file.Xtra edition 憎しみのその先には 後編
file.10とfile.11の間で起こった事件の後編です。
20XX年7月10日 亮と二宮と西尾は演劇サークルで亡くなった5人と仲が良かったという生徒の垣内さんに会いに行くことになった。三人はセダンの車に乗り大学へ向かった。大学へ着きすでに学校にはアポを取っていたので、その生徒がいる教室まで行くと、教師が一人立っていた。「警察の方ですか?」「はい、先ほどご連絡をした二宮です」「すみません、警察が来ることを垣内に話したら知らずに体調不良を理由に早退しておりまして…そこから連絡も着かず…」「そうですか…」「まあ、急に警察から話があるって言われたら変に緊張しますもんね」「では、他の演劇サークルの生徒さんは?」「いると思いますよ」「では、その人達だけでももう一度お話を伺いたいのですが」「聞いてきます」「ありがとうございます」亮は少しでもヒントがないかと話を聞くことにした。
「亡くなった人達のことですか?」「はい、どんな人達でしたか?」亮は残ったサークルのメンバーに話を聞いた。「あの5人はサークルで中心人物でした。主役級の役が多かったですね」「垣内さんもですか?」「はい」「殺されてしまったことで、なにか心当たりはないですか?」「……特には」妙な間の返事に違和感を感じたのと亮の中に一つの仮説がありそのすり合わせで生徒を問い詰めた。「本当に?殺された5人の前に自殺をした生徒、鈴木咲さんも関係あるのではないですか?」「……はい、おそらく」「なんだって?」観念したのか生徒は、「殺された5人と垣内さん含めた6人は、鈴木さんをいじめてたんです。」「…やはり」「鈴木さんは演技の才能があって周りからも認められるくらいの子だったんです。それが気に入らなかった6人は陰湿ないじめを繰り返していました。それを知っていながら、自分達が標的にならないように他の私達は見ないふりをしていました。でも、鈴木さんはそれでも笑顔で演技を頑張っていました」「だけど…一ヶ月に自室で首を吊っていたって聞いて!」そこで顔をおさえ生徒は泣きはじめこれ以上は話せそうになかった。「なんてことだ」三人は大学を出て車に乗り込んだ。西尾が、「現在の集まった情報だと、今回の連続殺人事件は自殺した鈴木さんの復讐を誰かがしていることになるな」「そうなりますね、それを誰がしているか…」「今回の事件の関連性で鈴木さんについては調べていなかったんですか?」亮が西尾に尋ねた。「調査はしました。特に関連性はないと小田切から報告を受けていますが…」「…鈴木さんの部屋はもう片付けてあるんですか?」「そうですね、親族がもう引き払ったそうです」「なにか手掛かりがあれば…」「実家に行ってみましょう」二宮の提案で鈴木さんの実家へ向かった。
ピンポーン 玄関のチャイムが鳴り一人の女性が応対した。「どちらさまですか?」その女性は少し痩せこけ生気が感じられなかった。「鴨警察署の者ですが、鈴木咲さんについてお伺いしたいことがあるのですが宜しいでしょうか?」「どうぞ…」了承を経て家に入ることになり部屋に向かった。「咲の部屋は一人暮らしする前のままなので特に手掛かりになるものはないと思いますが」「そうですね…」亮が部屋を見渡していた中で机の上に写真立てに入っている写真に気づいた。「娘さんは一人っ子でしたか?」「いえ、上に姉が一人います。ですが、数年前に離婚して別れてしまいましたが」手に取った写真には咲さんともう一人女性が写っていた。「(どこかで見たことがある顔だな)西尾さんこの写真の人見たことありません?」亮が西尾に写真を見せると、「…まさか」「お母さん!この隣の人のフルネームは何ですか!」「え、◯◯◯◯◯◯ですが」部屋にいた三人は母親が発した言葉に信じられない表情になり、だが事実として受け止めなければいけない。「ということは…犯人は」「まだ確定はしていない。本人に直接聞かないと」「でも、どこに?」三人は探している人物の行き先が分からず立ち往生していると、「そうだ、お母さん!」亮が母親に一つ質問をした。
