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3.


私、リザベル・フォリス。

先日うちの天使(弟のケイト)が1歳になったの。

よちよち歩く姿はまさにこの世のものとは思えない程の可愛さで、目の中に入れても痛くないどころか、もうケイトの瞳の中に住みたいな、なんてサイコパスな事を常々考えてるの。



「リザベル、そういうことは侍女達がするから。お前の手が汚れてしまうよ」

久しぶりの休暇をもらって家にいる父様が、ケイトのおしめ替えをしている私に顔を引きつらせている。



「何を言うの父様!天使のおしめ替えをさせていただいてるのよ!むしろ光栄ですわ!」

鼻息荒く答える私に、父様は黙ってしまう。 


ああ、もうなんて可愛いの。どうしてこんな可愛い子を嫌っていたのかしら。

どうかしてるわね、ゲームの中の私。

ケイトの行動を温かく見守りながら、ゲームの中でヒロインに過去の事を話すケイトの言葉を思い出す。




───姉さんは、僕のことをずっと嫌っていた。顔も見るのも嫌だと、家の中でもずっと避けられていたよ。だけど僕は一度だって姉さんを嫌いだと思ったことはないんだ。こんな突然会えなくなるなら、もっと僕の方から歩み寄れば良かった───




ケイトーーー!!!

もう!もう!この子は!!!

何ていい子なの!

本当に私の実の弟なの!?

大好き!!!




先ほどよりもさらに熱い視線をケイトに送っていると、母様から声をかけられた。



「リズ、ケイトのことが好きなのは分かったから。今日は教会に寄付するドレスを持っていく日でしょう。もう選んだの?」



「あ!忘れてました・・・すぐに選びます!」






そう、今日は月に1度、私のドレスのお下がりを教会に寄付する日。


この提案をしたのは私だ。

前世の記憶が戻る前の私は、週に2〜3着ドレスを買っていた。それにバッグや靴も。もちろん屋敷に呼びつけてのオーダーメイド。

しかも、仕上がりがちょっとでも気に入らなければ1回も着ることなく捨てていた。


・・・罰当たりすぎる。


今はそんな贅沢はやめて、パーティなど必要な時だけドレスを頼むようにし、着なくなったドレスを教会に寄付することにした。だって捨てるよりも誰かに着てもらえた方が仕立て屋さんもドレスも嬉しいはずだ。




クローゼットを開き、これはちょっと色が派手すぎる、これはデザインが露出多目だし・・・と、ぶつぶつ呟きながらちょうど良さそうなドレスを数着選び、侍女に渡す。

すでに洗濯済みなので、後は鞄に入れるだけだ。

いつもは従者が教会まで届けてくれるのだけど、今日は私も一緒に行く。

これも私の希望。父様も母様もあまり良い顔はしなかったけど、自分のドレスをどんな子達が着るのか見たかったし、教会にも興味があった。

教会は、町の人たちが神に祈りを捧げる場所であると共に、親のいない孤児達を養う施設でもある。だいたい12〜13歳になると施設を出て働きに行かなくてはならない。ただ、教会では学問を学べないので、日雇いくらいしか働き口がなく、皆その日暮らしの生活になってしまう。子どもができても養うことができず捨てられて、また孤児がうまれる。負の連鎖だ。

教会は町の寄付金で成り立っているから、孤児が増えれば寄付金だけでは賄えなくなり、子ども達を養えなくなる。


え?何故国が助けないのか、って?




それはね、










未来の王妃(私)が孤児に税金なんか使いたくないって言ったからよ!













本当にろくでもないよ、ゲームの私。


現時点では税金を使って国から教会に補助してるんだけど、ゲームでは後数年で打ち切られる。

リザベルが王妃になるからね。



もちろん今の私はそんなことしないけど、そもそも教会で学問が学べないことがどうかと思う。

学は何よりも必要だ。誰にも奪われない財産になる。

だから私は、教会に行って自分の持っている知識を分けようと思った。8歳の小娘が何を言ってるんだって感じだけど、前世とは違ってこの世界では5歳から家庭教師をつけられて一般教養を学ぶ。

記憶が戻る前の私はことごとく教師を辞めさせて全く学んでなかったけど、心を入れ替えてからは真面目に取り組んできたつもりだ。




私は、昨日やっと完成した物をカバンに詰めて、馬車に乗り込んだ。



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