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エンドロールが流れた後で  作者: 柏木 遊
幕開け
5/19

龍の卵

よろしくお願いします

草々

お母様、お父様、お久しぶりです。

ナハティガルで御座います。昨日勇者について聞き、早速旅立った私は現在ドラゴンに追われております。

なにぶん卵が食べたくなりまして、ええ、モンスターの卵を拝借致しましたら。

それがどうやらドラゴンのものだったらしく。

魔法を使いたいもので御座いますが、生憎と私の連れがその巣で攪魔鉱石と云う非常に高価な鉱物を見つけまして、それを売りたいらしいのです。

名前から察されるとは思いますが。

厄介なことに、其れは所持している間は魔法が使えなくなる代物でござましたので。

魔法の使えない私達は現在その連れを脇に抱えて逃げております。

無理ぽよで御座いました。

私たちの冒険は此処で終わりかもしれません。

敬具。

               ナハティガルより


「ナハティガルッッ!!ぼさっとしてないで早く走ってくださいまし!!」

悲鳴にも似たカメリアの声がナハティガルの意識を現実に引っ張った。

「命が惜しけりゃソレを早く捨てなさい!!」

「今後の旅費を考えると無理ですわ!!」

「命あっての賜物じゃないか、金ならまた稼げば良いでしょ!?」

「グルルォォンン!!」 

後ろから迫る龍が吠えた。

まだ生きていたが、ずいぶん放置されていた様な状態だったそれを親に捨てられた物と判断し、二人は卵を食べてしまった。

よって。

氷帝龍ウバラは激怒した。

かの愚かな卵泥棒を除かなばならぬと決意した。

詰まるところ、ナハティガル達の自業自得であった。

抱えて飛ぶか、一瞬そんな考えがナハティガルの頭をよぎっるが、即座に却下する。

速度ならカメリアを抱えていても負ける気はしない。

しかし、飛ぶ際に生じる肉体の負荷に耐えられるかが気掛かりだった。魔法で身体強化魔法(バフ)を掛けなくとも、自分独りならば逃げ切れる自信があった。

しかしカメリアはそうではない。

エルフという種がどれほど頑丈かがナハティガルにはわからなかったのだ。

ので走った。

とにかく走った。

めちゃくちゃに走って、ぶっちゃけ自分が何処を走っているのか、もう分からない位走った。

一陣の疾風と成りながら、二人ともとにかく崖にだけぶち当たらないことを願って走った。

という訳でフラグは立った。

がさりと丈の長い叢を抜けた時分であった。

「あッルエぇぇ?」

違和感を訴えた足は、スカスカと空を空回りをした。

次の瞬間ナハティガルとカメリアを襲ったのは腹の中の臓物をひっくり返される様な浮遊感。

「ナハティガル、したっ、下っ!」

下には、滔々と流れる大河があった。

ナハティガルはガチンと間一髪でウバラの顎を回避し、其のままカメリアを庇う様に、離れない様抱き留めた。

上を見上げれば先程まで自分たちを追いかけていたウバラがこちらを見下ろしている。

金の瞳が二人を射抜いた。

「お前の卵、すっごい美味かったから!!」

叫んだのはナハティガルであった。

ウバラは龍の皇帝種である。

原初の神龍の源流を、色濃く受け継ぐ誇り高き龍の王として、これ以上相手を追いかけるつもりはなかったし、自分も不用心が原因の一部であることも理解していた。なのでこれくらいで見逃そうと思っていた。

