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闇追いのメナ  作者: 瑠璃色のてらさん
薄明の姫
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貴石の影_1

暗い森を抜けると現れる、石灰質な地形。


貴石教の大聖堂に向かうための道はその只中(ただなか)にある。


その隙間を縫うように敷設(ふせつ)された道を馬車に走らせて、メナは徐々に明るくなってきた空を見上げていた。


いままで張り詰めていた分の反動が一気にやってきたかのようだ。


空に溶け込むような白い雲を眺めていると、取り止めのない考えが頭を過ぎる。


カゥコイ家とイカコ家は、なぜ叛逆(クーデター)に踏み切ったのだろうか。


メナはため息をついて座り直す。どうにも、理由は見えてこなかった。


特に、カゥコイ家に関してがわからない。


(更なる権力を求めた―――?)


釈然(しゃくぜん)としない考えに眉をひそめる。


そんなメナに、ギノーが水を差し出した。先ほど河で()し、()かした水だ。


「ありがとうございます。ギノー」


微笑む彼女を尻目に、メナはそれを受け取って口に含んだ。


少し気持ちが晴れ、散文的だった思考がまとまり始める。


確かに王権は強い。


だがそれは、カゥコイ家の後ろ盾があってこその部分が大きいことをメナは知っていた。

彼らは確かに「王朝の影」ではあったが、それ以上に「王朝の土台」であったのだ。


(それこそ、やろうと思えば国をひっくり返すことなど造作(ぞうさ)もないはず……)


馬車の揺れと共にメナの身体が少し浮かんだ。座り直すときに足元の影が目に入った。


王族である、普段は目立たない、彼女の影だ。


「―――……」


カゥコイ家がこれまで影であることに甘んじていたのは、その方が彼らにとって都合が良いからだとメナは思っていた。


事実、彼らはそれができるだけの力は持てど、過剰にそれを振りかざすようなことをしなかった。

あくまでも国益のため、国という形を保つために動くのが彼らだった。


だが、今回のことでそれがわからなくなった。


城を襲撃するなどという乱暴な方法をとってまで、彼らは叛逆を起こしたのだ。


「……」


メナは白んだ遠くの空に鳥の群れが飛び去るのを見つけて、呟いた。


「まるで、何かに焦っているかのような……」


自分の知らない何かがこの国で起ころうとしているのではないか。


メナのその直感と呟きは、誰にも届かない。

余計な憶測で、今の彼らの気を散らせたくはなかった。


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