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後編

「あの~弟さんの病気は?私が治せるかも・・です」



その発言にリリーは激昂した。



「何、言ってるのさ。業病と言われる。魔力の流れが止まる病気だよ!救国の聖女じゃなきゃ無理って、村の回復師が言ってたさ!駆け出しのあんたじゃ無理。聖女はいつもこう。出来ないことをたらたらと!」



しかし、ロザリーは



「え~と、その病気の特効薬、もう、数年前くらいに発売されてます・・都の聖女様と錬金術士や、回復師の方々が協力して、開発されました・・」


「「「!!!!」」」


「ウソは言わないで!」



「その特効薬は、王命で、全国の女神教会、回復師、医師に伝達され、知らないってことはないです。もしかして、ヨド村の回復師さんは、悪い人で、ワザと高額なお薬を売っているのかもしれないのです。欺されているのです!」




図星かも知れないとリリーは思った。リリーの村にいる回復師は、20歳のころ、資格を取り、以来ずっと、村とその近郊、50年出たことない。人は善いが高額な薬を売っている。


村人は、よほど高額なのだろうと思っていた。


「そ、その情報をもっと詳しく教えなさい!」



リリーは聖女にがっつくが、



「え~と、教えてくれたら・・私を売るのはやめてくれるのですか?」


と微笑みながら返す。嘲笑をしているようだ。



「はあ?何言ってるの。今更キャンセルはできない!自分の立場をわきまえなさい!オスカーさん。腹ならいいよね。ドス、パンチしてあげて」



「んだ!」とドスが前に出るが・・・


聖女は・・・



「はあ~、キャンセルしてくれたら、貴方たちだけは、腕の2,3本斬って、お金だけ、返してもらえば良いと思ったのに」


と捨てはいた。



まるで、自分が実力者のような言い分に、周りは戸惑いを隠せない。



「何言ってるだ!」とドスが伸ばした手を軽くはたいた。



目はキリッとし、口角はあがり、口は三日月のような曲線を描いている。


一瞬にして、表情と雰囲気が変わった。



更に


「ザコ狩りは、つまんないのです!」


と口ずさみ。体が青白く光る、やがて、青が消え白く光っていった。



「救国の聖女・・・様」

リリーは回復師が言ったことを思い出す。


『この病気は白く光る聖女様でなければ治せません』



夢にまで見た。会いたかった救国の聖女?!


「まさか・・ドス、やめて、聖女様、お願い!お話を聞いて!」



しかし、聖女はリリーを無視して、ドン!と音が出るくらい地面を蹴り、高く飛翔し、およそ、聖女とは思えない怪鳥のような奇声を発する。



「キエエエエエエエエエエエェーーーーーーーーー!」



鳥の翼のように、両手を広げて、空中を一回転した。



「聖女山、奥義!飛翔対地攻撃型聖光破斬!」


と技の名前を叫ぶ。


彼女が、着地したとき、皆は呆気にとられた。


「・・・何だ。芸達者な聖女さんだぜ」


とオスカーが言った直後、バタン!と音がした。


護衛たちのうち、半数の7.8人は倒れている。


体を上から真っ二つに割られたものや、半身を削られたがまだ生きている者もいる。


「ヒィ、な、何だ。イタくねえ・・」


「チ、たった半数なのです!開祖聖女ヨシコ師は一度に、50の魔族を倒したというのに、まだまだなのです!


この技、聖魔法を圧縮して、[れーざー]とかいうものにして斬る聖魔法なのです!人は痛み感じない優しさ仕様なのです。皆様良かったのです!アハハハハハーーーー」



リリーは元魔法学院生、弟の発病を理由に、退学し、冒険者でお金を稼いでいた。


だから、わかる。


「あ・・あいつ、身体強化魔法と防御魔法も重ねて使ってるよ。結界を張るから、私の後ろに隠れて!」


リリーが杖を取ると同時に、ロザリーは白く光った手を、まるで剣で切るように振った。



「キャアアアーー」


リリーの右腕が魔法杖ごと切断された。



「おっと危なかったのです。魔導師は、利き腕を斬られると、魔法を使えなくなるパターンが多いのです。だから師団クラスになると、ガンドレッドで、利き腕を守るのです。こいつ、何もしらないお馬鹿さんなのです!アーハハーハハハハーー!」



