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ラノベ転生2話(クズ主人公注意)完結


 気がついたら学生になっていた。

 なにやら俺の中に2つの記憶がある。

 中年サラリーマンの俺と、学生の俺。


 俺が通うことになった学園を訪れると――ここは、俺が読んだことがあるラノベの世界に酷似していることが解った。

 こいつが本当なら、俺の中にある知識を使って、色々と美味しい思いができるってもんだ。


 そんなわけで学園に通うことになり、寮に向かったのだが、なぜか俺の部屋に赤髪の女がいて、「裸を見た」という理由で決闘をすることになってしまった。


 この学園で「決闘」は絶対のシステム。

 俺の頭の中にある知識で勝ちを確信した俺は、女を煽って決闘に誘い出すことに成功した。

 俺が勝ったら、女を奴隷にすることができる。


 できる、できるのだ。

 俺の頭の中にある知識を使えばな。


 闘技場――ほぼ全校生徒が見守る中で、眼の前の女が炎に包まれた。

 彼女は炎の魔法を得意として、「爆炎姫」と呼ばれる有名な使い手だ。


 この世界には魔法が存在するが、男は総じて魔力が少なく、格下に見られている。

 そんな男に煽られて、眼の前の女がこんな場所で決闘をすることになったってわけだ。


 審判をしている副会長の隣には、台に乗った金属っぽい首輪。

 嵌めた相手を隷属化できるという、魔法のアイテムだ。


「始め!」

 合図とともに、決闘が始まった。


火炎球!(ファイヤーボール)

 相手の手から、次々と火の玉が吐き出される。

 ただの遠距離攻撃だ。

 俺の華麗なステップで躱せばまったく問題ない。


「おっと!」

「くっ! 少しはできるってことね!」

「まぁね」

「でも、あなたのことを調べさせたわ」

「へぇ?」

「あなた――魔力がゼロなので、ゼロって名前になったんですってね」

 彼女の言葉に、観客席が反応した。


「え?! 魔力がゼロってあり得るの?」「うわっ……私の魔力低すぎ……? きゃはは!」

 あちこちから、嘲笑が聞こえる。


「さすがお貴族様だ。この短期間で俺のことを調べるなんて」

「あはは! 男なんてただでさえ魔力が少ないのに、ゼロだなんてありえる?」

「それが、あり得るんだよなぁ……」

 それゆえ俺――いや主人公はフィジカルを鍛えまくった。

 それだけでも、並の使い手なら勝てるレベルなのだが、主人公の秘密はそれだけではない。


「そんな男が私に勝とうなんてね!」

「御託はいいから、かかってこいよ!」

「そんなに死にたいなら、殺してあげるわ!」

「ぶっ殺す、ぶっ殺す――まったく口だけか」

「なんですって?!」

「こっちは、そこら辺の仲良しクラブで傷を舐めあってる負け犬どもとはわけが違うんだ!」

 俺は地面を蹴って、急速に彼女との距離を詰めた。


火炎連球!(ファイヤーチェーン)

 連なる火炎の鎖が俺を襲う。

 これは炎の飽和攻撃――隙間ない炎は、体捌きだけで躱すことができない。


「ふっ」

 彼女の顔に笑みが浮かぶ。

 もう勝ちを確信した顔だが、勝負は下駄を履くまで解らない。

 真剣勝負に、油断は禁物――簡単に足を掬われる。


「オラァ!」

 俺は右手で払うと、炎の連球をかき消した。


「えっ?!」

「オラァァァ」

 俺の接近に焦った彼女が、更に魔法を発動した。


火炎壁(ファイヤーウォール)

 俺の前に行く手を阻む燃え盛る巨大な壁が出現する。

 巨大な壁を盾にして、女はさぞかし安心しきっていることだろうが――。


「オラァ!」

 再び、俺の右手が、巨大な炎の壁を切り裂いた。


「なんですって?」

 女に驚愕の表情が浮かぶ。


 俺の魔力はゼロではない。

 魔力を測定する魔道具では、俺の力を測りきれず、針はゼロを指したのだが――。


 俺の魔力はマイナス!


