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オークションからの始まり

人魚は救われる2

作者: ようせゐ




「……」

腹もくくった、近くの川は海に通じてる。

後は………彼を殺すだけ

私は彼の寝室へ

勢いよくドアを開けると、パジャマ姿のルートがびっくりして目を覚ました。

彼の首へほうきの柄を押し付け、ベッドの上に押し倒し、馬乗りになって彼の喉にナイフを押し付ける。

「ッ…!」

躊躇はしない。彼が口を開いて命乞いをする前に…!

しかし彼は、あごを上げて私のナイフを誘った。

「何を…?」

彼のかすれた声が聞こえてくる。

「いいですよ…僕を殺して川を泳いで海まで逃げてください…」

「なんで…!」

私はナイフはそのままにほうきの柄で押さえつける力を弱めた。

最後に聞いておきたいことがある。

「愛する人に殺されるなら」

「やめて…」


「私を買ったのはなぜ?あのオークションのことは知ってる…求めるものがしかるべき対価を払えば求めるものに出会えるものだと、あなたが私を求めたのはどうして…?」

「…夢で…会ったんです」

「誰と?私と?」

「ええ、菜の花の咲く暖かい場所であなたと会った。あなたと手をつなぎたくて…僕は手を伸ばした。でも、あなたは三千の泡となって消えてしまった。後に残ったのは、少し肌寒い朝の中の、毛布のぬくもりだけ…」

私はその話を聞いて思い出したその夢は…

まだ海の水が少し冷たいころ、夢の中で男の子を見たことを思い出したのだ。

ルート、夢の中の彼とルートはそっくりだ。

「何で…」

悔しい…私は彼に恋をしていた。

彼の顔を見れば見るほど決心が揺らぎ、私の意思は水泡の様に小さく弾けて消えてしまった。

「…あの会場であんなに小さく怯えていたのに、今のあなたはとても逞しくて素敵ですね」

「…やめて」

ずるい…

「ごめんね」

「そう思うなら今すぐ私を海に返して…もう二度と私を呼ばないで!」

「それは…っ!……できません…」

「…あなたを殺しても私が元に戻る保障なんて無いし…」

「戻りますよ…僕を殺せば貴女は自由になれます」

「あなたを殺せば…?」

「川も近いですし…自由になりたいならどうぞ、僕を殺してください」

「なんで?海に返してはくれないと…言ったくせにっ!」

「貴女が…どうしても自由を望むのなら…」

「どういうこと?なんでっ…」

ルートのことがわからない…っ!

海に返してはくれないといったくせに…

どうして自由のために貴方を殺せというの?

「僕はどうせ化物です…人の皮をかぶっただけの…」

「貴方はいつも何も教えてはくれないじゃない…」

あなたのことが、私にはわからない…!

「そうですね…一言で言ったら…貴女のことが好きだから…ですかね?」

「好きって…」

ルートは私の頬に手を伸ばし優しくなでると、ニコリ、と笑った。

その笑顔は少し寂しそうで…私は彼を助けたいと思ってしまった。

「もう…時間です…早く逃げてくださいっ」

突然、ルートは苦しみだした。

私は何が起きたのかわからずに戸惑う。

「ど、どうして?何が…」

「は…やく…に…げて…僕に…食べられる前に…っ!」

「え?…ひぃ」

ルートは牙が生え、角が生え、理性を失った。

私を…食べようとした。

突如として化物の姿になったルートは、いつもの優しさの面影はなく。

私は走って逃げるしかなかった。

「なんで…?何が起きたの?…っ…」

私は床に落ちていた瓦礫に引っかかり転んでしまう。

足も怪我をして、動けない…

どうしよう…どうしたら…

ルートだった化物は私を食べようと口を開けた

「るーと…ルートたすけてっ!」

化物は動きを止めると、私から手を離すといつものように優しく微笑んだ。

「早く…僕を殺してください」

「そ…れは…なんで?」

「さぁ、僕が理性を保っているうちに、僕を殺してください」

「るー…と…?」

「僕は吸血鬼なんです…だから夜にこうして暴走してしまうことがあります」

「それなら…なんで私は無事なの?」

「僕は、もう誰も傷つけたくはないです、だから、殺してください」

「こうやって今も話せているじゃない、ならなんで」

「僕に…貴女を守らせて下さい、だから、早く僕を殺して?」

それじゃあ、貴方は…貴方が救われないじゃない。

私は、私を…っ…

「私に…好きな人を…殺させるつもり?」

「す…き?すきなひとって…まさか…」

途端に真っ赤になるルートを見ていると可笑しく感じて私は笑った。

「ふふっルートったら可笑しいのっ!」

「だって、僕は化物だよ…?いいの?こんなので…」

「そうね、でも、好きになっちゃったんだからしょうがないじゃない」

「そ…れは…僕でもいいの?」

「だから、私は貴方が好きなんだって…ん」

私の言いかけた言葉はルートの唇によって塞がれた。

「あのね、僕も君が好き…今…勝手に…キス…しちゃってごめんね」

ルートは顔をそむける。

耳まで紅になっていたので、それにあまり意味はないかなとか思った。

私は急にされたそれに驚き、顔を紅に染めた。

「別に…いいよ、驚いたけど、嫌じゃ…なかったから」

「ん…くっ…でも…やっぱり、血を飲まないのはきついかな…」

「ねぇ…その飲む血って人魚のでも大丈夫なの?」

「え?ちょっと待って…君の血を…飲んでもいいの?」

ゴクリとつばを飲み込んだ音がした。

「えと…死なない程度なら、いいよ」

「それな…ら…んく…ちょっとだけ…もらうね」

ルートは私の手首を口に咥え牙を突き立てると血をすすりだした。

「いっ…」

「ごめんね…」

「それ美味しいの?」

「好きな人のだと、すごく美味しい少しでも足りる」

ルートが出てきた血を舐めると血が止まった。

「ねぇ…なんでルートがなめたら血が止まったの?」「さぁ?吸血鬼の特性らしいよ」

「これからは、私の血をあげるから、暴走しないよね?」

「そう、だね」


続かない♡






続かない…

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― 新着の感想 ―
[一言] ガッツリ使って頂けたのは嬉しかったです~全然大丈夫ですよ とても素敵なお話になりましたね。 ハッピーエンドは大好きです。
2020/09/22 23:14 退会済み
管理
[一言] におわす程度だと思ったら割とガッツリ使って頂きまして なるほど、ルートくんは吸血鬼だったのですね。 なんか血を吸われるところはドキドキしてました。ルートくんが紳士でよかったです。
2020/09/21 23:31 退会済み
管理
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