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中二(い)世界へようこそ 4話(完結)


 魔法を使えそうで使えなかった俺だが、ついに魔法が使えるようになった。

 詠唱の前に、この世界にいるという女神を称えないと駄目らしい。

 俺の主神はン様という、黒い髪の女神様。


 要は彼女の素晴らしさを称えて、力を分けてもらう――ということみたいだな。


 俺は、川での魔法の実験が終わり、歩いて街に戻ることにした。

 そのままメイメイの店を訪ねる。

 ここならなんでも売ってそうだからな。


 積み上がった商品の山の中に入る。


「お~い!」

「は~い」

 奥から彼女の声が聞こえてきた。


「小さい祭壇ってないか?」

「あるよ~」

「なるべく、シンプルなやつがいい」

 俺が見たン様のイメージは、黒くて質素なドレスを着ていた。

 あまり派手好きではなく、実を取るタイプとみた。


「これなんかどう?」

 彼女が黒い祭壇を持って顔を出して。

 黒くて小さな両開きの戸がついている。

 仏壇みたいだが、あれも祭壇だろうし――。


「これをくれ」

「ああ、カオスだったの」

 声だけで会話をしていたので、俺だとは思わなかったらしい。


「代金は、ドラゴンの金から差っ引いてな」

「わかった」

 すんなり応じるな。

 ごねるかと思ったが――ドラゴンの金ってかなり高いんだろうな。


 俺は黒い祭壇を抱えて外に出た。

 通りにはカラフルな服装をした、たくさんの女性が歩いている。

 そういえば、さっきの女の子は下着をつけていなかったな。

 男としては、この世界の女性は下着をつけていないのか、確かめる必要がある。


 どうやって確かめるか?

 俺には魔法がある。

 イメージとしては、動画サイトで観た昔のアニメだ。

 それは忍術だったが、地面から風を起こしてスカートをめくっていた。

 魔法で同じことができないだろうか?

 俺は試してみることにした。


「美しき足を持つ『ン』神よ。そのお御足の下になりし者は、生まれついての悪人でも改心しせり。その偉大な女神の力を持って、大地からの神風を起こしたまえ」

 魔法を唱え終わると、巻き起こった突風が街角にいた女性たちの長いスカートを次々と捲りあげた。


「「「「きゃあぁぁぁぁ!」」」」

 黄色い声と一緒に俺の目に飛び込んできたのは、むき出しになった眩しい太ももや、丸いお尻。


「おおおっ! やっぱりこの世界は、下着をつけないのか……う~む、奥が深い」

 俺の眼前に広がる風景は、まるで絵画の中に迷い込んだような美しさ。

 その光景に、俺の心の中に穏やかな安らぎをもたらす。

 心の中で満ちる感情は、穏やかな喜びと安らぎ、そして神への感謝の念が交錯している。


 ――などと、満足していたのだが――。

 突然の頭痛が俺を襲った。


「あいたた! なんだこれ!?」

 痛みがどんどんひどくなる。

 この場から離れないと――同時に俺は直感した。


「申し訳ございません! ン様の御力を、イケナイことに使いました! もういたしません! お許しを!」

 全力ダッシュで、その場から離れると、徐々に痛みが和らいできた。

 まいったな――神様から見られているのか。


 いくらこの世界に奇跡を起こす俺とはいえ、一介の人間の行動をチェックしているのだろうか?

 いや、ン様が主神になるのは、非常に珍しいと言われたし、チェックする数が少ないのかもしれない。

 これは迂闊なことができないぞ。


 さて、遊んでばっかりもいられないな。

 ドラゴンの金が入ってくるまで、遊んでいるわけにもいかないし。

 俺は宿屋に帰ってきた。


「なに買ってきたにゃ」

 ミーニャが、俺が抱えているものを覗き込む。


「神様を祀る祭壇だよ」

「あんたが信心深いように見えなかったにゃ」

「俺の名前はカオスな。魔導師だから、女神様を奉るのは当然だろ?」

 お互い名前も知らずにやってたからなぁ。


「にゃ?」

 彼女の話では、魔導師イコールそうでもないらしい。

 そうなのか?