 こいつを使えば、普通の魔法を無効化できるってわけだ。


 これが俺――主人公の秘密。


「いくぞぁぁぁ!」

 俺は女に止めを刺すために、さらに接近した。


「ちょ、ちょっと……」

 この女の欠点がここで露呈する。

 こいつは、生まれ持っての魔力が膨大ということに胡座をかいていた。

 通常なら、その膨大な魔力と魔法で簡単に、相手をねじ伏せることができたってわけ。

 それに頼り切り、自身のフィジカルを強化することを怠った。


 つまり接近戦では、まったくの素人だ。

 ここに及んで、なにか魔法を使おうとしているのだが――間に合うはずがない。


「ナントカ平等パンチィィ!」

 俺の渾身のパンチが、女の腹にめり込んだ。

 生意気なやつに、手加減してやる必要もない。

 向こうも本気で殺るつもりだったんだろうし。


 殺ってもいいやつは、殺られる覚悟があるやつだけだ。

 こいつには、それがなかったのだろう。


「ぐげぇ!」

 およそ、ヒロインらしくない嗚咽を上げて、口からなにかを吐き出した。


「オラァ! もう一発! 俺って優しいから、顔は止めてやるよパンチ!」

 拳を引くと、再び女の腹にパンチがめり込んだ。


「ごぇぇぇ!」

 女がその場に崩れ落ち、身体をくの字に曲げ痙攣している。

 この世界には魔法があるから、回復の魔法などもある。

 そう簡単には死なない。

 このぐらいやっても大丈夫だろう。


 俺は、審判をしている副会長の所に向かう。


「俺が勝ったんだから、問題はないよな?」

「……ええ」

 まさか、俺が勝つはずがないと思っていたのだろう。

 副会長の顔が引きつっている。


「あんたも勝負してみるか?」

「……いいえ」

 彼女が目を逸らした。

 生徒会では、爆炎が最強だったはず。

 今の俺の力を見て、戦いを挑むやつはいない。


「そうだろうな」

 俺は彼女の隣に置かれていた隷属の首輪を掴んだ。

 首輪は金属製で、冷たさが手に伝わってくる。

 銀色に光っている魔道具を手に取ると、ひっくり返ってる女の所に戻った。


 使いかたは――本で読んでいるので、問題ない。


「ゲホッゲホッ!」

 女はまだ地面に転がっていた。

 俺は、柔らかい赤い髪の毛を掴むと、女の顔を強引に上げさせた。


「ひぃぃ! ゆ、許して!」

「許すわけないじゃ~ん」

 俺は魔道具を女の首に押し付けた。

 その瞬間、首輪は閉じてロックされる。


「いやぁぁぁ!」

 パニックになった女が、首輪に手を伸ばした。


「こら、強引に外そうとすると――」

「ぎゃぁぁぁ!」

 突然、女が転がり始めた。


「いわんこっちゃない」

 女を立たすと、副会長の所に行って拡声器を奪った。


「俺は、今日からこの学園に通うことになった、榊ゼロだ! このお貴族様は、決闘で俺に負けて奴隷になった。その証拠に――おい、スカートめくれ!」

「え?! いや――ぎゃぁぁぁ!」

 命令を拒否した女が地面に転がる。


「奴隷になったやつは、命令に逆らうと、こんな具合になる」

「「「ざわざわ……」」」

 埋め尽くされた観客席から、ざわつきが聞こえる。

 いや、ドン引きしているのか?


