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21.


フェリオ・シルバー


カイルのルートで悪役だった人よね。リザベル王妃の側近をしていたとか言ってたかしら。


「・・・ル。」


ヒロインがカイルに近付くのをことごとく邪魔してきたからよく覚えてる。宰相でありながら悪事に手を染めていたのよね。


「リ・・・ル。」


最後に断罪される場面ではスカッとしたけど、彼の過去を知ってからどこか憎めないというか・・・。


「おいって!聞いてるのか、リザベル?」


急に黙りこんだまま何の反応もしない私を、レイドが心配そうに覗き込む。


「あ!ごめんなさい。ちょっと考え事をしてて。」

ゲームでのフェリオの事を思い出して、自分の世界に入ってしまっていた。


レイドが少し気まずそうに口を開く。


「さっきのフェリオの事か?」

「え?」

「俺の為に怒ってくれたんだろ?」

「・・・!もしかして聞こえてたの!?」


どうしよう。レイドには聞かれたくなかったのに。

"出来損ない"や"見捨てられた"という発言も聞こえてしまったのだろうか。私は思わず顔が曇る。


「最後の方だけな。どうせ俺が教会にいた事を馬鹿にしてたんだろ。そーゆーの慣れてるから、リザベルは気にすんな。」


全て聞かれたわけではない事にほっとしたが、普段から嘲罵を浴びせられているのかとショックを受けてしまう。


「ほら、そんな顔すんなって!せっかく美人なんだから笑っとけ。」

レイドが私の頭にポンと手を乗せた。

笑顔で茶化してくるのは、私を安心させる為だろう。

彼の方が傷付いているはずなのに、自分よりも私の事を気遣ってくれる。

こういう優しい所、昔から変わらないわね。



「まぁ、リザベルの俺への熱い思いも伝わったしな。あ、もしかして俺に惚れてるとか?」


「なっ、そんな訳ないでしょ!あれは腹が立ったからで!つい勢いで言っただけだから!」


しんみりした空気を壊すようにレイドが私をからかう。

もう!こういう所も変わらないのね!

私が怒って背を向けると、レイドは少し焦ったようだ。


「悪かったよ。リザベルがああ言ってくれて嬉しかった。ありがとな。」

「・・・。」

「なぁ、こっち見ろよ・・・頼む。機嫌直してくれ。」

チラと見ると、まだ私が怒っていると思ったのかシュンとしている。

やだ、ちょっと可愛いわ。



「大切な人が悪く言われたら黙ってられないでしょ。」


「え・・・?」


レイドが聞き返してくるので、聞こえなかったのかともう一度繰り返す。


「だから、大切な友達が悪く言われたら怒るに決まってるでしょ!」


「あ、ああ。何だ、そう言う事か。友達って意味な。」


ブツブツと呟くレイドの顔が僅かに赤い。


え、違うの?

私友達認定されてないとかだったら泣くわよ。




「すまない!遅くなった。」


声がする方へ振り向くと、セリオス様がこちらに向かって走ってきていた。


「おせーよ、セリオス。」

「悪い。宰相に呼び止められていた。それで、もう話したのか?」

「いや、まぁ色々あってこれから話すところだ。」

「どうしてセリオス様まで?」

「俺が呼んだ。セリオスもいた方が良いと思って。」


セリオス様も?

てっきりリンナの事だと思っていたのに。


「レイド、話ってリンナの事じゃなかったの?」

「いや、侍女の事じゃない。」


急に真剣な顔になったレイドは、辺りを見回し、周囲に人気がない事を確認すると声を潜めて話しだした。



「実は最近、城の中である噂が流れてるんだ。」



何だか胸騒ぎがした。

私を見るレイドの顔が、いつになく強張っていたから。




「噂って、どんな?」













「俺とリザベルの父さんが国王暗殺を企てている、と。」





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