 力の源の神様を祀らないで、なにを祀るのだろうか。


 俺は部屋に戻ると、ナイトチェストの上に祭壇を設置して拝んだ。


「さて、川で拾ってきた石を魔法で割ってみるか――」

 イメージ的には、ウォータージェットの映像だ。

 女神を称えて、石をカットする魔法を唱えると――見事石が半分になった。


「おおお! 当たりだ!」

 半分になった石を見る。

 様々な色彩による幾筋もの縞模様の中心には空洞があり、そこには水晶が育っていた。


 石の中に、まるで宇宙の銀河が宿るかのような神秘的な風景が広がる。

 煌めく粒子は、まるで星々が宇宙の闇を照らすように、輝きを放つ。

 その奥深い彩りと輝きは、宇宙の広がりと深遠さを彷彿させた。

 触れることはできないその宇宙のような内部には、無限の可能性と神秘が秘められているように感じられる。


「これは、神様への供物としてふさわしいんじゃね?」

 俺は置いたばかりの祭壇に、石を捧げた。


「偉大で美しきン神に、この石を捧げます~よろしくお願いいたします」

 神様が本当に存在しているなら、媚を売っておいて損はない。

 なんといっても、俺の力の源になっているのは間違いないからな。


 ――祭壇に捧げ物をした次の日の朝。

 供物の石がなくなっていた。


「え?!」

 ドアにかんぬきをしたままだし、ピッキングみたいなことはできないだろう。

 夜中に誰かが入ってきたような節もない。

 鍵開けの魔法ってのもありそうだが、この世界の魔導師は稼げる商売っぽいし、枕探しみたいなことはしないだろう――と思う。


「なんといっても異世界だしなぁ……本当に神様がいるっぽいし」

 女神様が供物を気に入って、持っていったのかもしれない。

 そう考えることにした。


 ------◇◇◇------


 その日から、俺の異世界での活躍が始まった。

 心配していたドラゴンの金はしっかりと払われ、10年ぐらい働かなくても暮らせる金のようだ。


 その金で俺は家を買って本拠地にした。

 この街よりいい所もあるのかもしれないが、俺はこの街が気に入った。

 可愛い獣人の女の子や、懇意の商人、魔導師の先輩のお姉様――チャチャさんもいるし。


 一番最初にお世話になった黒猫亭にも、度々遊びにいっていたのだが――。


「もう、カオスだけにしたいにゃ……」

 なんてミーニャに言われてしまったら、俺が引き取るしかないだろう。

 聞けば借金があるらしいので、精算してやり、彼女は俺の家で一緒に暮らすことになった。

 働き者だし、飯も作れる。

 欠点といえば、毛が入るぐらいだし、毎日ふかふかの毛皮と一緒に寝られる幸せ。


 ただ、気温が高くなってくると、さすが毛皮は暑いようだ。

 そんなときには魔法を使って涼しくしてあげる。


 毎日、俺がブラッシングしてあげる彼女の毛皮は、つやつやのピカピカ。

 至高の手触りである。


 家を購入して、ミーニャと一緒に暮らすようになっても、祭壇に捧げたものがなくなることが度々起こった。

 まさかミーニャが取るはずがないし、彼女は音や気配に敏感だ。

 誰かが侵入してくれば、気がつくはず。


 やっぱり、神様が供物をゲットしているのだと思う。

 その証拠に、なくなるものと、なくならないものがハッキリしているのだ。

 お菓子や綺麗な石は、すぐになくなるが、その他のものは放置されたまま。


 ン様の好みが解ったので、女神様が好きそうなものを選んで捧げ物にすることにした。


 俺は、そんなン様を称えて、魔法を使う日々。

 欲しかった魔法の袋もゲットしたし、数々の魔物を討伐して、名声をあげて悠々自適の日々を送っていたある日。

 外から大きな音が響き、地面からの振動が伝わってきた。


 街中の鐘が一斉に鳴り始める。


「なんにゃ?!」

 これはただごとではない。