「俺をこの学園から追い出したいやつがいるなら、いつでも決闘を受けるぞ。はははは!」

「「「ざわざわ……」」」

 ざわついているだけで、勝負を挑んでくるやつはいない。


「ほら、来い!」

「あっ!」

 奴隷になった女の手を引っ張ると、俺は闘技場をあとにして寮の201号室に戻ってきた。

 部屋の周りは女たちに囲まれている。


「ひどい! エーリカ様に、なんてことするの?!」「そうよ!」

「なんだ、うるさい連中だな。それじゃ、エーリカを賭けて俺と勝負するか? 負けたら俺の奴隷だが?」

「「「……」」」

 女たちが黙る。

 誰だって自分が可愛い。

 自分のすべてを賭けて、エーリカを取り返そうなんて言うやつがいるはずがない。


「エーリカ、残念だったな。お前の人望のなさが現れているぞ、ははは」

 この女が貴族だから、仲良くしていれば、おこぼれに預かれる――ぐらいの考えだろう。


「うう……」

 2人で、部屋に入った。


「さて、せっかく奴隷をゲットしたんだ。なにをして楽しむかな?」

「ゆ、許して……」

「許すわけないじゃ~ん、はは」

「うう……」

「それじゃ、とりあえずは――この部屋にいるときには、ずっとスカートをめくっててな」

「そ、そんな! ぎゃぁぁぁ!」

 エーリカが床に転がる。


「学習しないやつだな」

「ぐぎぎ……」

 半泣きになったエーリカが立ち上がると、スカートをめくった。

 顔は真っ赤である。


「よしよし、この部屋にいるときには、ずっとその格好でいるんだぞ」

「ううう……」

 彼女が俺を睨んでいる。


「はは、いくら睨まれても痛くも痒くもないな」


 すぐに、理事長から呼び出しを食らう。

 まぁ、騒ぎを起こしたのだから、当然だが。


「お断りします!」

 部屋に入ると、理事長からいきなり勝負の無効を提案された。

 そんなの拒否するに決まっているだろ。


「だ、だって……」

「この学園で、『決闘』は絶対のはず。それがこの世界のシステムでしょ?」

「た、確かにそれはそうなんだけどぉ!」

「それでは、授業があるので、私は失礼いたします」

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 エーリカを手放しても、俺になんのメリットもない。

 散々遊んだあとで、飽きたなら、それを考えてもいいが。


 周りの女たちから、ジロジロと見られつつも普通に授業を受けるが――やはり、エーリカを取り返そうとする連中はいない。

 あれだけキャアキャアと声援を送られていたのに、まったく人望があるなぁ。

 元々、性格が悪くて嫌われていたんだろうな。

 口では「酷い!」と言いつつ、「ザマァ」とか、溜飲を下げている女も多いハズ。


 ――怖い怖い。


 そのまま夕方、スカートをめくっているエーリカを楽しんでいると、彼女が理事長から呼び出しを受けた。

 外から聞こえてくる話からすると、学園に黒塗りのデカい車がやって来たらしい。

 ――ということは、エーリカの親がやって来たのか。


 この世界は女性上位だから、やって来たのは彼女のオカンかな?

