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file.2 なぜ、彼は走り続けるのか

 前回のLostMemoryは、鴨市で探偵をしている亮とその相棒幸太に一人の依頼人が来た。ケガをした自分の分まで走ると言ってくれた友達が約束を破った理由を知りたい。と言うものだ


 翌日の午前8時、店の外の道は駅まで一直線の位置にあり、この時間はそこに向かうサラリーマンや学生等が歩いている。時間帯的にちょうど朝日が喫茶店NeverStartの大きな窓に入り心地よい温もりを感じられる。店内には職場が近くにあるのだろうかサラリーマンも何人かと定年して早起きをしているご高齢の方が大半いる。モーニングのオススメメニューは、ブレンドコーヒーと小倉トースト。基本追加注文はないため、注文したあとは新聞を読んでいるか、世間話をしているかが多い。

「見て見てこの新聞の写真、少し離れた場所で火事が起こったんですって!恐いわね~」常連客の世間話で最近のニュースを知ることが多い。暇なときは小説を読んだり、探偵の極意の本を読んだりして自分の感性を高めている。

 だが、今日は違う。昨日沖野くんが依頼した友達の件について考えていた。実は約束をただ破っただけ、にしては大会に出場すらしていないのは大胆すぎる、聞くだけなら二人は二人三脚でここまで頑張ってきたのであろうに感じられる。まだ会っていない秋山くんの解像度を想像で上げていたら正午になってしまった。ポッポー正午のチャイムが鳴った。

「ん?もう昼か、もう少しで閉店だな」

店を閉店させ自分も昼食を食べ身支度を整える。時間が経ち歩いて学校に向かう。光沢学園高校は学業部活共に力を入れており優秀な学校らしい。

午後16時30分学校も放課後になり帰宅する生徒達も出てきた。「まずは聴きこみからかな」そこから何人かの生徒に色々聞いてまわった。

 その後、学校の校庭の方面から掛け声が聞こえ進んでみる。この年齢になってから分かるが、ここまで一生懸命に頑張れるのは若いうちだけかもしれないと。「青春だな~」見えた先には目的の陸上部があった。陸上部は走るだけではなくいくつかの種目にわかれて練習していた。「秋山くんはどこかなー?」辺りを見回していると一人近づいてきた。学校関係者じゃない人が学校の中見ていたらそりゃ不審者だよなと思ったが、「探偵さん?」沖野くんだった。ケガしているので見学をしているのだという。

 「秋山ですよねあそこにいますよ、青いジャージを着ている」指を指した方向に視線を素直に向けるといた。学校の外周をひたすら走っており、声をかけても止まってもらえないほどに集中していた。真面目に練習をしており理由もなく約束を破るようにはみえない。ただひたすら走っていた。

午後18時夕日も出たくらいに練習が終わり、私は秋山くんに話を聞きに行った。

「君、秋山くんだよね?少し話を聞いても良いかな?」

「誰っすか?」警戒した様子で返答され、明らかに不審者を見る目であった。至極当然の反応である間違っていないよ。事情を話して何とか警戒は解けた少しだけ

「沖野にも言われましたけど、そんな約束した覚えないんすよ。でも…」

少し声色が変わり「でも不思議なんすよ、大事な大会のことも忘れてて後でいろんな人に怒られたし…まじでそこら辺の記憶が曖昧っていうかぬけてると言うかなんか大事なことを忘れているっていうか…だから無我夢中で走ってるんすよ」両手で頭をわしゃわしゃさせて頑張って思い出そうとしており、その姿をみて私は秋山くんは嘘をついていない本当に記憶がなくなっているのだと確信できた。

「秋山くん少し首の後ろ、見せてもらえないかな?」「え?」困惑しながらも秋山くんは髪の毛を上げ首の後ろを見せた。別にうなじフェチではない"あれ"の特性が現れるのが首の後ろというだけだ。

「ありがとう。練習頑張って!またお話を聞くかもしれない」

 翌日の午前、いつものように常連客がいるNeverStartに、その店内の雰囲気に合わない奇抜な服装の人物が一人来店した。「おっはよー亮ちゃん」陽気な声でカウンターに座り「コーヒーね」

「おはよう、とっちゃん頼んでいたものはどうかな?」

「もうその話かよー!もうちょっとなんていうの?世間話しようよ、まあいいけどさ」この男は通称"とっちゃん"情報屋である。近所のおばちゃん以上のの情報網を持っておりよく調査してもらっている協力者だ。

「光沢学園高校の噂話でしょ?全体的にみれば普通の優秀学校だよ、ある一つを除いてね」「あるひとつ?とは?」耳を寄越せと言わんばかりのジェスチャーをしてそれに従い耳を近づけると、「今回みたいに大会を理由なく休んだって子が何人かいるんだよ確かな情報さ、それに学校の近くを不審者がいたって話さ」

(…私じゃないよな)とっちゃんから目を反らし考えたが、大丈夫大丈夫昨日のことだし不審者認定はまだ早い!と自身に言い聞かせた。昨日の自分の行動を振り返る途中でふと思い出した。「あ、そういえば昨日…なんか怪しい人影を見たな…自分の不審者ぶりに困惑してて聞きこみで仕入れた情報忘れてた」

