file.Sequel 死なせてしまった後悔を背負う 前編
これは、Xtra Editionの後日譚です。この話を見る前に、
LostMemory ~あなたはどんな記憶をお探しですか?~ と、Xtra Editionの前編と後編をご覧になってください。
カチッカチッカチッ
ブーブーブー、「ん?寝てしまったか」杉山探偵事務所のデスクで顔を伏せ寝ていた亮が携帯のバイブ音で目を覚ましたのだ。電子カレンダーを見ると今日は、20XX年7月17日午前10時であった。「(あれ?昨日ここで寝落ちしてしたのか?なんか溜まっている仕事なんてあったっけ?)ふわぁ~」少し頭の中を整理してから自分が起きた原因の携帯を手に取り画面をみると、「ほのかから?何だろう」応答ボタンを押し耳に当てた。「もしもし、どうした?」まだ寝ぼけている声で電話にでた。すると、電話越しのほのかは少し呆れた声で「どうした?じゃないわよ…今何時だと思ってるの?とっくに待ち合わせ時間過ぎてるんだけど?」「待ち合わせ…?」「今日は亮は仕事が休みだから空くんと三人で一緒に出掛けようって話したじゃない」「そうだっけ?ごめん忘れてたっぽい」「はぁ~、じゃあいいわ空くんと行ってくるわ」「すまない」電話を終了しデスクに携帯を置いた。「出掛ける約束なんてしてたっけ?まだ頭がぼーっとしてのかな?疲れてるなー、帰ってきたらもう一度謝ろう」そう思い、亮はコーヒーをコップに淹れゆっくり口に近づけた。すると玄関からノック音が聞こえた。
「はい(今日は休みなんだけどな)」玄関が開くとそこには、刑事の二宮と西尾が入ってきた。「おはようございます。今日はどうされたんですか?」「おはようございますってあれ?忘れてるんですか?」「え?」豆鉄砲を撃たれたような顔になった亮に、「今日は捜査協力してもらっている事件の現場を見に行こうってアポ取ったじゃないでか」「あれ?そうでしたっけ?」「そうですよ?」「杉山さんも疲れてるんですね」二宮と西尾は亮の心配した。「すみません、すぐに準備しますね」亮はすぐに身支度を始めた。「お待たせしました」「では、下に車がありますので、それで向かいましょう」三人は探偵事務所から出て一階にある車に乗った。
「はぁ」亮が後部座席で溜め息をついたことを見逃さなかった西尾は、「どうされたんですか?杉山さん」「え?あぁすみません、今日は空とほのかで出かける約束だったらしいんですが、忘れていて…」「それはそれはお気の毒に…予定がブッキングでしたね」「そうなんです…それに失礼ですけど、二宮さん達との約束も記憶になくて…」亮は申し訳なさそうに二人に謝罪をした。「全然いいですよ、こちらが頼んだことですし。それにしても大分疲れてますね」「確かに。杉山さんは休養が必要ですよ。それにこれが終わったら空くん達になにか買ってあげないと」「ええ、そうします」亮は少し引っ掛かりを感じ西尾に尋ねた。「西尾さんももう休養はいいんですか?」「休養?僕がですか?ピンピンですよ!」今日は7月17日、ちょうど一週間前に西尾のバディの小田切が連続殺人事件の犯人で追い詰めた亮達の前で拳銃を使い自殺してしまったのだ。「(立ち直ったのか、元気そうでなによりだ)それならいいんですが…」「あぁ、忘れてましたけど、現場で小田切と合流することになってますので」「え!?」亮は狭い車内で大声をだし驚いてしまい二人がビックリしていることに気付き我に返った。コホンっ 咳払いを一つして仕切り直した。「小田切さんというのは…」「あれ?会ったことなかったでしたっけ?僕の後輩でバディです」「(やっぱりあの小田切さんだよな…でも小田切さんは…もう)そうなんですね」「現場で会ったら改めてご紹介しますね」「わかりました…」「あ、約束の記憶がないってことは今から行くところも覚えていないですか?」「そういえばそうですね…」「では、概要をお伝えしますね。思い出したら教えてください」「今回の事件は連続窃盗事件です。犯人の名前は小杉太郎(46)金品を盗み抵抗したものには容赦のない奴で、犯人の素性は分かっているんですが、何度も取り逃がしてしまい、お手上げなんです。それで杉山さんに助力を申し込んだというわけです。」「なるほど」亮は話を聞きながら窃盗事件の報告書に目を通していた。(うん、全く記憶がないな!