 なにか街に危機が迫っている重大な知らせだ。

 俺は魔導師として、出ないといけない。

 そのために身分を保証されているわけだし。


「ミーニャは、危なくなったら避難してくれよ」

「わかったにゃ……」

「大丈夫だよ」

 彼女が心配そうな顔で、耳を伏せているので、なでなでしてやった。

 俺は装備を揃えると慌てて外に出る。


「なんだありゃ……」

 俺の目に飛び込んできたのは、真紅の竜。

 最初に仕留めたレッサードラゴンなんて目じゃない、本物のドラゴンだ。

 体高は3階建ての家と同じぐらいで、頭が少し出ている。

 まさしく巨大だ。


「美しき偉大なる女神よ――」

 俺は、身体強化の魔法を唱えると、屋根の上に飛び上がった。

 次々と屋根の上を八艘飛び、ドラゴンに近づいていく。


 周りにはすでに、多数の戦士たちや、魔導師が群がっていた。


火炎球(ファイヤーボール)!」『魔導弾(マジックミサイル)!』

 全周囲から次々と打ち込まれる魔法に、ものともせずに、ドラゴンは建物を破壊し続けている。

 餌食になっている街の住民も多数いるようだ。


「真種のドラゴンって魔法を使うって聞いてたけど、あれか――」

 巨大な魔物の周りには、防御魔法が張られているようだ。

 魔法が使えるってことは、人間並――いや、人間以上の知能を持っているかもしれない。

 防御魔法があるんじゃ、肉弾戦は効果がない。


 俺は屋根の上に陣取ると詠唱を始めた。


「全知全能なる、ン神よ。美しき黒髪は、深みのある闇をたたえ、風になびけば星空が広がるように世界を覆い尽くす。その美しき女神の力をもって、我に光の剣を与えたまえ――光の聖剣ライトオブデュランダル!」


 俺の手から伸びた長大な光の剣がドラゴンを強襲したのだが、あっさりと防御魔法に弾かれてしまう。

 輝く長剣は、光の粒子に消えた。


「でっ?! マジで?! あんなの倒せるのかよ!」

 俺が頭を抱えていると、ドラゴンが閃光に包まれた。

 まるで宇宙が一瞬で開闢かいびゃくするかのような美しさが広がる。

 閃光が煌めく瞬間、時間は停止し、世界は静寂の中で美しさに包まれた。


 誰かの大魔法が直撃したのだ。


「やったか?!」

 思わず言ってしまったが、こいつは言ってはいけないセリフだ。

 俺がちょっと後悔していると、粉塵の中から真紅の巨体が姿を現した。


 やっぱ、だめか?!

 魔法を撃ったのは、どうやらチャチャさんのようだ。

 ちょっと離れた屋根の上で、巨乳が揺れている。


 とりあえず、あの防御魔法を消さないことには――。

 俺は、お姉様の所に屋根伝いに飛んだ。

 ちょっと聞きたいことがあるのだ。


「チャチャさん! 対魔法(カウンターマジック)ってのはないんですか?!」

「ドラゴンの魔法ってのは、女神様による力の行使じゃないのよ」

 魔法の系統が俺たちのものと、根本的に違うらしい。


「それじゃ、力押ししかないってことですか?」

「コク……」

 彼女が口を一文字に結んで頷いた。


「俺が行きます!」

「援護するわね」

 そう言うと、彼女が俺を抱き寄せた。

 彼女の豊かな胸に埋もれ、いい香りのマシュマロに包まれた。


「ちょ、ちょっとチャチャさん?!」

「生きて帰れたら、もっといいことする……?」

「します! するに決まっているじゃないですか?!」

 俺は彼女から離れると魔法を唱え始めた。

 その間、チャチャさんが援護をしてくれる。


「チャチャさん、街の住民たちは?」

「もう避難していると思う」

「わかりました!」

 それじゃ、もうやるしかねぇ。


「世界の美を統べる――ン様に捧ぐ、白く輝く背中に流れる漆黒の御髪は夜の闇を包むように人々を癒やし、命を育む。その偉大な女神の力をもって、我に敵を打ち破る力を与えたまえ――爆裂(エクスプロージョン)!」

