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闇追いのメナ  作者: 瑠璃色のてらさん
薄明の姫
18/58

貴石の影_2

前話 一部に誤りがありました。

そのままでも流れは追えるとは思いますが、個人的には大事な部分なので、訂正とお詫びを入れさせていただきます。


イカコ家 がこれまで影であることに甘んじていたのは、その方が彼らにとって都合が良いからだとメナは思っていた。

カゥコイ家 がこれまで影であることに甘んじていたのは、その方が彼らにとって都合が良いからだとメナは思っていた。


申し訳ありません。

それはそれとして、今後ともお楽しみいただければ嬉しいです。

そうこうしているうちに馬車は進み、丘に隠れていた大聖堂の城郭(じょうかく)が見えたところでメナは目を細めた。


雫のような蛾寄木(ガスキュリヨリ)の葉、それを支える絡み合った枝。秋に花開く青い花とその(つぼみ)


それらを(かたど)った華やかな装飾が目立つその建物は、ことによると王宮よりも華美かも知れないとメナは思う。


貴石教会は、それが(まか)り通るほどの力を持った勢力だった。


「―――相変わらず、派手な様式ですね」


メナが呆れ混じりに言うと、ギノーはキラキラとした目で言った。


「私は良いと思いますわ。神がおわしますのなら、喜ばれると思いますもの」


メナは彼女が貴石教に対して敬虔(けいけん)なことは知っていた。

それは別に珍しいことでもないが、彼女はあまりに純粋だ。


だからこそメナは彼女の言葉から、自分がいまだに政治的な事柄に(とら)われていることに気づいて苦笑する。


「―――そうとも言えるかも知れませんね」


メナはそれほど熱心な信徒とは言えなかった。


それでも、「貴石の教え」それ自体に対して疑問を抱くことはない。

それほど、貴石教はこの地に暮らす民の精神と深く結びつく、歴史の長い教えだった。


それは古くはアタナティス王国の成立前、水の民と石の民のそれぞれに交流がなかった時代にまで(さかのぼ)る。


石の民を取り込んでアタナティス王国となった際、その元となった信仰が名前を変えたもの、それが貴石教だ。


特に貴石の教えの基盤である「水の法(アタラス)」は人々の生活を豊かにする技術であり、同時に人として(・・・・)生きる(・・・)ことの基盤を説く教えでもある。


その力を借りて、アタナティス王国は多くの民を治めていた。


貴石教があってこそのアタナティス。

だがそれは、逆もまた然りのはずだ。


(教会は、王宮での出来事を掴んでいるのでしょうか)


もし掴んでいないのだとしたら、彼らは彼女の襲来にどのように対応するだろうか。

敵がカゥコイ家とイカコ家であると知った時、特に教徒の少ないイカコ家に対してはどのように出るのか。

メナはボンヤリと考える。


あるいは大きな戦いが起こるかも知れない。


教会はイカコの領と面している。


ゆえにこの機に乗じてそれを打破するために動く、ということも考えられた。


そうなれば、メナたちにとっては大きな助けにはなる。


「……」


メナは眉間に手を添えて目を(つむ)って息を吐く。

余計な仮定を立てすぎていると思った。


仮にそうでなくとも、彼女たちが教会領に来ることを選んだ以上、助けを期待する他ない。


大聖堂は人々に恵みをもたらす、教会の総本山。

人としての生き方を説く教えの(みなもと)


道理としては助けを得られぬ(はず)がなかった。


(―――いずれにせよ、彼らが知らぬはずがありませんね)


メナは教会の情報源について思い出し、苦笑する。


その苦笑に気づいたギノーが目で問い掛けてきて、メナは軽く首を振って微笑む。


「教会に着くのが待ち遠しいな、と」


ギノーは「えぇ」とメナに微笑み返し、前を向く。


「―――もう少しでございますわね」


ギノーがほっとしたように呟き、メナも道の先を見る。


馬車は今、教会へと続く道の脇にある、ひときわ大きな丘の横を迂回(うかい)するところだった。


確かにもうすぐだ。


メナはギノーに同意を示そうと口を開いた。


その時だった。


抗議の声を上げて馬が動きを止める。

そして、そのいななきの隙間から、ドゥカイの緊張した声がメナに届いた。


「―――引き返します。掴まっていてください」

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