 「うわっははっはー!」高笑いする声が探偵事務所に響いた。現在は午後14時とっちゃんの情報を聞き昼になると幸太が来てこの話をしたらこの高笑いだ

「うっうん!」咳払いをし切り替えた。「今までの情報をまとめると、今回の事件は若き二人の喧嘩などではなく"奴ら"が関わっている可能性が高い。」

「"奴ら"?あーえーサルサなんとかだっけ?」

「サルガタナスだ記憶を奪う怪物の名前を関した組織のことだ。奴らは人々に"SDM型腕時計"を売り記憶を奪っていくんだ。」

「あー、そうだったなーてか、もう記憶を抜かれたら戻らないんじゃねーの?」

「いや、記憶を抜くのに使った"SDM型腕時計"のリューズ、秒針を動かす部分を逆回転させれば基本は失った記憶は戻るようになっている。」

「やたら、詳しいな?」

「昔に関わったことがあってね、そこで学んだんだよ」

状況的にはサルガタナスが関わっているのは確実だが、なんの目的でこのようなことをしているかはまだ不明である。「とりあえず、その不審者について調べてみよう」

 数日後、学校近くで怪しげに校内を物色している人物がいた。「あなたですね、記憶を抜く不審者とは」

不審人物が驚いたように振り返ると三人立っていた。一人はthe探偵の風貌とは二人はスーツを着て手帳をみせてきた警察だった。「ここ数日の聞きこみと行動パターンを予測した甲斐がありました。あなたはこの近くに住んでいますよね?不審者を目撃されるのはこの高校の運動部の大会が近くなる時期です。理由はわかりませんが、その手首につけた腕時計を使い生徒達から記憶を奪っていますよね?その腕時計の毒牙にかかった者には決まって首の後ろに十字の傷がありました。違いますか?」

「どうなんだ!さっさと言え!」熱血漢な男刑事の桜木が問い詰めた「急に怒鳴るなよ耳が痛てーよ」もう一人の男刑事の二宮が制した。「まあ、状況証拠とか出てきてるし変に抵抗すると後々面倒だからさ、ね?」

諦めたように不審者は口を開いた「ああ、おれだよこの学校の生徒から記憶を取ったのは。」

「理由は?」亮が続けて尋ねた

「イライラするんだよ希望のある人間を見ると。おれは学生時代はなんの取り柄もなくただ学校に通い、なんの目標もなく大学に行って適当に就職して…無気力に生きていたんだ。たまたまこの道を通りかかったら運動部の連中の声が聞こえて、あのキラキラした表情がおれの人生を否定されたように感じたんだ!そんなイライラしたおれに」 

 黒服にアタッシュケースを持ったセールスマンのような人物が、「スゴいですねその憎しみの篭った表情!そんな表情にさせた人から大事なものを奪ってみませんか?この腕時計を相手に向けてリューズを回転させるだけです。」

 「なんか、よくわかんないけど黒服にこの腕時計を売りつけられたんだよ。結構高くて断ったけど、その人にとって"大事な記憶"を奪うことができるなんて言われて、心を奪われて思わず買っちまったんだ…」

話していて自分が行った行為の愚かさを自覚したのだろう、膝から崩れ呆然としていた。

「まあ、署でもう少し詳しく話を聞こうかな」二宮が犯人の脇を持ったところで「あ、ちょっと待ってください。」亮が犯人の腕時計を手首から外しリューズを逆回転させた「これで、奪われた記憶は戻るでしょう」

その時バキンっ!腕時計が煙を上げ壊れてしまった

「あ!亮さん!大事な証拠品壊れちゃったじゃないですか!」桜木が思わず驚いた。「ごめんなさい、壊れるなんて思わなくて…」

「まあ、犯人も捕まえられたし壊れても何かわかるでしょう」二宮は私の行為を許してくれた。なんて心の広いんだ、隣とは大違いだ 「なんすか」桜木が睨んできたが「別に」とそっぽを向き、二宮桜木と犯人はパトカーの中に消えていった。


 これで事件は解決した。その旨を沖野くんに伝えると、さっき事務所を訪れお礼をしてくれた。無事秋山くんの記憶も戻り思い出したのだ、今は足のケガも治り次の大会のために今までのように一緒に走っているそうだ。他の生徒の記憶も元通りになり不可解な出来事に終止符を打つことができた。

 「はぁ!?依頼料貰ってない!?」「ああ、依頼人はまだ学生だそんな無粋なことはしないよ」

「タダ働きかよ!?この事務所潰す気かよ!?ええ!?」はっはっはっ小さい微笑みをかき消すように怒号が事務所に鳴り響いた。






読んでいただきありがとうございます

正直誰を犯人にしようかギリギリまで出てきませんでした。笑

書きながらどうしようどうしようとなり、なんとかひねってそれっぽくしました。

記憶がなくなるメカニズムを少しだけ明かしたくて、この話を作った感じでした。次回以降に期待してください。

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