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1.不思議の国と月下のバトル

 月明かりと静寂に満ちた西洋風の城下町――――【Castle Town】

 シンと張り詰める夜の帳の下、物陰に隠れながら移動する影が複数。

 その影を視認する目。城の塔のてっぺんから、その人物はスコープを覗き闇に紛れる獲物を捉えていた。

「ココアさん、NE方面100メートル先に二人です」

「おけ」

「アリスさん、正面の建物三階。それとその建物の真裏に一人ずつ」

「うん。わかった、合図よろしくね」

 各々に指示を出しながら銃身を時計塔の小窓に向ける。

「カウント始めます。3…2…1…」

 静寂を掻き消す怒号が一つ。引き金が引かれ、射出された弾丸が時計塔の小窓から様子を窺っていた男の眉間を撃ち抜いた。

「は?!やられた?!」

「銃声城の方から!!射線通すn――――」

 男の言葉が途切れる。言葉を紡ぎ終える前に、首と胴体が離れ視界が暗転した。

「はーいゴメンねー」

 混乱に乗じて襲撃したその人物は、柄の長い鎌を肩に担ぎ、フードの奥でペロリと小さな舌を出した。

 尤もそんな可愛げのあるその所作も、そこにいた者にとっては恐怖の襲来でしかないのだが。

「【アサルトファイア】!!」

 アサルトライフルから炎を纏った弾丸が連射される。手元は大きくブレたが、フルオートのそれは至近距離というのも相まって全弾命中。炎が身体を貫き燃焼させた。

 しかし、

「ざーんねん」

 羽虫でも落とすように炎を振り払い、軽薄めくくらい飄々と無傷を主張する。

「バーイバイ、っと」

 男は泣きそうになりながら、鎌の先から放たれた光線に呑まれ消滅した。

 一方、建物の裏で様子を窺っていた者たちは、消えていく仲間の反応に困惑しながら慌てふためいていた。

「ちょっと待てよ何が起こってんだ!!いくらなんでも早すぎだろ!!まだ開始五分も経ってねえよ!!チーターじゃねえのか?!運営仕事しろよくそっ!!」

 剣とサブマシンガンを構えながら、右を左を気にかける。

 物音一つ、風のそよぎ一つに過敏になるも、闇に紛れたそれの動きは捉えられない。

 疾風が一陣。

 黒いローブをはためかせ、男の左側から体勢を低めて猛スピードで突進してくる影。

「来たぞ!」

「こ、このっ!!」

 威嚇を込めてサブマシンガンを乱射する。が、掠りもしないどころか、影の主はまるで怯まず更に加速し壁を蹴って走った。

「【ブラックアウト】」

「うわあ!!」

 視界が暗闇に包まれたところに一閃。

 防ぐことも避けることも叶わず首が切り落とされる。

 ズザァと滑りながら着地し上を向き、胴体だけになった男の亡骸を蹴り三階の窓まで跳躍。窓を割って中へ侵入した。

 そこで待ち構えていた男は、手にしたグレネードのピンに指を掛けていた。

 倒れていく仲間たちを見て、自分だけでは勝てない。ならばせめて一人でも道連れにという自爆を覚悟していたのだろう。

「悪く思うなよ!!一緒に死んでくれ!!」

 男は敗北と引き換えにした相手の死を確信したが、目の前に爆煙が広がる光景は見ることはなかった。

 ピンを抜くよりも早く、窓の外から撃ち込まれた弾丸がグレネードを持った方の腕を吹き飛ばしたからだ。

「なんだそれ…!!」

 狼狽える隙すら与えられない。

 真上から振り下ろされた剣が線を描き、男は赤い血しぶきのようにダメージエフェクトを巻き上げ消えていった。

 敵が全滅し、ファンファーレと共に空にWINNERの文字が浮かび上がる。

 少女は剣を払うと、騎士を思わせる様で鞘に収めた。




 その様子をモニターで窺う者たちの反応は様々である。

 歓声を上げ興奮する者、驚嘆と唖然に彩られる者など。

「圧勝じゃねえか。すげえなあいつら」

「今やられたの【サザンクロス】のトップメンバーだろ?そこそこ強いので有名なギルドの」

「それをたった三人で勝つってなんだよ。誰だあいつら」

「知らないの?最近そこら中のギルドにPvP持ち掛けて、全戦全勝してるとこだよ。確かギルド名は……」

 




 ログハウス型のギルドホーム。

 閑散とした部屋に戻るなり、三人の中の一人がソファーへとダイブした。

「くぁーつかれたー!」

「お二人ともおつかれさまです。いい連携でした」

「シズクちゃんも。狙撃のタイミング、ナイスだったよ」

「フフ、ありがとうございます」

 フードを脱いで笑い合い、ハイタッチを交わす少女たち。

「アリスーウチも褒めてよー」

「うんっ。ココアちゃんも頑張ったね」

「ウェッヘッヘ〜」

 浅黒い肌に金髪が眩しい天使族の少女、ココアこと綾白心愛。

 ギルド【不思議の国のアリス】の副リーダー。ギャル。

「今回はシズクが最少キルだったねー。ジュース奢れよ」

「私は今回後方支援に徹しましたもの。わ・ざ・と、キルを譲ってあげたんですよ。わ・ざ・と」

 ツンとそっぽを向き、小さく頬を膨らませる長い髪の悪魔族の少女。名前をシズク。本名を双海雫。

 【不思議の国のアリス】参謀長にして、日本経済の中枢とも呼べる双海コーポレーションの一人娘。

「私がアタッカーなら、ココアさんより多くキルが取れました」

「はー?ウチなら1vs5でも余裕だったんですけどー」

「私なら1vs10でも余裕ですが?」

「あ?」

「なんですか?」

「ケンカしないの。もうっ、みんな頑張ったでしょ」

 そしてこの人間族の少女、アリスこと伏木アリス。

 この癖のある二人を束ねる【不思議の国のアリス】のリーダーで、漫画もアニメもゲームも好きなオタク。

 三人ともが高校二年生の青春真っ盛りである。

「これであと一勝だね。この後どうしよっか。もうログアウトする?」

「えー?明日土曜日だしもうちょいやろー。シズクもいいっしょ?」

「もちろんです。お付き合いしますよ」

「じゃあ軽くダンジョン行こっか。どこがいい?」

「【屍龍の窟】行きたい!素材集めたいんだよね!」

「いいですよ」

「せっかくだし、誰が一番早くボス倒せるかとかやろっか」

「タイムトライアルですか?望むところです」

「よし、行くぞー」

「「おー」」

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