 家の魔道具が持ち出されたと思ったら、お貴族様の娘が男に決闘に負けて奴隷になった――みたいな報告を受けたら、椅子から転げ落ちただろう。

 それで、すっ飛んで来たに違いない。


 成り行きを待っていると、エーリカが泣きながら戻ってきた。


「どうした? ママに怒られたか?」

「……勘当だって」

「勘当って意味解るか? 実家と縁を切られたんだぞ?」

「ママにもそう言われたわ!」

「ははは、おめでとう!」

「う、うるさい! ぎゃぁぁぁ!」

 俺に反抗的な態度を取ったので、首輪が反応したらしい。

 エーリカが転げ回っている。


 この世界が舞台になったラノベの時代には、まだ追放ものが流行ってなかったが、それも取り入れてしまったか。

 さすが俺。


「そういうわけで、実家から縁を切られたお嬢様は、生活していく自信があるんでしょうか?」

「うぇ~ん!」

「泣いたって始まらん。どうするんだよ」

 まぁ、家から出たこともないガキだし、想像もつかないのかもしれんが。


「うう……」

「性格は最悪だが、見てくれはいいんだ。街に出て裸踊りでもすれば、男が金を投げてくれるかもしれないぞ?」

「そんなの無理です……」

「俺が命令したら、無理でもやらないと駄目になるんだがなぁ」

 ここまできて、ようやく自分の立場が解ったのか、エーリカが土下座をした。


「お許しください。お願いいたします」

「よしよし、最初からそうやって素直になればいいんだ」

 彼女の頭をなでていると、今度は俺に呼び出しがかかった。

 理事長からだ。


 どうせ、さっきやって来たお貴族様絡みだろう。

 俺が理事長室に赴くと、デカい机に暗い顔が座っていた。


「どうするのよ……」

「さっき、お貴族様がいらしたんでしょ?」

「寄付金の打ち切りを告げられたわ」

「まぁ、自分の娘も切ったみたいですし、そうなれば学園に寄付する必要もないですよねぇ」

「他人事みたいに! あなたのせいでしょ?!」

「そう言われましても……私は決闘を申し込まれたから、それを受けただけですし」

「うう……」

 彼女が頭を抱えている。


「なんとかするしかないでしょ?」

「なにをどうするっていうのよ!」

「この学園には、デカい財産があるでしょうに」

「……そ、それは、そうだけど……」


 学園のデカい財産――それは、地下にあるダンジョンだ。

 そこは、生徒の教育、そして戦闘訓練を始め、素材やアイテムが産出する鉱山のようなもの。

 この学園の財政を支えている。


「私は、ダンジョンを攻略しますよ。そうすれば宣伝にもなるし、男の新入生も増えるでしょ?」

「あなたが?!」

「オバサンも、その可能性があると考えたから、私を強引に転校させたんでしょ?」

「理事長! そ、それはそうだけど……」


 まぁ、こっちは、ダンジョンにある隠し部屋やら、アイテムの場所など、ほぼ把握しているんだ。

 多少忘れている分もあるが――白紙からの攻略よりは、はるかに難易度が低い。


 それと――このダンジョンには大きな秘密がある。

 攻略に成功すれば、「賢者システム」をゲットすることができる。

 それを手にすることができれば、次の段階に進むことも可能だ。


「――というわけで、ダンジョンを攻略いたしますので、サポートよろしくお願いいたします」

「本気なの?」

「マジですよ、マジマジ」

「承知したわ」

 彼女が諦めたかのように言った。

 他に手はないからな。


「それで、オバ――理事長、お願いが一つあるのですが」

「なに?」

「おっぱい揉ませてください」

「くぅ! このマセガキ!」

 彼女が大きな胸を隠した。


「ははは」

 ノリで揉ませてくれるかと思ったが、やっぱり駄目か。

 まぁ、いいや。

 チャンスはいくらでもあるし。

 それまではケツの青い学生で我慢するか。


 おもちゃはいくらでもいそうだしな。


 ――数日あと。

 俺は学園の地下にいた。

 そこには、圧倒的な存在感を放つ巨大な両開きの扉がそびえ立っている。

 扉は暗い石造りの壁に埋め込まれ、我々と違うなにかの文明の名残を感じさせる彫刻と装飾で覆われていた。

 扉全体には無数の文様が刻まれ、それらは絡み合うように流れる曲線や幾何学模様を描き、中央には二匹のドラゴンが向き合うデザインが大胆に浮き彫りにされている。


「さて、行くか」

「ほ、本当に行くの?」

 ここに来てエーリカがビビっている。


「お前だって、なん回か実技で潜っているんだろ?」

「だって、浅層だけだったし」

「俺たちが目指すのは、そんなものじゃない。このダンジョンの攻略だ」

「そんなこと、本当にできるの?」

「なにごとも、やらないとできないんだよ。オラ! さっさと扉を開けろ!」

 俺はエーリカの尻に蹴りを入れた。


「ひゃん!」

「俺じゃ、この扉は開けられないんだよ」

 こいつは普通の魔力に反応するから、俺のマイナス魔力じゃ開かない。


「うう……」

 彼女が扉にタッチすると、地に響くような低音とともに扉が開く。


「よし! 開いたな――おら! 行け!」

「ひゃん!」

「どうした!」

「だ、だって、この装備が恥ずかしくて……」

 彼女が必死に手で股間を隠そうとしている。


「なんだ、ご主人様が用意した装備が気にいらないって言うのか?」

「す、スカートも短くて……見えちゃう」

「いいんだよ、見えて。お前の仕事は俺の盾になって、俺の眼の前でケツをフリフリする係なんだから」

「そ、そんな……」

「それとも、やっぱり尻尾もつけるか?」

「お、お許しください……」

「わかったなら――ほら、行け!」

 俺はエーリカに再び蹴りを入れた。


「ひゃん!」

「さて、行ってみるか!」


 俺のダンジョン攻略が今始まる。


 END




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