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17.


レガスが施設を去ってから3年が過ぎ、私は11歳になった。

彼の事は本名のレイドと呼ぶようになり、時々手紙でのやり取りはしているが、城での催し事以外会う事はなくなった。


今朝もレイドから手紙が届いていた。


私からの主な内容は施設の子ども達についてだ。回数は減ったが、今でも変わらず施設に通っている。レイドがいなくなってしばらくは暗かった子ども達も、徐々に以前の明るさを取り戻し、今ではすっかり元通りだ。

その事を当時手紙に書くと、薄情な奴らだな、と返事が来たが、文面から安心した気持ちの方が強そうにみえた。いつまでも自分の事で悲しまれるのは辛いものね。


レイドからの手紙には騎士団について書かれている事が多い。

先日彼は入団資格がある16歳になり、来月受験する。父親のライアン様に剣の稽古をつけてもらっていたらしいので、きっと大丈夫だろう。

ふと大柄な騎士隊長にしごかれているレイドを想像して笑ってしまう。


レイドの手紙に目を通していると、2枚目から字体が変わっている。

これはセリオス様の字だ。


レイドは私からの手紙をセリオス様にも見せているらしく、時々セリオス様からの手紙も一緒に入れられている。特に見られて困るような事は書いていないけど、ちょっと恥ずかしい気持ちになる。


セリオス様のお手紙には、騎士団入団試験後の式典のことについて書かれていた。

式典は街の広場で行われる。広場はコロッセオのようになっていて、入団試験に受かった新人騎士のうち成績の良かった上位5名が表彰される。表彰が終わると、隊長格以上と新人を除く、選ばれた優秀な騎士10名が剣舞を披露する。

普段騎士団の演習は非公開になっているので、一般公開されるこの剣舞は毎年すごい人気だ。そして国にとっての一大イベントでもある。

まぁ、私が王妃になってからは、これも"貴族限定"の公開になってしまったんだけど。よく暴動が起きなかったなと思う。


手紙には、来月行われる式典の後レイドと3人で会わないかと書かれてあった。

"表彰されるレイドを労ってやろう"と、まだ受験すら始まっていないのに、セリオス様の中ではレイドが合格するのは確定しているらしい。しかも上位5名に入ることも。

すでにレイドに内緒でお祝い品も用意しているらしく、気の早いセリオス様に思わず笑みが溢れた。

そう思いつつも私からも何か渡したいと思い、相談する為にリンナを呼ぼうとして思い出した。


「リンナ・・・あ。今日は所用があるとかでお休みだったわね。」


毎年この時期になるとリンナは休みをとる。何やらとても大切な用事らしく、他の侍女達が"恋人と逢瀬でもしてるのでは!?"と騒いでいたけど。

年に1回だけしか会わないなんて、リンナの恋人はお星様なの?




「ねぇ様!」

考え事をしていたら、私の最愛で最高で究極(?)の天使が現れた。


「ケイト!どうしたの?もうお昼寝はいいの?」

「はい。もー眠たくありません。」

「そう。だったら、姉様と遊ぶ?」

「遊びます!!」

ケイトが私に飛びついてくる。



あああ可愛いいいい!!!

いつまでも姉様と一緒にいてね!



「ねぇ様、"かくれんぼ"がしたいです。」

「姉様がこの前教えてあげた遊びね。いいわよ!」


最初は私が鬼になる。

30秒数えて、ケイトを探す為部屋を出た。範囲は私の部屋がある2階のフロアだけ。それでも割と広いけど。


「どこかしらー?・・・ここね!?」


わざと大きな声で探す。その方がケイトが喜ぶからだ。だいたいいつもは机の下とか、ソファーの後ろとかに隠れてるんだけど、今日はなかなか見つからない。そうしているうちに、最後の1部屋まで来てしまった。


「ここで最後だけど・・・。この部屋は父様の書斎よね。勝手に入っては駄目と教えているから、いるわけないはずだけど。」


そう思いつつも、もうこの部屋しか残っていないので、一応ノックをしてから入る。


「ケイト?」


返事はない。書斎は壁一面の本棚と小さなテーブルしかないので、パッと見た感じ隠れられそうな所はない。やはりいないか、と部屋を出ようとした時、ある一角に違和感を感じた。

1つの本棚の下の一列だけ、本がごっそり抜き取られて床に散らばっていた。他の列には、綺麗にピッタリと本が並べられているのに。

不思議に思って確認すると、本棚の奥が空洞になっていた。


「これは・・・隠し通路?」


まさかと思ったが、確かにこの列だけ縦の幅が他より広い。大人でも屈めば入れそうだ。

ケイトが本当にここにいるとは限らない。この部屋には入ってはいけないと教えていたのだから。でも、もし中に入って出られなくなっていたら・・・。

中は真っ暗でよく見えないし、どれくらいの距離があるのかも分からない。

怖くないと言ったら嘘になるけど、私は覚悟を決めて本棚の奥へと進んだ。




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