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8.不思議の国と双海雫という少女

 【不思議の国のアリス】の完全勝利。

 そんな誰もが予想し得なかった事態に観衆はざわめき、驚きを隠せずにいた。

 歓声止まぬ広場に戻り、アリスはココアとシズクと共に勝利を喜んだ。

「やったやった!勝ったよココアちゃん、シズクちゃん!」

「うぇーい。さっすがアリスー。信じてたよウチの嫁っ」

 アリスに抱きつき頬ずりをするココアを引き剥がし、シズクは労いの言葉をかけた。

「どさくさに紛れて何を正妻を気取っているんですか。アリスさん、ナイスでした」

「エヘヘ。これでギルドレベルが上がったから、次のイベントも出られるね」

「おー、暴れてやろーぜっ」

「このまま突き進みましょう」

 今にも祝宴を開きそうな盛り上がり。

 そこへエレンが粛々と近付いた。

「ありがとうございました。いいバトルでした」

 慌ててアリスも頭を下げる。

「こちらこそ!すっごく楽しかったです!」

「不思議と悔しくはありません。実力の差は圧倒的でした。どこかのプロなのではないかと疑うくらいには」

「違います違います!ただの…っと」

 年齢と学生であることを口走りそうになり、口に手を当てた。

 それを見てエレンは笑い、

「次は負けません」

 と、声色に強気を混ぜて言った。

「イベントで相見えるのを楽しみにしています」

「は、はい!よろしくお願いします!」

「次もウチらが勝つから。そこんとこよろでーす」

「あんた次はマジでズタズタにしてやるから、覚悟しときなさいよ」

 エレンの後ろでリリーシアがココアを指差す。

「いつでも相手してあげるよ、リリーちゃん」

「ムッカつく…!」

 ヘラヘラと笑うココアに、リリーシアは最後までむかっ腹を立てた。

「それではまた。【不思議の国のアリス】の皆さん」

 負けて尚も強者らしい在り方で、【セイレーンの瞳】は去っていった。

「カッコいいなぁ、エレンさん。大人って感じ」

 なんて呟くと、そのエレンからフレンド申請が送られてきた。

『もしよろしければ、お友だちになっていただけると嬉しいです』

 凛々しく芯が一本通った強さを持ちながら、面と向かって伝えるのは気恥ずかしいという奥ゆかしさのギャップに、アリスは思わずキュンとした。

 もちろん返事はイエス。

 その後何度かメッセージを交わし、ときには共にモンスターの討伐に向かうような仲にまで発展するのだが…それはまた別のお話。





 真っ白なクロスを敷いたテーブルを挟んで、雫とその父親は食事をしていた。

 食器の動く音だけが鳴る部屋。呼吸の音すら大きく聴こえる。

 何人ものハウスキーパーに傍に仕えられながら、無機質な栄養摂取のようにナイフとフォークを動かす。

「ごちそうさまでした」

 先に席を立とうとメイドに椅子を引かせる。

「雫」

 低い声が呼び止める。

「成績が下がっているようだな。どういうことだ」

 うんざりを内心に留めながら返す。

「申し訳ありません。次のテストでは必ず」

「どういうことだと訊いている」

 最初から雫の答えを待っていないように、父親は厳しい目を向けた。

「うちの社で取り扱っている以上、禁止とまでは言わぬ。だが児戯にいつまでも興じているからこういうことになる。双海家の人間としての自覚を持て」

「お言葉ですが、ゲームはただの遊びでは」

「話は以上だ。行っていい」

 雫はワンピースの裾を握り締める。

「先立ってのお約束、守っていただけることを信じております。お父様」

 憤りを秘め悔しそうに、雫は父親に一礼した。




 名前:シズク

 Lv:28

 種族:悪魔族

 職業:魔銃士

 称号:【魔弾の射手:STR+200 DEX+2000】

 HP:1600/1600

 MP:2800/2800

 STR:310

 VIT:100

 AGI:380

 DEX:430

 INT:370

 LUK:120

 魔法:【水魔法:Lv4】

 装備:《サクリファイス:スナイパーライフル:STR+700 DEX+60:レアリティB》《魅惑の黒衣:体:HP+1500 VIT+150:レアリティA:【魅了】【制圧】》《悪魔の腕:両手:DEX+80:レアリティD:【器用】》《悪魔の脚:両足:AGI+70:レアリティD:【回避】》《空の悪魔のピアス:両耳:INT+600 LUK+10:レアリティS:【空間収納】》

 固有スキル:【邪心】【アイテムボックス】

 スキル:【射撃術:Lv10】【短刀術:Lv6】【魔弾】【調合術】【爆弾魔】【水泳】【水心】【状態異常耐性:小】

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