 俺の魔法によって、白い閃光が走ると、真紅のドラゴンが爆炎に包まれた。


 一瞬にして空が裂け、大地が震える。

 巨大な火炎により、周囲の建物が薙ぎ払われて、灰燼と化した。

 その熱とエネルギーが上昇し、巨大なキノコ雲が出現する。

 黒い煙と赤い炎が絶え間なく渦巻き、まるで天に向かって昇る巨大な生命の息吹のよう。


 猛烈な爆炎の中、その炎の海に巨大な魔物は溺れたかのように見えたのだが――。

 その混沌とした炎の中から、真紅の姿が浮かび上がる。

 灼熱の炎に包まれながらも無傷のままであり、その姿はまるで不死身の存在のようだった。


「なんだと?!」

 魔物の瞳には、爆発する炎の中でさえも悠然とした冷静さが宿っており、その威厳ある姿は、まるで神話の中から抜け出したような存在のように見えた。


 俺が絶望していると、敵がこちらを見ている。

 ドラゴンの表情は解らないが、ニヤリと笑ったように見えた。

 余裕の表情ってやつだ。


「くそぉぉ! このクソトカゲがぁ! あとで吠え面かくなよ! 光り輝く至高の存在であるン様に捧ぐ――」

 俺は、ありとあらゆる言葉で、ン神に対する賛美を並べた。

 頭のてっぺんから足の指の先まで、彼女を称える。

 魔力が空になって意識が飛びそうになっても、俺は神への賛美を止めなかった。


 俺の詠唱に呼応するよう、光り輝く巨大な十字架が顕現し、周囲を照らし始めた。


「ン神の威光は、あまねく三千世界を照らし――」

 そのうち、白い十字架の中に黒い川が渦を巻き始めて、そこから白くて長いものが飛び出した。


「女神の御力によって、我に力を――あ、脚?」

 俺の目の錯覚か?