もしかして、もう一人の私がいるのか?)亮は非現実的な妄想をして忘れたことを逃避していた。乗っていた車が急停止をした。「どうしました!?」助手席の二宮と後部座席の亮は運転手の西尾に聞いた。「見てください。反対側の路地を歩いている人物…もしかして今話していた小杉ではないですか?」西尾はそう言い指を指した。その方向をみるとフードを被り一目では分からなかったが、写真の人物と似ている箇所もあった。「車を降りて近づいてみましょう」「はい」三人は車から降りて怪しい人物に近づいた。その路地は人通りが多く隠れて尾行するには丁度良く距離を保ちつつゆっくりと近づいた。「どこに行くんでしょう?」「また犯行をするかもしれませんね…」三人はその人物に気を取られているところに、近くにいた子ども大きな声で、「すごーい!おじさん達けいさつのびこうしてるみたーい!」その声にビクッとなった三人と近くにいた人達が振り向いた。「そんなことしてないよ~」慌てながら訂正して、怪しい人物を見ると慌てた様子で走り去った。「あ!逃げた!」「やっぱり小杉だったか!」三人は混みあう通りをすり抜け、小杉を追いかけた。「まて!小杉!」「ちっ!警察か!」
三人は小杉に追い付こうと走るがその間にいる人集りで中々近づけずついには見逃してしまった。「逃げ足が早いですね…」上がった息を整えていると近くで大声が聞こえた。「きゃー!車を盗まれたわ!」「大丈夫ですか!どうされましたか!?」三人は声がする方に向かうと錯乱している市民がいた。「今、車を運転しようとしたらフードを被った男が私を車から追い出してあっちに走り出してしまったの!」「くそ!追いかけよう!」
一方その頃ほのかお空は、「楽しかったね!空くん!」「うん!お父さんも来れば良かったのに」「もういいわよ!あんな探偵バカ!」二人で路地を歩いていると二人に対して、遠くからどんどん近くなる声が聞こえた。「ほのか!空!」声の主は亮であった。「なんでそんなに走ってるの!?」「はぁはぁ、そっちこそなんでここに?」「これから別のお店に向かおうとしてて…てか途中参加は認めないからね!」「そんなこと言ってる場合じゃない!近くに連続窃盗犯がいる可能性がある!ここから離れて!」「え!?そうなの?」「だから、早く…!」亮は二人の背中を押して早く行くように急かした。「お父さんも気をつけて!」空達が歩き始めるのを見届け、後ろを向き辺りを見渡していた。「小杉…どこだ?」二宮達に連絡を取ろうと携帯を取り出そうとした時、ブォーン!今いる路地の裏の道から加速をした車の音のような音がした。その音は亮の後ろで聞こえ振り向こうと首を動かしたら、グシャ!ガァン!車が何かにぶつかった音がして確認すると、そこには壁にぶつかった車に乗る小杉が気絶をしていた。「小杉か…慌てて操作を誤ったか」これで確保が出来ると安堵した亮であったが、その近くで悲痛な声が鳴り響いていた。「空くん!空くん!」亮は、壁にぶつかり停まった車のすぐ近くで悲惨な光景を目の当たりにしたのだ。それは…空が小杉の運転していた車に轢かれてほのかの声かけに反応しなくなっていたのだ。「空…?」亮はその場で膝をつき涙が溢れそうになっていた。そこに、遅れて二宮と西尾が到着し、「小杉!連続窃盗の容疑で逮捕する!」
「空?そらーーー!!」亮が叫んだ瞬間目の前が真っ暗になり ----。
カチッカチッカチッ
ブーブーブー 亮は、杉山探偵事務所のデスクで顔を伏せ寝ていたのだ。「ん?(あれ?今空が…)」混乱していたが、バイブ音が鳴っていることを思い出し手に取るとほのかからであった。「もしもし…」「もしもしじゃないわよ!今何時だと思ってるの?とっくに待ち合わせ時間過ぎてるんだけど?」「…ごめん」「もういいわ!空くんと一緒に出かけるから!」「あぁ…」一方的に電話が切れてしまった。(どういうことだ?ついさっきまで街に出ていて小杉を追いかけ、それで空が…空が死ぬなんて…なんて夢を見ているんだ!)状況を整理しようと頭をフル回転で稼働させていたが、玄関からノック音が聞こえた。
「おはようございます杉山さん、今日は捜査協力を…」
「え…?」
Xtra Editionの後日譚です。
あの事件から早一週間が経ち新たな事件が舞い込んできましたね。その中でまさか空が…?これは夢だったのかそれとも…次回もお楽しみに。