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15.ニコラス・フォリス


「ニコラス!」

「ああ、やっと来たか。今"例の"報告を聞いていたところだ。」

「それで、何か分かったのか!?」

答えを急かす相棒に、俺は首を振る。


「くそっ!!!まだあいつらの尻尾は掴めないのか!もうサリーが亡くなって5年も経つんだぞ!おいニコラス、俺はもう我慢ができない!」

「落ち着け。ここで勘づかれたら、今までの苦労が何もかも水の泡になるぞ。慎重に行くんだ。今日は"あいつら"が揃う絶好のチャンスなんだからな。」


──ダンッ!!!──


苦しそうに顔を歪めた彼は、力任せに壁を殴り必死に怒りを堪えている。


「あと少しの辛抱だ、ライアン。ではお前達、引き続き頼む。」

「「はっ!」」




今日の茶会はリザベルも一緒だ。普段の私は仕事と"例の調査"に忙しく、なかなかリザベルと一緒にいる時間が作れない。本当は寂しいはずなのに文句ひとつ言わない娘を喜ばせたいと思い、茶会に誘った。嬉しそうな娘の姿を見て、私まで笑顔になる。連れてきて良かった。


話し終えた私達がリザベルの元へ行くと、一緒にいるはずのレイドの姿がなかった。

ライアンの息子であるレイドとは、彼が小さい頃に少しだけ会った事がある。教会に預けられてからは接点が無かったが、まさかリザベルと仲良くなっているとは。

ライアン曰くレイドは貴族を嫌っているとの事だったので、リザベルが教会に行くと言い出した時には心配した。彼女は貴族の中でも最高位の公爵令嬢だからだ。レイドだけでなく、施設の子の中には貴族に良い印象を持っていない子も多い。

嫌な思いをするのではと初めは難色を示してしまったが、どうやら杞憂に済んだようだ。


レイドが戻ってくると、ライアンは驚いた様子だった。レイドが女の子、しかも貴族令嬢のリザベルと親しくしていたからだ。

2人の関係を知らなかったらしいライアンは、それを見て何を思ったのか、私を強引にその場から連れ出した。

ふざけるな、私の娘だぞ。


「おいライアン、どういうつもりだ。返答次第ではお前を殴る。」

「物騒な奴だな。ちょっと2人きりにさせてやるだけだ。あいつが茶会に出ると言った時には驚いたが、リザベル嬢が来るからだったんだな。」

「・・・言いたい事はそれだけか?歯を食いしばれ。」

「お、おい!待てよ!何も嫁にくれと言ってるわけじゃないだろ。」

ライアンが降参のポーズを取る。

もしそのセリフを言っていたら問答無用で殴っていた。馬乗りでな。

「お前は娘の前と俺の前じゃ態度が違いすぎるぞ。」

ライアンがぶつぶつと文句を言っている。当たり前だろう。何故お前に優しくしないといけない?


「レイドが母親の事が原因で貴族を嫌っているのは話しただろ?だがあいつはいずれ伯爵家を継ぐ。嫌でも貴族と関わらないといけないんだ。リザベル嬢をきっかけに、貴族との関わり方も覚えてほしいんだよ。嫌なら嫌でいい。敵対せず、うまく躱せるように。サリーの二の舞にはさせない。」

「・・・そうだな。それには同感だよ。」



仕方なく納得し、しばらく時間を潰しているとレイドがセリオス王子と一緒にいた。リザベルの姿はない。

聞くと、少し前に別れたそうだ。

慌てて周囲を見渡すが、それらしい姿は見えない。

私は嫌な汗が流れた。目の前が暗くなっていく。



まさか、リザベルまで"あいつら"に・・・




「おい!しっかりしろニコラス!まだ、あいつらが何かしたと決まったわけじゃない!手分けして探すぞ!」

「父さん?どうしたんだよ・・・おい!セリオスまでどこ行く気だ!?」

「リザベルを探しに行く。」

「待てよ!お前はまだ人が待ってるだろ!俺が代わりに探すからお前はここにいろ!」

「しかしっ・・・。」


──ざわっ──


急に騒がしくなる。見ると、王妃が来たようだ。くそっ。このタイミングで・・・。


「ニコラス、王妃へは俺が説明しておく。お前はリザベル嬢を探しに行け。」

「ライアン、すまない!」






リザベル、どうか無事でいてくれ。






私は王妃に群がる人並みを掻き分け、走り出した。







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― 新着の感想 ―
[一言] レイドさんは相当なヒーロー適性の持ち主ではあるのだけど、王子さんと結ばれないとカイルさんが生まれてこなくなってしまうしなー(´・ω・`)
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