「「「狂っている」」」


「これが、バレたらオスカー商会はおわりだ!皆、あの聖女を殺せ!飛翔をしたら弓だ!聖魔法が出る手を斬れ、いや、どこでもいい!」



「「「おおおおおおおお」」」」


と残った護衛は、斬りかかるが、


「あ~つまんないのです。ザコ狩りなのです。逃げれば生き延びられたかもしれないのに、本当にお馬鹿さんなのです!」



今度は


彼女はダンスを始めた。


体を極端にのけぞらせて、ゆっくりだが、突然早く動いたり、トリッキーなダンスを始める。


「奥義!モッツア夫人のダンス!」


と技の名前を叫ぶ。




そして、


「ホアアアアァアアアアア!」とまるで、狂人のような奇声を発する。



☆モッツア夫人のダンス


酒豪としても知られた領主の妻、モッツア夫人はダンスの名手でもあった。

あるとき、隣の領主と領地争いが勃発。

領地境の川を挟んで両軍が対峙。河を渡る方が不利なので、両軍膠着状態になった。

夫人は、河原に来ると、酒瓶を片手にダンスを始めた。

まるで、小馬鹿にしているようだと敵将は怒り、弓を射らせた。

しかし、矢は当たらず。まるで、酔っているかのようなダンスは更に3時間続いたが

一つの矢も当てることは出来なかった。

やがて、敵の矢は尽き。

そこを夫は自ら渡河を開始し、一本も矢を射られることもなく、全軍渡りきり。

見事、戦いに勝利した。

皆は、一芸に秀でた夫人、夫を助けたと大いに絶賛した。



[女神教典外伝烈女伝モッツア夫人の項目より引用]




「あ、あたらねえ」と一度斬りかかったものは次の瞬間に、確実に切断された。


やがて、攻撃するもの、いや攻撃出来るものはいなくなった。


・・・・


ズムとドスはリリーを庇って、既に亡くなっていた・・・二人ともリリーを覆い被さって庇っている。


「はあ、はあ、はあ、イタくない。だから、余計に怖い、怖い、怖い」


リリーは死体の下で、恐怖で動けない状態だが


一方、聖女はリリーに興味を持たずに、馬車の中を覗く。


中には、オリに入れられた村娘が10名ほどいた。

全員、各地でさらわれた村娘たちだ。


「皆様、大丈夫ですか?エイ!」


と身体強化魔法が掛かったままなので、南京錠を軽くちぎってオリを開けた。


「これから、皆さん、騎士団に行きます。保護されます。あ、その前に、怪我をされた方いたら、手を挙げて下さい!治療魔法を掛けるのです・・」


「「グスン、グスン」」


と皆恐怖のあまり泣いていた。


「フフフ、大丈夫、もう、怖いおじさんたちはいませんからね」


と優しく抱擁している。


ロザリーよりも背の高い女の子を優しく抱いて頭を撫でている。


まるで聖女のようだ。


そして、ロザリーは、まだ、斬られているが、野原で動けなくなり、生きている者に告げる。


「皆様~後、数時間したら、痛みを感じます。その後~草原の鷹やカラス、イタチやアナグマ、野ネズミたちが来ますから、生きたまま食べられて下さい!2,3日後に衛兵隊が現場検証に来ますから、そのとき、生きていたら、縛り首になりますから~よろしくなのです!」


「頼む。ここで終わらせてくれ。俺の裏の仕事、家族は知らないのだ・・なあ、頼む!」


オスカーが息絶え絶えに懇願するが、


「私の家族クロちゃんは私の仕事、知っているのです!ダメです。家族に隠し事はダメなのです!」


と斜め上方向に斬って捨てた。



そして、冒険者のところまで来て、覆い被さっているズムとドスを蹴っ飛ばして、リリーの生存を確認した。


口調は変わる。


「お前~うちの女神教会の信徒のトムさんにコナかけたのです。トムさん、可哀想に泣いていたのです。無一文で三日掛けて、腹すかせて、倒れそうになりながら村に帰ってきたのです!トムさんの言い分を聞いて、一応、お前らの言い分を聞かなきゃなって思って掲示版で探していたら、お前が声を掛けて来て、案の上、悪党で安心したのです!キャハハハハ!」


