運命的な再会
「嘘……」
私が漏らした声は拍手に掻き消されたけど、私の体の中で確かに残響している。
嘘……何で彼がここに? 私の初恋の人。
走馬灯のように高校時代の思い出が脳内を駆け、私の体を熱くする。
「エ、エミさん……あの、エミさんだよね? お、同じクラスだった」
新人紹介を終え、すこし落ち着いた職場内。彼が私に近寄り、そう言った。
「あ、うん……久しぶり」
「懐かしいね、高校以来……ってここじゃ俺、後輩だよね。よろしくお願いします、先輩」
そう言って彼が下げた頭を私はまじまじと見つめてしまう。
手術したって聞いたけどその痕は見えない。
でも髪の毛に覆われているだけかもしれない。
その下の生々しい傷痕を想像してしまう。
それは私の心にあるのと同じくらい深く、黒々と膿んでいる。
「あ、うん。こちらこそよろしくお願いします。あ、あの」
「うん?」
「その、覚えているの?」
「うん? ああ、事故の時の? それがよく聞かれるんだけど全然……。
まあ、俺ってそそっかしいから階段から落ちたのも不思議じゃないんだけどさ」
「あ、そ、そう」
そうじゃなくて……私があの日、貴方に告白したこと……。
なんて恥ずかしくて言えない。まあ、忘れてしまったのならそれでいい……。
「あ、あの、エミさん!」
「う、うん?」
「良かったら仕事終わった後、一緒にどうかな? カフェとか」
「あ、そ、そうだね! 昔話とかあるもんね」
「ふふ、昔話って、俺ら全然、若いでしょう。
まあ俺、入院して留年。そのまま学校辞めちゃったから
あの後どうだったのか気にはなるけどね」
「ふふふっ。うん、じゃあ後でね」
業務終わり、私たちは並んで部屋を出た。
同僚女たちの視線が鋭かったけどそれはそれでいい気分だ。
「あ、エミさんこっちこっち。今調子悪いって」
「うん? そうなの? まあいいけど」
それにしてもまさか彼とこんな出会い方するなんて思わなかった。
人生ってわからないっていうけど本当に……。
「……ねえエミさん」
「なあに?」
「俺、実はさっきエミさんの顔を見た瞬間、思い出したんだよ。
エミさんが俺に告白してくれたこと……」
心臓が脈打ったのは彼の言葉のせいだけじゃない。
彼が後ろから私を抱きしめたのだ。
これって……。
「それと……フラれた腹いせにお前が俺を突き飛ばしたこともなぁぁぁ」
まるでジェットコースターに乗っているように
フワッと体が浮いたのは彼の言葉のせいだけじゃない。
ああ、エレベーターの調子が悪いっていうのは嘘ね……。
死ぬ。
でもこの胸の高鳴りは恐怖じゃなくてきっと、彼に抱きしめられたこ――