20XX年7月10日の午後を回ったところで、亮達三人は車で鴨市の少し外れた所にある展望台へ向かった。着いた時には一台の車が停まっていた。「やはりここにいたか」展望台の屋上までは階段でいく必要があり三人は急いで駆け上がった。「もうすぐで屋上に着きます!」二宮が声をかけ、屋上へ辿り着いた。この日は快晴で空を一望するには良いロケーションであった。屋上には一人の人物が拳銃を持ち、柵に手を掛け空を見上げていた。「…もうこんなことはやめるんだ」西尾がその人物に対して声をかけた。ゆっくりその人物がこちらを向く。
「小田切!」「あら、よく分かりましたね西尾さん」そう、今回の連続殺人事件の犯人は西尾のバディの後輩 小田切であった。「なぜこんなことを」「なぜ?理由はもう分かっているでしょ?復讐よ!」「私と咲は姉妹なの。両親が離婚して離れてしまったけど仲がよくよく遊んでたりした。私も警察官になり多忙になって中々会えない日々が続いたの」「今から約一ヶ月前に一本の電話が咲からきたの」『もしもし、お姉ちゃん?ちょっと相談したいことがあるんだけど…』『え?また今度でもいい?ちょっと仕事がたて込んでてて』『う、うん…大丈夫だよ…お姉ちゃん?』『ん?』『好きだよ』『ん?どうしたの急に?』
「そこで電話が切れた。気に求めていなかった…咲のSOSに!数日が経って母親から訃報がきた時涙が止まらなかった」「そんなことが…」「その後自殺した原因を調べてたら、大学のサークルでいじめにあっていたことを突き止めたの…」亮が「そこで復讐を決意したのか」それに反応し小田切が、「あなた達には分からないでしょうね!この時の私の悔しさが!怒りが!憎しみが!」「だから自殺に追い込んだ奴らを一人ずつ殺していったわ!あいつらはこの世のゴミよ!だから掃除したのよ!それが私の使命よ!」小田切の異常なまでの憎しみに三人はただ聞いているしかなかった。「それに」小田切がポケットから何かを取り出した。「それは!」「サルガタナスのバイヤーを追い詰めた時に落としていったものよ。証拠品として提出しようとしたけど、これを持っていると私の身体から溢れでるこの憎しみが正当化されるように感じれるの!」小田切の異常なまでの憎しみの正体はあのSDMのせいであったが、亮達は初めて見た形状であった。亮が小田切の主張に対して思うことがあり自分の気持ちを吐露しようとした時、「小田切!」西尾が大声で「小田切、お前の気持ちはわかった!だが、こんなやり方は絶対にダメだ!拳銃を渡せ!罪を償って一緒にまた仕事しよう」「無理よ!元々全員殺したら私も死ぬつもりだったし…だけどもう逃げれない…咲だけ一人にしたくないの…これが私の償いでもある」手に持っていた拳銃を側頭部に当て目を閉じた。「まずい!」「小田切!やめろー!」三人は小田切の元まで走った。だが、「咲……さよなら、先輩」
ドンッ!!一発の銃声が鳴り響いた。銃弾は小田切の頭に直撃してその衝撃で身体が、柵から外に落ちていった。「小田切ーー!!」「なんでことだ」亮はすぐに救急車を要請した。二宮は取り乱し柵から今にも落ちそうな西尾を取り押さえていた。「小田切ーー!!」
これで、連続殺人事件が解決した。胸にヘドロが詰まったような終わり方でしばらく頭からあの光景が離れなかった。西尾さんはあれから仕事を休んでいるそうだ。何か変な気を起こさないか心配になった二宮さんが毎日訪問し様子をみてくれている。この事件は悲しすぎる結末になった。私は彼女|《小田切》の気持ちは痛いほど分かる。だからこそ止めれなかったことに悔しさがつのってしまう…。
それに、彼女が所持していた新型のSDMが捜査の中で紛失してしまったことが後々判明した。おそらくどこかのタイミングでサルガタナスが回収してしまったのだろう…
気持ちを優先するか、それを押し殺して理性を保つか、本当の正義がわからなくなってしまう、そんな事件であった。
ありがとうございます。
今回の事件は憎しみによる動機で起こった悲しい事件で、サルガタナスはあまり出てこなかったですね。
次回は、この話のfile.Sepuel《後日譚》を描いていきます