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file.10 なぜ、家族の記憶が消えてしまったのか

 前回のLostMemoryは、隣人の奥さんが亡くなったのにその事を忘れてしまった家族の真相を知りたいと依頼があった。空との関係に悩んでいた亮にほのかが叱責をして…


 翌日、多田さんと木下さん達が住んでいる住宅地へ亮は向かう。一つ一つの家が大きく閑静な住宅ばかりであった。「お金持ちが住んでそうだな―、確か木下さんの家の旦那さんは実業家だったな」広い通りを歩き木下さんの家を探す。そこへ、「じゃあねー」「じゃあねー琢磨くん!」と学校帰りの子どもが歩いていた。「…琢磨くん、あの子か」少し小走りに友達と分かれた琢磨くんに近づき、「君が琢磨くん?」声をかけ「うん、そうだよ」と琢磨くんが元気に答えた。「おじさんは変な人じゃないからね、少しお話を聞きたいなって思って。今は大丈夫かな?」「うん、いいよ」「ありがとう!」

 亮は質問を始めた。「今は学校帰り?」「そうだよ」「楽しい?」「毎日楽しいよ!」「それはよかった」何気ない世間話から始めて「親さんはもう帰ってきてる?」「ううん、まだだよ。お父さんはもうすぐ帰ってくるかな?」「そうなんだね、…ちなみにお母さんは?」

おそるおそる亮が聞くと、「?お母さんって?ボクはお父さんとしか住んでいないよ」「そうなんだね。あ、首もとにゴミがついているよおじさんが取ってあげるね」琢磨くんの首もとを見てみると十字の傷があった。(…やっぱりか)記憶を抜かれている人はこの十字の傷が証拠になる。あとはお父さんにも傷があることを確認して、誰がこんなことをしたか突き止めないとな…亮が思考を巡らしていると、「あなた!うちの琢磨に何をしているんですか!」大声が聞こえその方向を向くと中年の男性が歩いてきた。「あ、お父さん!」「お父さん?」

 「おじさんとお話してたんだよ」「そうなのか」

「それとお母さんがどうとかって」その言葉を聞いた瞬間父親の表情が変わり「あんた、なんてことを琢磨に聞いてるんだ!この子に母親はいない!帰ってくれ!」肩を押され琢磨くんの腕を掴み早々と家の中に入ってしまった。「なんか妙だな。父親の十字の傷も見れなかったし」 家の中では「お父さん、ボクにお母さんっているの?」「…いない」目を合わせることなく答えリビングに消えていった。

 翌日の午前中の喫茶店では、情報屋のとっちゃんがカウンターでモーニングセットを食べていた。「美味しいねこれ」「それはありがとう。それで?」「ああ、木下家のことね、あの父親の方は実業家だが特に黒い噂はなかったよ。もちろん子どもの方もね、家族関係も良好だし」「なるほど」「当たり前だが、母親はついこの前まで実在していた。だけど、もともと心臓が悪く入退院がここ一年繰り返してたと聞く」「んー、依頼人の話や今の情報を照らし合わせてもこの家族がサルガタナスに狙われる理由が見つからないな。父親の反応が引っかかるくらいだし」「反応?」「ああ、母親の話をしたら血相を変えたんだ」「父親が怪しいと?」

 ブーブブ 悩んでいる亮のスマホに通知がきた。「なんか鳴ってるよ」「新入社員からだ。この後昼食一緒に食べようって」「仲いいね、じゃあこれで失礼するよ」「ありがとう!またのお越しを」 昼になり喫茶店を閉めた亮はその足で飲食店へ向かった。「おーい!こっちこっち」元気な声が響きほのかと空が一緒に外で待っていた。「もー、遅いよお腹空いちゃった。ね!空くん!」「ゴメンゴメンおまたせ」