「そ・・そんな。欺されていたのは、私たち・・だったの」


「契約だと、お前が死ねばパーティーの金は全部、私のものなのです!被害者に返してやるから、安心して死ぬのです!トムさんだけじゃないですよね?」


「グスン、グスン、私はもういいけど、弟はヨド村にいる。弟は助けて・・・お願い聖女さんでしょ」


「はあ?都合の良いときだけ聖女を敬うのは嫌いなのです!トムさん一家を見習うのです!私が年少でもきちんと聖女様!と手を合わせるのです!」


白く光った手を手刀にし、首を斬ろうとした瞬間



近くに小さな魔方陣が浮かび。中から、黒猫が出てきた。


「ニャーニャーニャー、ニャン!」


前足で、ロザリーをポンポンして、いさめているようだ。


魔法を使える動物、クロは聖獣か魔獣か、リリーには判別は付かない。


「クロちゃん・・・そうなのです。抵抗をやめた人は殺しちゃだめなのです。教えなのです」


シュンとするロザリー


「ニャン!」


とクロは胸を張ってドヤ顔をする。


「それじゃ、私は弟のところに・・いける。ズムとドスの骨を、村に持って帰えられる・・私は反省します。どうか、見逃して、お願いします!」


涙ぐむリリーに、


「反省?しなくていいのです!」


「えっ!」


「トムさん。あんたに懸想して、クビになったって言う悪評があったのです。腕をくっつけてやるのです。お前はこれから、騎士団に引き渡されて、辺境の娼館でお勤めなのです!腕がなければヨロシクないと思う男もいるのです!腕はくっつけてやるのです。サービスなのです!」


と騎士団に引き渡すことを宣言する。


「ヒィ、聖女様、どうかそれはやめて!」


「はあ、私を性奴隷で売ろうとしたのです!あ、お前と話しているうちに、イタチがお前の右腕をかじっているのです!」


「あ~あ、全く、欠損復活は体力いるのです!エイ!そりゃ!」


と両手をリリーの失った腕に手を当てると、腕が生えて来た。


「いいか。お前、口が回るのです!お前の罪を騎士団で正直に話したら、女神様の慈悲がわずかにあるかもなのです!」



☆5年後


その後、私は、聖女に連れられて、誘拐された村娘たちと共に、騎士団に引き渡された。


正直に話した。その聖女が白い光を発すると言う話、聖女山というスクールは、公式には、存在しなくて、聖女ヨシコは、約50年前に、魔王がいたときの勇者パーティーの聖女というのは後に知った。


異界渡りの聖女で名はヨシコ、彼女はパーティー後方職をいやがり、聖魔法を、浄化や死霊、ゾンビ以外、つまり、実体を持っている魔族や人間のゴロツキにも使えるように改良した。


しかし、聖なる魔法を切断に使う事を良しとはしない女神教会と揉め。王家の庇護を受け。存在は埋没したという。


私は、あの後、過去の罪状が、冒険者ギルドにデカデカと張り出されて、冒険者としての人生は終わった。


今は、行く当てはなく、故郷に向かっている。弟は?いや、正直に話そう。人さらいは初犯だから、5年の公営娼館送りになって、そこで・・そこで・・沢山の男の相手をしてきた。



・・・

「姉ちゃん!どこいっていたのさ」


「!!あんた、生きていたの?」


「リリー!」


「え、とお姉様ですか?」


家族は、一人増えていた。弟が結婚して、父の徴税を手助けしていた。


ちょうど、5年くらい前に、村に騎士団がやって来て、回復師を、任務懈怠で逮捕。


村の回復師は、20歳のころに資格を取ってから村を出たことはなく、以来50年近く、情報は更新されず特効薬の情報は、回復師ギルドの啓示版にデカデカと張り出されていたが、見にも行かなかったそうだ。


無知は罪として、回復師の資格剥奪、強制的に引退。特効薬が開発されてから回復師に払ったお金は一部返金され、そのお金で特効薬を買えたと、弟は話してくれた。


・・・これが、彼女の言っていた・・・女神様の慈悲・・なのね。


リリーは、今まで何をしていたか話そうとしたが、父は軽く掌で制止した。


「とにかく、湯浴みと食事だ・・これからのことはゆっくり決めればいい」


「「「お帰りなさい」」」


父は知っていたのね・・・グスン


その後のリリーは、後妻として、普通の村人の家に入り、継子をまるで、我が子のように育てた。


人を欺すことの愚かさを生涯語ったと云う。













最後までお読み頂き有難うございました。

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