思っていたのだ。

そう、今の発言を聞くまでは。

この魔族、煽ってんのか??と。

プッチンと、プッチンプリンの如くウバラの堪忍袋の尾が切れた。

「ウガアァァァルルロロロロ」

氷帝龍ウバラは其の儘ナハティガル達に大口を開けて突っ込んだ。

「おっ馬鹿なんで挑発したのよ!??」 

叫んだのはカメリアだった。

「いや、感謝の気持ちを込めて??」

少し、いや相当人の心がないナハティガルが応える。

まあ、そもそも人間ではないが。

「あなた本当に元人間!?」

詐欺でしょ、とカメリアは叫んだ。

「え、何私そんななんか言った!??」

「くっ、魔族に人の心を求めた私がバカだったわ」

「ごめんなんて??聞こえなかった」

「なんでもないわお爺ちゃん」

「サラッとジジイ扱いすな。てかマジでその鉱石手放して??」

「だが断るッッ」

だから、とナハティガルが反論しようとした時であった。

川の水面がすぐそばまで迫っていた。

ナハティガルは体の中の魔力を必死に制御し身体を強化した。

撹魔鉱石は魔法が使えなくなるだけで、直接触れているカメリアは兎も角、ナハティガルは体内での魔力操作だけはできた。

最悪、頭さえ守っておけばどうとでもなる。

翼を使い水への直撃は避け少し勢いを殺しながら川へ突っ込んだ。

バシャンっと、水面の水が跳ねる音と共に二人は水の中へと逃げ込んだ。氷帝龍を躱すのにはまさにはこれが一番手っ取り早いと思ったからだ。

春といえど、北部のそれは人類にとっては十分に寒い。

二人の肌を、刺すような冷たさと、濡れた衣服が付きまとった。

ウバラは其の儘空へとへ登り、水の中までは追って来なかった。

取り敢えずナハティガルは魔力反応を調べた。従軍中の癖である。

馬鹿でかい魔力反応があった。其れは、上空を旋回するウバラであった。

こいつ、浮かんできたところを一息にという魂胆か、まっこと執念深いったらありゃしない。

ナハティガルはちらりとカメリアを見た。

息は、まだまだ大丈夫そうだった。

だが顔が青白い。いきなり川へ飛び込めばこうもなるだろうなと思いつつ、其の儘泳ぐ。

今一度息を吸うため水面から出てみれば、喜んで奴は襲ってくるだろう。

今更カメリアに撹魔鉱石を捨てさせたところでどうにもならないし、魔法を放つ前にパクリとやられるのがオチだ。

というかピンチに陥るとお嬢様口調になるのか。

存外そっちが素なのかも知れない。

冷や水に潜りクリアになった頭であらぬ方向へ思考がずれた、というか現実逃避したナハティガルは背中の翼も使って水を掻き、成る可くこの場所から離れようとした。

流石に不用心すぎたか、カメリアに撹魔鉱石を捨てさせる前に自分がドラゴンの卵泥棒など仕出かさなければ良かったのだ。ちと、鈍ったな。

そうナハティガルは冷静に分析したが、判断もそうだが武力の方も随分と無理か効かなくなったものだと思うのだった。引きこもっていたツケが回ったのだ。

鍛え直さなば。

強いことで損はない。だが弱くある事は得もしない。

計算尽くで生きてきたナハティガルらしい考えだった。

その時、くいと服を引っ張る力があった。

気づけば膨大な魔力反応は消えていた。

流石に死んだと思ったのだろうと当たりを付け、水面へと浮上した。

「ゴフッ、ハァッ、ハッはー、あぁ、死ぬかと思った」

「ゲホッフーッフーッゔう、フッフッフッ、ハーハッハッハッとったど撹魔鉱石!!」

「マジで君も相変わらずだね?!」

高笑いをし、ぐっと撹魔鉱石を持った手を高く挙げてガッツポーズをキメたエルフはそれはそれはイイ笑顔をしていた。

そしてそれが妙に様になっているのだからまたなんとも言えない可笑しさがあった。

「おーい、大丈夫かーーー!!」

遠くから、人の呼ぶ声がした。

「じゃあ丁度いいね、私はもう少し流されて人間に化けてくるから。岸まで一人で泳げるかい?」

「流されてって、・・・ええ、その位は」

少し先で落ち合おう、そう言ってナハティガルはカメリアから手を離し、其の儘水中へと潜っていった。

盾役がいなくなったカメリアに、ザブザブと水の流れが容赦なく襲った。

とは言えエルフ、森に生きる狩猟民族である。

幸にして、流れが比較的穏やかな川であったので、さほど苦にはならなかった。

「さあっむーーー」

川の冷たささえ気にしなければ。 




最近ヒロインってなんだろうと考えてます。

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