「仕事の方はどうなの?」「んー、行き詰まってるようなそうじゃないような…もう一押しがあればって感じ。また昼から本人達に聞きに行こうかなって」「大変だね探偵も」三人でご飯を食べながら談笑をしていた。亮がふとガラス越しに外を見ると木下さんと琢磨くんが一緒に歩いていた。「ちょっと用事思い出したから帰るね。これお金奢るよ」「ちょっと亮!?」お金を置き亮はすぐに外に出た。二人についていくと公園に着き、琢磨くんは遊具で遊び父親はなにか手に持って見つめていた。「二人で公園で遊んでいるんですか?良いですね」「あなたはこの前の…何しにきた」「そんな警戒しないでください。自分も家族とご飯を食べてたところなんです」「…あんたにも家族がいたのか」「…まぁ、一応」亮は父親の横に座り話していた。「あんたは子どもとどう接している?」「どうとは?」父親が唐突に亮へ質問をした。「おれはちゃんと琢磨のことを考えてやれているのかって」「それは私はお答えできません。私も試行錯誤しているんです」「うちの子はあることがきっかけで声を出せなくなりました。それを知っているがためにどう接するのが良いのか今まで分かりませんでしたが、最近叱責されしっかり向き合うと決めたんです」「向き合う…」「私、思うんです。子育てに正解不正解なんてないと」「…」

 「あ、この前のおじさん!」琢磨くんが亮に気付き近づいてきた。「ねぇ、この前言ってたお母さんってなんのことだったの?」「琢磨!やめろ!」「ボクにもお母さんいるの?みんなにはお母さんいるって言ってたよ?お父さんなにか隠してるの?知りたいよ!

」「…お母さんは」目を強く瞑り何かに悶えていた。そこに亮が「お母さんはね、亡くなってしまったんだよ」「亡くなった?」琢磨くんが不思議そうに聞き返すと、「お前!なんてことを!」父親が亮に殴りかかった「ぐっ!お父さん!琢磨くんは真実を知りたがっている!伝えるべきではないんですか!?」「…お前に何が分かる!?母親がいなくなり生きる希望を失くした子どもへどう接すれば良いか!!」「え?」

「やっぱりあなたが琢磨くんの記憶を…」「そうだ。一ヶ月にこの子の母親は病気で死んだ。どんどん衰弱し、私は覚悟はしていたが琢磨には受け入れがたい事実なんだ…それから琢磨から笑顔が消え、ずっと母親のことを引きずってしまう」父親はポロポロ涙を流しながら亮に馬乗りになり何回も殴った。そこへ亮を追いかけていたほのかと空が発見した。「亮!?ちょっと!なにやってるのあんた!」 父親は腕をまくりSDM型腕時計を見せ、「そんな琢磨をおれは見ていられなかった…そこへ黒服着た奴がこれを渡してきたんだ。おれは琢磨から記憶を抜き取った。琢磨には新しい人生を歩んでほしかったんだ…」

 その現場をみた空は何かを言おうと頑張っていた。それに気づいたほのかは「空くん?」 「……ん」「……さん!」「お父さん!!」亮は初めて聞いた声だがすぐにその声の持ち主が空だと確信できた。「…空?」「お父さん!だいじょ…」すぐに声が枯れてしまい空はむせていた。「空くん!声が出たの…」「空…!」

亮は父親に向かい「子ども達は既に前に進もうと努力している!!これからも進み続ける!いつまでもそこに留まっているのは私達大人じゃないのか!?」父親は身体から力が抜け亮から離れた。二人の子どもを見て「確かに進むことを恐れているのはおれなのかもしれない…琢磨!ゴメン…」

SDMに手を掛けリューズを回し抜き取った記憶をもとに戻した。その直後琢磨くんの頬に涙が溢れた「琢磨!」「お母さんはいなくなっちゃたんだね。だけど、ボクはお母さんの分まで頑張っていくよ!」涙を手で拭き取り父親にニッコリと笑って見せた。


 これで事件は解決した。SDMを使うことは許されないが今回のあの父親の行動は責めきれなく警察への届け出はしなかった。子どもを思うがゆえの親として色々考えたのだろう。後日、木下親子は事務所へ訪れ謝罪があったが、子ども達の成長がみられ満足したため許すことにした。

 「え!?空が声を出せるようになった!?」久しぶりに出社した幸太が驚いた声で何度も聞いてきた。

空もまだ単語しか言葉が出ない。しかし、着実に過去のトラウマと闘おうとしている。大人が支えていかないとな…私もいつまでも過去に囚われるのはよくないか…

ありがとうございました。

ついに空が声が出るようになりましたね!声が出ることによって誰が一番ビックリするのでしょうか。この後の物語にどう影響してくるのかお楽しみに。

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