立ち直ろうと何度もした。だが、全然だめだった。そんな時、小田切が最後に持っていたこのサルガタナスの押収品を見て、つい盗んでしまった。これにはなにか小田切の思いが詰まっているように感じたんだ」「でもまさか、そのせいで時間が繰り返すとは思わなかった」「気づいていたんですね」「ああ、最初は気のせいだと思ったが何度も起こりこれは現実だと、おそらくこれのせいだとも…」「じゃあなぜ…」「これがあれば…小田切が生きている…死ぬことなくずっといる…!俺はどうしたらいい?」「それは…」亮は師匠であった、先代の杉山亮を目の前で亡くしてしまい西尾が今感じている葛藤に共感をしていた。「小田切は生きていて欲しい。だけど、他の人も死んで欲しくない…誰も死なせたくない。俺は近くにいる人の闇に気づかず、目の前で小田切を死なせてしまった。死なせてしまった後悔は消えないんだ…」亮は手を強く握りしめ西尾に自分の気持ちを伝えた。「西尾さん、確かに誰かを死なせたくないという気持ちは痛いほど分かります…でも…このままではいけない。生きている者は死んでしまった人達の分まで背負って生きる義務があります。だがら…」亮は西尾を見つめ、目から溢れそうな涙をこらえた。そんな亮に西尾は、「やはりそうですよね…前進しなければいけないですよね…このループから抜け出すには?」「その試作品を破壊すれば…」「なら、話は早いですね…」西尾は立ち上がり、拳銃を取り出し試作品に銃口を向けた。
「先輩?」小田切の声が聞こえ横目で見た。「この時間は俺が生んだ幻なんだ小田切。すまない…二度目のお別れだ」西尾も涙が出そうになったが、抑え笑った。ドンッ! 一発の発砲音が響き、亮の視界が真っ暗になった。
ブーブーブー 携帯のバイブ音で起きた亮の目頭には涙がついていた。「あれ?なんで涙が…」携帯を取り電話に出た。「もしもし?」「もしもし?じゃないわよ!今どにいるの?待ち合わせ時間過ぎているんだけど?」「え?あ!ごめん!すぐに行く!」亮が慌てて準備し事務所から出ていった。電子カレンダーの日付は20XX年7月18日10時であった。
車に乗っている二宮と西尾が亮が慌てて走っているところを見かけ、「なんであんなに慌ててるんだろう?」「さあ?寝坊じゃない?俺たちも現場に遅れないようにしないとな」「ああ」
「ヤバいヤバい!ほのかに怒られるー!」
ありがとうございました。
自分にとって大事な人が死ぬことはとても辛いですよね…このLostMemoryでは、人の死を何度も書いておりますが、亡くなった後の残された人達はどう生きるのか…それは誰にもわからないです。