続
ちょっとまだ本編までかかります
あ、まずい。
これはマジでやらかしたなとナハティガルは思った。
少々、いやかなり相手を舐め過ぎていた様だった。
目の前にはさっき落馬したヴェルデ卿、背後にはさっき到着した勇者一行。
門前の宿敵、後門の勇者パーティ状態だった。
いや、割とマジで死んだなと一周回って冷静になった頭でナハティガルは活路を考えた。
「死ぬ前に、ツナマヨが食べたかったな」
この世界では作るのはかなり難しいが、好物だったのだ。
ナハティガルはぽつりと独りごちた。
今はもう帰れない、故郷の味だ。
「勇者よ、ひとつ聞かせろ、私の部下はどうなった」
「私たちが倒した」
「全員か、」
朗々とよく通る声で勇者が応えた。
「そうだ」
ナハティガルはゆっくりと瞬きをしてから言葉を発した。
「そうか、部下の最期を聞かせてくれたこと、感謝する。だが、そうか、適当に逃げろと言ったのに、あの馬鹿どもめ。さて、責任は最期まで取らなきゃなぁ」
殺したのは勇者だ。
たが、部下たちは私の命で動いたのだから、私が殺したようなものじゃないか。
戦なんぞ幾らでもある。
でもお前達の替えは居ないから。
ナハティガルは高い空がいっそう遠く感じた。
その後に、恨むぞと、一言小さく呟くとナハティガルは魔法を展開した。
「軍事魔法、冬の娘の腕」
キイイィと、耳鳴りの様な高い、絹を裂くような高い、歌の様なものが聴こえた。
大地を瞬く間に白い煙が染めていく。
魔法が終われば、冷やり白い風が冷気と雪を巻き上げて大地を撫ぜた。暫くすると、耳鳴りのような唄は鳴り止み、痛いほどの静寂が耳の奥に押し寄せた。
「うん、取り敢えずあの男は死んだか。しかし勇者は取り逃したな。何にせよ、ここまでの大敗は初めてだ。結局お前に踊らされてしまったな、これで満足か?ヴェルデよ」
いや、もう死んでるかと、ナハティガルはほつぽつと人型の残る氷で覆われた雪原を見て呟いた。
「これで勇者が引いてくれてよかった」
ストーリー上これで引くことは分かっていた。
そして部下が全滅することも。
全部全部知っていた。
知っていた癖に、防げなかった。
勇者を逃がしたのも、あのエルフ、カメリアの魔法である事は分かっていた。
しかし全て原作通りに進んでしまった。
ふと、ナハティガルは雪が反射する光が目に入り、その余りの強さに目眩がした。
本音としては、あの魔法でこっちはの魔力はもうすっからかんなのに、あんな化け物共となど、やってられないと思っていた。
やっていられないのだが。そのはずなのだが。
どうにもドス黒い感情が、胎の中で暴れたがっている。
「最悪だ」
ちっと舌打をすると、ナハティガルは飛び去った。
ありがとうございました。