 黒い渦から飛び出したのは、長い脚の形に見える。

 そこから、更に白いものが飛び出した。


 腹? ヘソ? 次に現れた、豊かな2つの丘――。

 空を覆う夜空と輝く星のような瞬きを纏う大河のような黒い髪。

 世界の全ての悪事を許すような微笑み。


 俺の前に現れた山のようにそびえる人型。


「も、もしかして――ン様?」

 そう、それは俺が夢に描いて賛美し続けていた女神そのものだったのだ。


「コクコク!」

 俺の言葉が通じているのか、彼女が頷いた。

 女神が手を伸ばすと、その身体は急激に体積を変えて俺の目前に――。

 それでも、大きさは3mほどある。


「……やって来ちゃったんですか?」

「コクコク!」

 俺は、想定外のできごとに思考がぶっ飛んで、どう対応していいのかわからなくなった。

 黒い髪に顔が隠れていてよく解らないが、ン様は、なんだか嬉しそうである。

 そこはきらめきが舞う、俺と女神の特別な空間と化した。

 この事態にまったく無視されているやつがいる。


 さっきまで世界を統べる勢いでドヤっていた、真紅のドラゴンである。

 よほどムカついたのか、女神に咆哮を向けた。


「グワァァァ!」

 白く鋭い牙の間に、火炎が見える。

 俺との空間を邪魔されて、ン様が不機嫌そうな顔になると、ドラゴンのほうを向いて人差し指で指した。


 次の一瞬で、巨大な魔物の上半身が吹き飛び、辺りに四散。

 そびえる巨躯が建物の間に倒れ込み、瓦礫の中に埋もれていく。


 さすが神! 一発である。


「ン様、ありがとうございます」

 そう言った俺の手を取り、彼女が抱きしめてくれた。

 至高の柔らかさに埋もれて、嗅いだこともないような甘い香りに包まれる。

 空気は甘く香り、風は柔らかく心地よい。

 ここはまさに、現実と夢の境界を行き来する別世界。


「コク」

 彼女が頷いたのだが、俺には悔恨の念が湧き上がってきた。


「ン様! 申し訳ございません!」

「?」

「女神を賛美してきた私でしたが、ン様の美しさをまったく表現できていませんでした!」

「!」

 なんだか、彼女が恥ずかしそうにしている。


「今後、もっと精進いたしますので、よろしくお願いいたします」

「コクコク」

 女神の巨大な山に挟まれていると、離れた場所に天を貫き輝く十字架が出現した。


「な、なんだ?! 敵?!」

 ン様が、身体をねじりサッと俺を隠したのだが、空中の十字架から白い脚が出てきた。

 次に現れたのは、巨大で美しき白い女性。


 どうやら敵ではないらしい。

 ン様と対をなすように、きらめく粒子を纏う白く長い髪をたなびかせて優雅に歩いてきた。

 その髪はまるで銀の糸を紡いだかのように、光の中できらめく。

 こちらに近づくにつれて、黒い女神と同じ大きさになった。


 素材は解らないが、白いドレスは彼女の美しさを引き立て、風になびくたびに優美な身体のラインが描かれる。

 彼女の瞳は清らかな空のように澄みきり、その微笑みはまるで春の風に触れたような穏やかな優しさを湛えていた。


 どう見ても――ン様と同じクラスの女神様に見える。


「ずるいではないか! ンよ!」

 彼女が透き通るような言葉を発したのだが、真意がよく解らない。

 ン様は、必死に俺を隠そうとしている。


「なにがずるいのですか?」

 とりあえず質問してみた。


「そなたの女神に対する素晴らしい賛美は、神界でも話題になっていたのだ」

「話題ですか?」

 やっぱり、彼女は女神様の1柱らしい。

 それよりも、そんなに話題になってたのか、俺?


「そのとおり! それゆえ、わらわもちょっと称えてみるがよい」

「フルフル!」

 ン様が必死に否定している。


「ンには言っておらぬ! わらわは、その者に聞いておる!」

「あ、あの~、申し訳ないのですが……」

「コクコク!」

 ン様も一緒になって頷いている。


「少しぐらいいいではないか?!」

「フルフル!」

「とりあえず、女神様のお名前が……」

「おお、そうじゃな! わらわは、『ア』じゃ!」

 女神が控えめな胸を張って答えた。

 やっぱり、双丘の偉大さは、ン様のほうが上だな。


「あの~」

「なんじゃ、山が大きいほうがいいのかえ? ほれ!」

 そう言うと、女神の2つの山が大きくなった。

 うえ!? 思考が読まれている?


「いえ、あの、そういうわけではないのですが……」

「よいから、わらわのことも称えてみるがよいぞ?」

「フルフル」

 ン様が必死に否定している。


「わらわを称えれば、加護もやろう」

 ア様の顔がが俺に近づいてくる。


「!」

 それに反応して、ン様が俺を強く抱きしめた。

 柔らかい女神の柔肌に抱かれて――いや、ちょっと待って。

 俺は異変に気がついた。


 俺の身体が、ン様の中に埋没し始めているのだ。


「ンは、供物もたくさんもらっておったじゃろ?! ずるいではないか!」

 ああやっぱり、供物がなくなるのは、ン様がゲットしていたのか。

 いや――そうじゃなくて!


「ちょ、ちょっと、ン様! 身体にめり込んじゃってるんですけど!」

 ア様からの願いに、ン様が俺を隠すたびに身体がめり込んでいく。


「あ~! ちょっと、ン様! これってマズいのでは!」


 異世界で奇跡を起こす予定の俺が、本当に奇跡を起こしたのだが――。

 俺の冒険はまだ続くようだ。


 END

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