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19.


何もね、主(正確には私ではなくて父様だけど)より先に恋人が出来たことを怒っているわけではないのよ。恋人ができた事の報告義務だって特にないわ。でもね、私にくらい話してくれてもいいと思うのよ。そう思わない?だって貴方は私の専属侍女なんだもの。いえ、例えそうでなかったとしても


「お嬢様、私に言いたいことがあるのなら仰ってください。」

「いいえ。特に無いわ。」

「特に無いのならそのように睨まないでください。仕事に集中できません。」

「分かったわ。」


駄目だ。やっぱり本人には聞けない。

今朝レイドから届いた手紙のせいで、気付けばついリンナを睨ん・・・見つめてしまう。


「何か心配事でもおありですか?今朝手紙を読んでから様子がおかしいようですが。」


バレてる!


「えーっと。いえ、何も。そうだ!リンナ、ちょっと買い物に付き合って欲しいのだけど、明日は空いているかしら?」

とりあえず今は手紙の事よりもレイドへの贈り物を優先しよう。

「申し訳ありません。明日はちょっと所用があり、お休みをいただいております。明後日でも宜しいでしょうか?」

「あら、そうなの。大丈夫よ。」

それなら仕方ない。今日と明日で何を贈るか考えよう。


もう手紙の事は一旦忘れようと紅茶を啜っていると


「リンナは、"こいびと"がいるのですか?」


ケイト!?


私の横でお菓子を食べていたケイトが突然の爆弾発言をする。

危うく紅茶を吹きそうになった。


「恋人ですか?何故そのような事を?」

意味が分からず聞き返すリンナに、ケイトが更に追求する。


「侍女達が、リンナが最近よく出掛けるから"こいびと"と会っているんじゃないかって言ってました。そうなのですか?」


純粋なケイトの前で何て話をしているの。

でも言われてみれば、確かに最近休みを取る事が増えた気がする。

やっぱり、ライアン様と・・・



「ああ、そういう事ですか。いいえ、恋人はおりません。本当にただ用事があるだけです。」

リンナがあっさりと答えた。


え、そうなの?何だ、恋人じゃなかったのね。

私はほっと一安心する。

でも、だったら何でライアン様と?リンナが嘘をついている様子もないし。

新たな疑問が出てくるが、こちらは核心を突きすぎるので聞けない。

とりあえず2人は恋人ではなさそうだという事を手紙に書いてレイドに送った。



私が手紙の返事を出して更に数日後、またレイドから手紙が届いた。

内容は急ぎで話したい事があるから城まで来れないかというものだった。まだリンナの事を疑っているのかしら。

レイドには剣の稽古をしている演習場近くに行けば会えるとのことで、私はさっそく翌朝登城する父様に一緒に連れて行ってほしいとお願いした。





「本当に1人で大丈夫なのかい、リザベル。やはり父様も一緒に・・・。」


お城に着いて、私が1人で歩いて行こうとすると父様に引き止められた。このやりとり、朝から何回しただろう。


「本当に、本当に、ほんっっとーに大丈夫ですから!ほら、父様!お仕事に遅刻してしまいますよ!」


最初はやんわりと断っていたが、流石にしつこすぎるので今は断固拒否している。父様に来られたら、そこを経由してライアン様に伝わるかもしれない。それだけは困る。


「うう・・・分かったよ。ただ、知らない人には絶対に着いて行かない事。あと、人気の無い所も駄目だよ。それから、何かあれば大声で叫ぶんだ。すぐに父様が助けに行くからね。あとはー・・・」

「もう!分かりましたから!それも朝から何度も聞きました!はい、行ってらっしゃいませ!」

強引に父様の背中を押して送り出すと、やっとのことで行ってくれた。

それはもう物凄く名残惜しそうに何度も振り返りながら。何だか今日は父様の心配症がいつにも増して酷い気がするわ。


「はぁ。やっと行ってくれた。さて、私も向かわなくちゃ。ええと、確かレイドがいるのは演習場の裏だったわよね。」


今朝父様に教えてもらった通りに城の中を進んで行く。

しばらく進むと、剣がぶつかり合う音や騎士達のかけ声が聞こえてきた。良かった。方向は合ってるみたいね。


演習場の横をすり抜け裏手にまわると、そこはちょっとした森のようになっていた。森の手前に少し開けた場所があるので、レイドはいつもここで剣の稽古をしているのだろう。時間が早かったのか、まだ姿は見えない。

何となくする事もないので森の中を散策していると、小さな建物が見えた。近付くと塔のようで、周りを大きな鉄柵で囲っていた。


なぜこんな森の中に塔があるんだろう。

宮殿からも離れているし。

人気も無くひっそりとしていて、何だかちょっと寂しい感じ。



──ガサガサッ──



誰かが近付いてくる音がした。

レイドだと思って振り返る。



「君、誰?」




知らない男の子が立っていた。






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